セカイ系の臨界点としての《天気の子》
もはや陳腐化して省みられなくなった言葉を再考するところから始めたい。《天気の子》の物語の背後には、いわゆるセカイ系の想像力がある。セカイ系とは、「ぼく」(主人公)と「きみ」(ヒロイン)の関係が、社会や国家といった中間領域を飛び越していきなり世界の存亡に接続する、という想像力を指す。
ふつう、僕らが大きな世界のありように少しでも関わりたいと思うのであれば、自分の周囲や、さらにそれを取り巻く社会に働きかける面倒な手続きを通じて行なう他はない。しかし、セカイ系の想像力においては、