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42歳お母ちゃんゼロからのフランス語|べルギー🇧🇪の仏語会話教室と、フィンランドと日本のPISAスコア【1年〜2年半】

家族でヨーロッパのフランス語圏に引っ越してから1年が過ぎた頃。最初の一年は、新しい土地で言葉も勝手もわからず、何をするにも時間のかかる一年でした。それぞれ大変な思いをしている3人の子供たちの背中を見守りながら、不安や涙もありましたが、どうにか無事になんとかなり、振り返ってみると、時間だけが解決できることは大きかったな、と思います。

生活に必要なフランス語を学ばなくちゃと、週2回語学学校に通い、挨拶、色、数字、曜日、食べ物、自己紹介など、2歳児レベルの語彙から大真面目に学びました。これがまた、なかなか頭に入らず必死です。が、しかーし、最初の一年は、初心者クラスで懸命に学んでも、いったん教室を出ると、この僅かなフランス語では暮らしに全く役に立ちません。フランス語の感覚がなさ過ぎて、もっとフランス語に触れて、慣れて、教室で学んだことを効率よく吸収して活かす土台を築かなければ、と少々焦っておりました。

算数に例えると、基礎となる足し算もうまくできないのに、掛け算を教えられても、必要以上に難しく感じ、余計な労力を要してしまう。そんな感じでした。

新しい生活も一年が過ぎ、ほんの少しの心と時間の余裕が出てきた頃、我が家と同じタイミングで、同じ現地校に転入してきたイタリア人のお母さんから「外国人を集めて初級フランス語教室をやっている先生がいるわよっ」と耳よりな情報を聞きました。早速問い合わせてみると、週1回2時間のグループレッスンで、1回€10弱。曜日も予算も合うので、お母ちゃんのフランス語が少しでもどうにかなればと、即、通うことにしました。

バスと電車で45分程の所にある小さな公民館で開催されるこの教室。7〜8人の生徒がマダム先生を囲んで、前半1時間は自分が見聞きしたニュースや出来事を中心に世間話をし、後半1時間はこのテキストで文法学習をします。(テキストの内容は、こちらの出版社のサイトでご覧いただけます。)

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生徒の顔ぶれは実に多様で、ドイツ、フィンランド、オランダ、リトアニア、スロベニア、アイルランド、イタリア、そしてジャポン。特に前半の世間話は、上品で愉快なマダム先生のリードのお陰で、とても面白い社会勉強の場となりました。

最初は、人前で、しかもフランス語で話すなんて、それはもう恥ずかしくて、緊張しました。けれども、慣れと共に緊張は薄れ、こうして学習者同士で和気藹々と世間話ができる場は、フランス語で会話を試みることができる貴重な機会となりました。

さてさて、この教室に通い初めて1年ほど経ったある日、この教室の世間話で、世界各国の15歳の学習レベルを測るPISAスコアが話題にあがりました。いろんな国籍の人々が共存する欧州連合に暮らし始めてから「PISA」を耳にするようになりましたが、皆さまご存知ですか?

PISA=Programme for International Student Assessment

文科省の説明:OECD( Organisation for Economic Co-operation and Development 経済協力開発機構)の生徒の学習到達度調査(PISA)は、義務教育修了段階の15歳児を対象に、 2000年から3年ごとに、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野で実施・・・

こちらが2018年のPISA調査結果で、この表は「読解力」順に記載されています。公式レポートでは、日本が強い「数学力」と「科学力」の順でも詳しく記載されています。

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まずは、この教室に長年通っているフィンランド人の男性が話し始めました。 PISAスコアが上位で、社会福祉でも注目を集めるフィンランドでは、なんと34歳の女性首相も誕生したそうです。ワオ。実際の会社や社会では男女平等が当たり前で、全く差がないとのこと。実力や統率力で男女差を感じることもなく、男女平等は至って普通のことだそうです。また、2019年に就任した首相は、二人の女性同性の両親の家庭出身で、就任時1歳のお子さんがいたそうです。

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フィンランドの学校についても、いろいろとお話を聞くことができました:
・教師になるには修士号が必要で、高い教育を受けている。
・学校は無料。学校間の差はなく、近所の学校が一番良いという考え。親が学校探しをする必要なし。
・授業の時間が短く、休み時間が多い。宿題はほぼない。
・定期テストはない。中学や高校受験もない。テストがあっても選択式はない。
・勉強が難しい生徒にはしっかりしたサポートがある。
(・塾はもちろんない。)

そして、フィンランドのおじさま、日本のお母ちゃんに質問を振りました:

日本も、特に数学と科学のスコアが高い。
日本の教育システムについて教えてください。

うむ、確かに、日本は数学と科学のスコアでは上位である。けれども、現在の日本の教育システムは、彼が述べたフィンランドの常識とは違う方向を向いているぞ。日本のPISAスコアは、日本の教育システムの全体像を表していないように感じ、辿々しいフランス語で、そんなことを説明してみました・・・

「・・・例えば、フィンランドの話を聞くと、PISAスコアは学校の質を表していると思います。公立学校が教育を担っている。日本の場合は、調査対象の15歳となると、半分以上の生徒が、日中の学校が終わった後に、民間の学校(塾)に通います。この「学校の後の学校」は、10歳位から通う子供が増えます。この「学校の後の学校」に通う理由は、良い中学校や高校に入るためです。ある学校に入れるか入れないかは、点数で決まるからです。ひとつの学校に対して、ひとつの試験を受けなければなりません。大学も、希望する大学それぞれの、違う試験を受けなければなりません。日本の保護者は、この民間学校に多くの費用と時間をかけます。立派な産業です。なので、教育格差という問題もあります。そのため、日本のPISAスコアは、公教育の高さを表しているとは言えないと思います。「学校」と「学校の後の学校」と合わせた結果と言えるでしょう・・・」

足りないフランス語をやりくりして、言葉を絞り出し、話してみました。クラスの皆さんは、日本人は勤勉で勉強ができるイメージがあったけど、「塾」や「受験」の制度は初めて知ったそうで、「そういうことなのか」と、新たな文化の違いを発見したようでした。残念ではありますが、「それは素晴らしい教育制度だ」という反応はありませんでした。

PISAスコアは、「公教育」のレベルを表している国もあれば、「公教育+学習産業」を表している国もある。こういう側面も表さなければ、PISAスコアの点数や順位で一喜一憂したり、鵜呑みにしたりできません。

次回のPISA調査は2022年。日本の15歳の若者にも、日本の教育システムと、例えばフィンランドの教育システムなど、別の国との違いを探ったり、日本の教育システムは誰が作っているのか?、どういう教育が理想的か?、日本の教育構造を変えられるとしたらどう変えるか?、そんなことを話し合いながら、結果を見てもらいたいな〜、と願うお母ちゃんでした。


おまけの一枚:地中海近辺の食材店で大きな冷凍タコを発見。日本のスーパーで買えるマダコには敵いませんが、なかなか立派で、子供たちの好物のタコ焼きで、美味しくいただきました( ✌︎'ω')✌︎

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