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敬語とバイブス語


弊社デザイナーの松野寛太くん(2023年11月現在23歳)

松野寛太くん

新卒で入社した彼は、約1年ちょっとのアシスタントを経て、今年の夏にソロデビューを果たしました。その時の話です。

デビュー戦は怖い

僕は彼に言いました。

「自分で説明せーよ」

彼はプレゼンテーションとまではいかないけど自分のデザインを自分で説明する、というミッションを得たのです。ミッションというか、チャンスです。どんな職業でもこれができないと、常に誰かの後ろで作業している人になって、アイデンティティを確立することはできません。

しかし彼は、学生時代プレゼンテーションの授業をテキトーにこなしていたのでプレゼンテーションスキル、いや年配者との会話スキルというものを持ち合わせておらず、学生時代のテキトーさを激しく後悔していました。

「過去に戻って当時の自分に言ってやりたいっす!」

って言ってました。

なので彼はクライアントに自分のデザインを説明するというデビュー戦に向けて何回も何十回も、台本を書いて暗記して、キリのいいところで僕を捕まえてロープレに明け暮れました。

若きヴェルテル寛太の悩み

しかし、まったく、彼は言いたいことをコミュニケーションすることができませんでした。

不甲斐なさにプルプルと戦慄き、天を仰ぎ、己の非力さに怒り、同時にめちゃんこ焦ってました。「明日やぜ」と。

僕も若い頃は全く同じだったので彼の気持ちはものすごく分かるんですが、
そもそも自分が生きてきた世界と全く違うであろう世界の相手と会話すること自体、かなり恐怖なんです。僕も二十数年前は1人ロープレをレコーダーで録音し、あまりの無様さに福岡天神のドトールで顔を真っ赤にして絶望していました。

だって相手の考えてる事が想像できないし、そもそもどういう言葉で伝えれば良いのかわかんないですし、伝えたところで「アホと思われる!」という恐怖が常に付き纏います。

実際は

「こいつめちゃくちゃイタいやっちゃな」

と思われても良いから前に進んじゃえばどうって事ないんですが、
人間には想像力がありますから、恐怖を乗り越えるのは容易じゃありません。重ねて書きますが僕もそうでした。

しかしビジネスパーソンになるにはその恐怖を乗り越えねばなりません。陰キャである彼が破壊しなければいけない壁です。そこで僕は彼に提案しました。

「敬語やめーや」

話の内容をとるか、言語をとるか

そう、彼にとって敬語は第2言語みたいなもので、そもそも自由に操れる言語ではないのです。彼はその第2言語を使って、未知の世界の相手にコミュニケーションし、自分の描いたストーリーに対して納得と理解を引出させばならない。これはハードルが高い。

であるならば、ストーリーを伝えることだけに注力して、言語の方は捨てる。要するに、目の前の相手を友達だと思って自分の言葉で喋るという事です。

「だと考えておりまして」→「だと思うんすよ」
「やはり」→「やっぱ」
「ではないでしょうか」→「じゃないすか」
「承知しました」→「うす承知しました」

バイブス語変換メモ

みたいな感じです。

あと、

「〜みたいな」は禁止しました。
これは若い子が使うと責任感のなさを感じさせてしまうので。

これだけで、松野くんの喋りはだいぶ変わったように思います。

僕はこれを非礼だとは思っていなくて、
「バイブス語」と呼んでいます。

バイブス語は共通言語

自分のものにできていない敬語で無理矢理語るより、このバイブス語でコミュニケーションした方が、相手も圧倒的に聞きやすくなります。だってバイブス語は、プライベートでは誰でも使ってる言葉ですから。

「黙れこの小童!無礼者!」と思われてビジネスの土俵から降ろされてしまうリスクもありますが、しっかり目を見て真剣にぶつかれば大抵の場合、「あ、こいつは自分と真剣に向き合うためにバイブス語を選択せざるを得なかったんだな」と理解してくれます。大人は理解してくれます。

結果、松野くんはそれなりにバイブス語でコミュニケーションすることができ、且つ台本もきっちり暗記型ではなくフィーリングライブ派に切り替えることでデビュー戦を乗り越えることができました。

要は相手への愛が伝われば良いわけなので、皆さんもバイブス語を使って、コミュニケーションをさらに深めてみてはいかがでしょうか。

松野寛太を宜しくお願いします。
ちなみにまだ敬語でコミュニケーションは無理なようです。

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written by RYDEN
戦略とクリエイティブの両面から、
強靭なブランドづくりを支援する
株式会社ライデン
https://www.ryden.co.jp/
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