自己分析するには手遅れなこと
面接で、採用する側として最も重視したのは「就職先を選ぶ基準とその理由」でした。核心にある価値観を変えるのは、スキルを伸ばすことと比べて遥かに困難だからです。
その点で、やはり、就職・転職(採用)は「偏差値的な戦い」以上に、「相性を確かめる」要素が強いと思います。相性×は、スキル◎でも内定出しません。相性◎は、スキル×というのはあまりないですが、スキル△でも検討するときがあります。それはどれくらい即戦力を求めているか、企業のフェーズや育成にかけられる資源にもよります。
採用責任者としての当時の僕は「就職先を選ぶ基準とその理由」を確かめることに、面接のほとんどの時間を割いていました。
(注1:「スキル」も「価値観」の結果なので、その点では、言語化した「価値観」が本当に核心にある価値観なのかどうか、確かめる指標としては「スキル」について詳細を伺うこともありました)
(注2:当たり前のことですが、新卒だろうが何だろうが、職種ごとに特定のスキルは必要になるので、それは面接官を分けて実施していました)
「就職先を選ぶ基準とその理由」を伺う際、あまりに自分たちの価値観と異なる場合は書類選考時点で失礼しました。逆にいえば全員に伺っていました。履歴書・職務経歴書・ポートフォリオ以前に確認していました。答えてくれない人には会いませんでした。
そして、いざ面接の際も、同じことを改めて伺います。候補者の価値観について深く理解させてもらう時間にするのです。特に、その「価値観の信憑性」を確認する作業に時間を費やしました。
"なぜ、その価値観(選ぶ基準)に至ったのか?"
これはもはや共同作業です。というか「共同自己分析」です。
(そのせいか合否に関わらず感謝されることは多かったです)
当時、とある企業の採用担当として、新卒・中途、毎年数百人と面接してわかったのは、それまでの半生が濃密でなければ、自己分析したところで何も出てこないということです。残酷な結論ですが、確信しています。
そして、この「半生の濃密さ」に欠ける方、故に「価値観の信憑性」に欠ける方が非常に多かったです。本当にそれが大切なことなの? ということです。
もしかしたら本当にそれが大切なことかもしれないのですが、信憑性に欠ける状態でそれを信じて採用することは、(お互いにとって)ギャンブル性が高いのです。大量採用する企業であれば許容度(許容できる退職率)も高いでしょうが、うちでは難しかった。応援してるけど採用はできなかった。ごめん。
既存の就活塾は無料・有料問わず、自己分析を手伝うプログラムが多いですが、この「半生の濃密さがないと自己分析しても何も出てこない」を無視しています。つまり、本質的な解決策になっていない。
新卒の就活においては、時間が限定的です。つまり、この「半生の濃密さがないと自己分析しても何も出てこない」ことに大3の終わりで気づいても、手遅れなんです。なんて残酷なんだ。
それに比べると転職は、時間の制限がないのでいいですね。気づいてからの日々を濃密にする手段が残されています。なので僕は「また会いましょう」で終わる面接も少なくなかったです。
別に、就活のために生きる必要はまったくないのですが、そういうことじゃなくて、きっと濃密な日々(定義は人によります)の方が楽しいですよ。シンプルに。一番お伝えしたいのはこれかもしれないです。
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ちなみに、学生・社会人問わず、非常に多かった「濃密な半生に欠ける方」のほとんどは、それを望んだにも関わらず実現することが叶っていませんでした。本人も採用側も、何なら親や教員までもが望んでいる(ことが多い)にも関わらず実現していないのは、なんて不幸なことだと思いました。これは僕が1on1 collegeを始めるに至った経緯そのものでもあります。
今、参加している学生たちが、1on1 collegeを広めようとクラウドファンディングをしてくれています。100名を超える方々にご支援いただきました。ありがたい限りです。
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