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地元エッセイ(5)ちょっと昭和な田舎ライフ

 僕の育った。高知県四万十市西土佐はいわゆる山と川が雄大な場所。ゲームセンターもゲームショップも本屋さんもマクドナルドもコンビニも車で1時間以上運転しないとない、マジのど田舎だ。

 だからこそ、都会では味わえない、ちょっと昭和な少年時代を過ごすことができた。

 学校は全校生徒が百人未満。クラスという概念がなく、毎休み時間はほとんどの生徒が外に出て遊ぶ。ドッジボールやサッカー、野球のほか、ポートボールやSケン、ケイドロ、家族ごっこ、鬼ごっこ、たかおになどなどを楽しんだ。

 家と学校の間には駄菓子屋があって、学校帰りはそこで集まって話したり遊んだり、食べ終わったら、歩いて帰って、また話して遊んで同じ方向の子の家にお邪魔して、また話して遊んで。

 家に帰るとおばあちゃんがご飯を作ってくれていて、魚とか野菜が多いメニューに文句を言って一人だけハンバーグとかカレーを出してもらって、小さい子どもながらに少し申し訳ないから魚と野菜も食べて、ウゲェって言って、お父さんに拳骨を喰らって、兄上にバカだなぁって言われてちょっと喧嘩になって、それもまた父親が拳骨で止めて、モクモク食べて、ニュースやちびまる子ちゃんやサザエさんがその沈黙を埋めていた。

 ご馳走様したら宿題をしてお風呂に入って、寝る前にゲームをして、宿題は済んだのかと聞かれて終わったとちょっと怒った感じで言ったら、こっちは心配して聞いてやってるのにとぶつくさ小言を言われて、そのタイミングで思い出してプリントを渡したら、ほらやっぱり忘れてたってさっきと違うことでぶつくさ文句を言われて。ちょっとばかしイライラしながらうとうとして眠る。

 こんな毎日をずっと過ごしていた。

 夏休みは毎朝ラジオ体操があって、8/15には平和学習で登校したり、地域のキレイ運動という名のゴミ拾いに友達も行くからと参加して、そのまま四万十川に泳ぎに行った。泳いだ後寒い寒い言いながらもガリガリ君を食べて、頭キーンして、バカにされて、ちょっと喧嘩して、帰り道一緒だから仲直りを自然にして、たまに怒って先に帰ったりもしたけど、次の日も遊ぶ約束があるからラジオ体操の前後に謝って。

 秘密基地に集まっては、森や山、行ったことのない道を行って、私有地に入ってしまって怖いおじちゃんに追いかけ回されて、捕まって怒られたり、逃げ切っても家でお父さんやおばあちゃんに怒られて、次はしませんと言いながら、数日後にまたやってしまう。

 犬の散歩にイヤイヤ行ったりもしていた。いつも犬が先へ先へ走って、引っ張られて、手のひらの皮がはげたり、腕が痛くなった。ムカつくからちょっと高いところから先に飛び降りて、降りて来られない犬を笑ったり、滝の上から一緒に飛び込んで、陸へ戻ろうとする犬をリードを引っ張って行かせないようにしたりとめっちゃ残酷な復讐をしていた。そのせいか家に着いて餌をやるときに焦らしたりしてると腕を噛まれた。

 でも犬とも結局次の日には仲直りして、また散歩に行っていた。

 雨の日はお互いの家でゲームして、あとちょっとって続けてたら親が迎えに来て、いいところなのに連れ戻されたり、もう歩いて帰ってこいと行って帰られたりした。

 本当に歩いて帰っていたら途中で知らないおじちゃんが「〇〇のとこの子やろ。なぁんだぁ? また悪さして家を追い出されたか。荷台に乗れや、乗せて帰っちゃる」と言ってくれて帰る。

 もちろん帰れば家の人に怒られるのだけど、永遠にも思えた田舎の道をトラックでビュンビュン走るのは気持ちよかった。トラックの荷台から見る夕焼けは、今でも忘れられない。家に着いたときに見える台所の灯りが暖かくて、でも怒られるの確定だから怖くて、ちょっぴり犬と遊んで。

 本当は噛まれてないのに噛まれたと言って泣いたふりをして、怒られるのを回避しようとしたこともあった。犬が祖母にスリッパで軽く頭を叩かれて、キャインと鳴いたのを聞いて、次の日は犬に優しくしてやろうと決めた。

 でも噛まれて、その思いはどこかに消えてまた犬に嫌がらせをして噛まれて。繰り返しているうちに、「そんなに噛まれるんならあんたが悪い」と僕が責められるようになった。

 同じタイミングで成績が悪かったり、悪さをしたのがバレているとゲームを隠されたり取り上げられたりして、親も犬もゲームも全ての味方を奪われた僕は泣きに泣いて、泣き疲れてご飯前に眠って。

 その日に限って焼肉とかで。

 次の日の朝にはピーマン多めの焼き肉の残りを食べさせられた。

 都会みたいに友達とゲームセンターに行ったりショッピングしたり、レジャー施設に行ったり、最新のものがなくても、たとえ悲しみを含んでいても、ちょっと昭和な田舎の幼少の思い出たちは、とっても楽しく光り輝いている。

 自分にもし子どもができたら小さいころは田舎で生活させてあげたいなとすら、思うのだ。

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