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HR系サービスをサービスデザイン視点で分析 〜Unipos編〜

こんにちは、長谷川リョウヘイです。

今回はサービスデザイン修行の一環として、HR系のサービスをサービスデザイン視点で分析するというテーマで、サービス分析を行っていきます。

最終的なアウトプットとしては、名付けて「UX/ビジネスキャンバス」ということで、以下の項目に沿って、1枚のスライドにまとめてみました。

ユーザー体験:
・機能的価値
・情緒的価値
・社会的価値
ビジネス持続性:
・独自の価値提供
・収益性(LTV / CAC)
・資本力(ヒト / モノ / カネ / データ)
・市場環境(市場規模 / トレンド)

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上記が最終的なアウトプットとなります。
もしかすると画像が小さくてみにくいかもしれませんが、その際は恐縮ですが、拡大やダウンロードをして見て頂ければと思います。

どんなUX・価値提供をしているのか、そしてビジネス面の持続性なども分析していくことで、サービスデザイン的に健全かどうかを判断できるかと考えました。そこで、最終的にはサービスの「サービスデザイン的健全性」を5つ星評価で、独断と偏見に基づく総合評価を行うことを目指します。

ここからは、1つ1つの項目についての分析結果を見ていきますが、上記にも記載の通り、独断と偏見による分析なので、ご容赦ください😂

ユーザー体験

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①機能的価値
業務中に、簡単にお互いを褒めあえる

まずはUniposの機能的価値についてです。
Uniposは、同僚の働きに対して「称賛」を送ることで、ピアボーナスが発生し、それが給与に追加報酬として付与される仕組みになっています。

ここで重要となるUXは、「称賛を簡単に送れること」ではないでしょうか。業務中に仲間の素晴らしい働きを目の前にした時に、業務を妨げることなく、簡単に褒めあえるという機能が重要となっていると想定します。

②情緒的価値
仕事へのやりがいや、組織や同僚との団結感

機能と同じくらいに大事なのが、情緒的価値です。
Uniposはお互いが仕事を褒め合うことで、褒められて嬉しいという感情から、「仕事へのやりがい」を感じたり、コミュニケーションのきっかけとなることや、お互いを認め合うという儀式的な意味から「組織や同僚との団結感」を体験できることで、愛されるサービスを目指しているのではないでしょうか。

③社会的価値
称賛しあう、素敵な組織で働けているという自信や誇り

最後に、社会的価値。
ユーザー体験は、機能と情緒に訴えるだけではなく、それを使うことでユーザーが「なりたい自分になれるかどうか」が重要になってきます。

Uniposは、導入している会社では活気に溢れていたり、褒め合う文化がある。そんな会社はもちろん素敵な会社である。という、ユーザーの「自組織に対する自信や誇り」を促すことで、社員の生産性やエンゲージメントだけでなく、Uniposを導入する企業人事にも気に入られる体験を設計していると想定されます。

総合的にみて、機能・情緒・社会的価値を一貫して体現しているサービスになっていて、かつ一つ一つのユーザー体験が、使うたびに累積していき、愛されていくようなサービスであるポテンシャルがあると言えます。

独自の価値提供

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①ピアボーナス(新しい給与体験)

仲間からの称賛が、報酬に繋がり、やりがいに繋がる。

Uniposの独自の価値は、なんと言ってもピアボーナスによる、「新しい給与体験」ではないでしょうか。

今までの給与は、ユーザーにメリットを生むことで、それが売り上げとなり、そして給与に反映されてきました。また、社内政治も多いことから、同僚の仕事を素直に褒められなかった人も大勢いると思います。

しかし、Uniposはユーザーに貢献するだけでなく、同僚に貢献したり、良い仕事をすることで、同僚の評価を得て、それが給与になるという新しい給与体験を提供してくれます。

②バリューの浸透

ハッシュタグを活用し、バリュー(行動指針)に則った行動を褒め合うことで、バリューが浸透する。

昨今では、Mission / Vision / Valueを定義している会社が増えてきました。MissionやVisionは事業の方向性にもなってくるので、目にする機会も多く、浸透しやすいですよね。
しかし、Value(行動指針)については、各社がどのように浸透させるか迷っていると思います。

基本的に、社員の評価項目にバリューを紐づけることで、行動を促す企業が多いのかなと思いますが、Uniposはそもそも「1つ1つの行動すら褒める」ことが可能なサービスなので、そこを上手く利用し、「Valueを体現するような行動が評価される」という文化を形成する助けができるのが、1つの価値となっています。

③利用を促進する仕掛け・サポート

slackなどのチャットサービスとの連携や、組織改革のコンサルティングを一気通貫で提供。

たくさんの称賛が飛び交うには、Uniposを使うハードルを下げたり、そもそも組織に導入して認知してもらったり、期待を持ってもらう必要があります。そのような部分も、企業毎にカスタマイズしたサポートを行う体制があるのも、1つの価値だと言えます。

収益性

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①LTV

まず、Uniposの2020年3月の決算を確認します。

Uniposの売上:3億1900万円(2020.03)
社数:370社 
アカウント数:44,000
解約率:0.9% (継続率99.1%)
月額利用料金:700円〜

そこで、解約率が月次でも大差ないと仮定した上で、LTVを月額料金 / 解約率で算出すると以下の数字が算出されます。

LTV:約77,777円

解約率がいい数字を叩き出しているので、LTVはかなり高いですね🤔

②CAC

こちらもまず、決算を確認します。

2020年3月期の1Q ~ 4QのUnipos投資:約6億円
2020年3月期の1Q ~ 4Qのアカウント数増加量:14,000

これらの数字から、顧客獲得コスト / アカウント数増加量でCACを算出すると、以下のようになります。

CAC:約42,900円

③LTV / CAC

つまり、上記の数字を割って収益性を計算すると、以下の通りです。

LTV / CAC = 77,777 / 42900 = 1.812

収益性はSaaSの目標値と言われるLTV / CAC > 3を達成できてはいませんが、Uniposにお金をかけ始めたのが2018 ~ 2019年の間からなので、まだまだ始まったばかり。
解約率も低く、LTVも恐らくかなり良い方なので、フェーズ感としてはもうPMFは達成しており、あとはいかに販管コストを下げながら、低い解約率を継続しつつ、アカウント数を伸ばせるかが勝負になりそうです。アカウント数は、1000名を超える社員を持つ大企業に導入してもらったり、正社員だけでなく派遣などの契約社員も多く在籍する企業に導入してもらえると良さそうですね。

資本力

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資本力は上記の通り。

社員数と資本金に関しては、Uniposではなく、親会社のFringe81のデータとなっています。

社員数も少なく、まだまだ利益率の高い体質とは言えませんが、従業員のエンゲージメントデータをUnipos経由で蓄積しているのは非常に強みと言えるでしょう。今後は、Uniposしか持っていないデータが増えてくると思いますので、その先行優位性をいかに利用して、今後のエンゲージメント機能の拡充に努めることが出来るかが、重要になってきそうです。

また、Uniposを導入することでどれくらいの効果があるのかも、データをどんどん蓄積していると思いますので、よりそれらを活用したサービス/機能を生んでいってくれるのではないでしょうか。

市場環境

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市場環境としては、新型コロナウイルスや、従業員の働きがいなどに起因して、HRテックに注目が集まっていると思います。

新型コロナウイルスにより、3密を避ける形での勤務を政府も奨励しているなど、これからリモートワーク環境を整える動きが促進していきます。リモートワークできる職業 / 企業が増えると、その分それを求める人にとって、その環境の有無は企業選びの際に大きな差となって現れてきます。

しかし、リモートワークに慣れていない企業では、やっつけの環境しか整えることしかできず、どんどん会社への帰属意識が失われていきます。それを危惧して、週1は出勤しましょうなどのルールを定める会社も出てきていますが、それでも今までよりリアルでのコミュニケーション量は減っていきます。

それらに対して、Uniposは非常に有効なサービスの1つとなり得るでしょう。褒め合うことによるコミュニケーションの活発化だけでなく、Valueを浸透させる使い方などで、心理的距離や会社への帰属意識の問題を解決するポテンシャルがあると言えます。

また、HRテックは今後、「従業員体験(Employee Experience)」をいかに向上させるサービスが生まれるかに注目が集まっていきます。アメリカでは既にエンゲージメントの並は過ぎ去り、パフォーマンス向上に向けたサービスが主流になってきているとのことなので、日本は4 ~ 5年遅れですが、それでも今後日本でもその流れが来るのであれば、Uniposのようなサービスが必要とされていくのも理に適うのではないでしょうか。

まとめ

ここまで分析した結果、Uniposは星4つと勝手に総合評価します!

LTVも良く、ユーザー体験もしっかりと考えられており、かつ今後市場環境も追い風が吹き、貴重なデータを保有しているので、星4つです。

残り1つは、収益性を改善するために顧客獲得コストを抑える必要があることや、給与体系との関わりから少し導入にハードルがある部分でマイナスとしました。

このように、今後もしばらくは不定期でHR系サービスの、独断と偏見によるサービスデザイン的分析をしていきたいと思いますので、是非お楽しみに!

今回のデータはこちらの決算情報から

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