マガジンのカバー画像

poetry

101
長文、一行詩、 Twitterに投稿した詩、駄作。ぜんぶ。
運営しているクリエイター

記事一覧

カタルシス

カタルシス

左右を間違え
上下に逆らう
そんな生き方だ

自分同士を斡旋し
帳尻合わせをする
そんな生き方だ

夕時雨
露花が「大丈夫」と
笑った気がして
重たい手が動き出す

徐に装着するイヤホン
揺り籠のように僕を癒やす
いつもの声が聞こえる
光へと導く
そんな声だ

君の声だ

最後の無言劇

最後の無言劇

察してくれって阿呆が通る
コインを投げてくださいな

酷く痛むつま先に
それでも君が笑うなら
おどけよ跳ねよ捧げよう
保てなかったニュートラル
麻酔が切れてしまったよ

「ごめんね」と
「ありがとう」
叫びは届いていたでしょう
泣いた道化師
神無月の夜に
演じ続ける誓いを立てて

さようならです阿保が通る
どうか笑ってくださいな

脱皮

脱皮

私は葡萄の一粒です
抗って
皮を剥いて
飛び出そうとしております

剥き出しは
痛いでしょうか
恥ずべきでしょうか
それも一興
尽きるわけじゃあるまいし

角張った建築物を抜け
柔らかい土を踏みしめる
足は汚れ
それを笑って
夜から朝へ
また私を形成してゆくのです

季節を跨ぐ者

季節を跨ぐ者

花火の音にかき消された勇気
鼻緒に滲んだ血が
「帰ろう」と言った
この日のために選んだ紅が
「帰れない」と言った

金魚の行方が
気になって仕方がない
宙ぶらりんの手は
二人の距離を測るための
物差しであった

夏が去く
提出先のない
宿題を残したまま

ソーダ心中

ソーダ心中

ビー玉を愛でる君は水彩画
時を分かたず
眺めていたかった

カランコロン
下駄が鳴るたび
鼓動が速くなる
あゝ
見ないのに
君は決して
此方を見ないのに

この思いは
炭酸の泡と共に
いつしか
気化していくのだろう

飲み干せぬまま
気づかれぬまま

帰する所

帰する所

文月に暴れだす雨が
安堵と焦燥を連れてくる

眼玉の色は正しいか
唇は隠したままか
胃袋に流れ込んだ言葉は
消化できているか

錯乱の頭部を切り離し
触れずとも君の手を取る
傍らにある命が
支点であり力点だ

無から感情を捻り出そう
これは義務ではない
生き甲斐なのだ

中弛みロープレ

中弛みロープレ

視界が狭窄していく
無になる
白んでいく

こうして呆けている間にも
細胞は酸化する一方で
膝に落ちた液体が
奥底の焦りを知らしめた

心の中
断捨離している途中だろ
言い聞かせて旗を立てる
倒れてはまた旗を立てる

決して戻ることのない
セーブポイントだ

痛覚放棄

痛覚放棄

アスファルトに
へばり付いてる花びらが
恋しい恋しい
泣くようで
剥がして欲しい
あなたの手で 
どうぞ土へと還して欲しい

次の生があるのなら
一切の記憶を持たずに
あなたの幸せを手放しで
祝福できる花になりたい
風に揺れ微笑むような
モノクロの視界を彩るような

薄弱につき

薄弱につき

心の臓に
生えていたのは
弱々しい
産毛でした
守れなかった
なぁんにも

夜なべして
縫うのです
裂傷がとても痛むので
チクチク
チクチク
縫うのです

継ぎはぎだらけの心臓を
抱えて今日も進みます
右手に時間
左手には友を持ち
まだまだ、だね
と聞こえる声に
負けない、負けない
と呟きながら

野良猫へ還るとき

野良猫へ還るとき

浮遊する
薬指の優しさ
犬歯の愛らしさ

足りなかったのは
時間だけだったか
知らないことは幸せか
識ることは未来か

放たれたゲージが
狭かったのだ
二人で得る悦びと
開きっぱなしの扉
温度差に眩暈がしていた

利口ではないが
愚かな儘でもいられず
心に挿入されたのは
悲しい自由もあるということ

施錠をし
鍵は捨てよう
さあ忘却の宴だ

戦う粘膜

戦う粘膜

風炎にノドを荒らされ
届けたい声が掠れても
宙を自由に舞う花弁に
託すことはもうやめた

木の葉蝶に成り変わり
隠れていては何ひとつ
伝わらないのでしょう
終われないのでしょう

今生限りと心に決めた
わたしの芯が泣く前に
きみが好きだと叫ぼう
粘膜に追い打ちをかけ
きみが好きだと叫ぼう

顔

右半分は重圧で腫れた
    左半分は処世術の笑顔
     引きつっているかな
          この顔は
        
吹出物
            偽者
    それでも前を向くのは
     君を見ていたいから

  遠くを見据える尊い横顔
     去り行く兆しを孕む
        うつむいた顔
          あゝまた
       涙の匂いがする

     コロンと石

もっとみる
月の化身

月の化身

ピチョンと垂れた雫が一滴
      あれは確か上弦の月夜
         「此処に居て」
        真っ直ぐ見つめる
       碧の瞳に撃ち抜かれ
      一歩も動けなくなった

その雫を拭うため
    絹のハンカチーフとなろう
     いつか笑顔になるのなら
      道端の道化師となろう

ピチョンと垂れた雫が一滴
        今宵は二十六夜月
        「行

もっとみる