法の下に生きる人間〈第41日〉

1999年の国旗国歌法成立までは、学校現場において、入学式や卒業式で国歌斉唱を行うことはそれほど多くなかった。

私たち中高年世代が子ども時代を振り返っても、歌ったかどうか記憶にあまり残っていない人もいるのではないだろうか。

逆に、今の時代は、ひと昔前と比べて、野球のWBCであったり、世界陸上であったり、サッカーのワールドカップであったり、オリンピック以外にもアスリートが日本の代表として国歌斉唱する機会が増えてきたように思う。

念のため繰り返すが、アスリートが歌うようになったのではなく、オリンピック以外の世界大会が増えたということである。

だから、私たち国民は、毎年のようにテレビやラジオなどを通して国歌を耳にするようになり、『君が代』を歌うことに違和感なく受け入れられる人も増えてきたように思う。

2000年以降に学校教育をまさに受けていた人たちは、当たり前のように、儀式的行事で国歌斉唱をしたことだろう。

実は、かつて文部省が、国の教育方針として「学習指導要領」を定期的に改訂していく中で、国旗及び国歌を指導するよう明文化した時期があった。

その時期はいつかというと、昭和が終わり、平成元年(1989年)を迎えたときである。

その年に改訂された学習指導要領には、「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする。」という記述が戦後初めて見られたのである。

ただ、学習指導要領は法的拘束力を持たないとされており、突き詰めて考えれば、国旗や国歌がどういったものであるかという法的根拠がなかったわけである。

これより以前の学習指導要領では、例えば、1958年(=昭和33年)の告示において、「儀式など行う場合には国旗を掲揚し、君が代を斉唱することが望ましい」とする表現であった。

この「君が代」の表記が「国歌」に改められたのだが、法的根拠がないとなると、「君が代を歌えとは書いていないよね」という話になる。

だからこそ、2000年という世紀の節目を前にして、法的根拠を持たせるべく、わざわざ国旗国歌法がつくられたといえよう。

学校の先生の中には、日本教職員組合(=日教組)に所属している人もいる。

昔は、日教組の力が強かった時代があった。そして、日教組に所属している先生が1つの学校に何人かいれば、校内行事で君が代を歌わないように抗議することもできたわけである。

そんな時代に子どもだった今の中高年世代の多くは、おそらく国歌斉唱の記憶がほとんどないかもしれない。

都会育ちか田舎育ちかによっても、その経験の有無は分かれるだろう。






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