田丸楡

BL小説書きです。紙の本になるのを目指して毎日3000文字書き続けています。 エブリス…

田丸楡

BL小説書きです。紙の本になるのを目指して毎日3000文字書き続けています。 エブリスタでは20作品投稿しています。そのうち2作品特集選出。フォロワー150人を超えました! エンガブが好き。 https://estar.jp/users/310914264

記事一覧

ブラック、グレー、いつかはブルー 10

〜社畜は鬱になって生き直すことに決めました〜 9話から何と4ヶ月が過ぎていた。自分の人生をなぞることがこんなに辛いとは思わなかった。 やっと今、続きを書けるように…

田丸楡
2年前
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ブラック、グレー、いつかはブルー 9

〜社畜は鬱になって、生き直すことを決めました〜 さて、グレーに、それもかなり濃い目のグレーに染まっていた私は、病気発症から辞めるまでの10年間の間、はたらきかたを…

田丸楡
3年前
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ブラック、グレー、いつかはブルー 8

〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜 さてここまで、私の経験を書き綴ってきたのだが、ここらで少し、はたらきかたについて触れよう。 10年ひとむかし、と言…

田丸楡
3年前
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ブラック、グレー、いつかはブルー 7

〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜 「発見が遅かったら危険でしたよ。入院ですね」 病院で言われた台詞がうまく頭に入ってこなかった。 ええと、というこ…

田丸楡
3年前
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ブラック、グレー、いつかはブルー 6

〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜 20代のうちに、私はこの会社の中でありとあらゆる経験を積んだ。 大きなプロジェクト、尊敬する先輩と社長との揉め事、…

田丸楡
3年前
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「ブラック、グレー、いつかはブルー」を五話まで書いて、とりあえず体調がすぐれない😭ので、ゆっくり書こう・・・

田丸楡
3年前
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ブラック、グレー、いつかはブルー 5

〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜 4回目を終えて、悪夢を見た。 ちなみに現在はこの中に出ている会社を退職して2年が経っているので、いわゆるフラッシュ…

田丸楡
3年前
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ブラック、グレー、いつかはブルー 4

〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜 さて、前回があまりにも重かったため、出来るだけライトに行きたいのだが、うまく行くかどうかは神のみぞ知ると言うこと…

田丸楡
3年前
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ブラック、グレー、いつかはブルー 3

〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜 ある先輩の話をしようと思う。 彼はとても優秀で思いやりがあり、どこにも欠点の見つからないパーフェクトな人物だった…

田丸楡
3年前
3

ブラック、グレー、いつかはブルー 2

〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜 そもそも私がこの会社に入ることになったきっかけは、高校生の頃。17歳、高2の時にアルバイトという立場で入った。 …

田丸楡
3年前
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ブラック、グレー、いつかはブルー 1

〜社畜は鬱になって、生き直すことを決めました〜 プロローグ 仕事を辞めた。 30年働いた会社をやめた。 企業といっても、とても小さな会社だったが、歴史は古い。そ…

田丸楡
3年前
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わたしのおにいちゃんのはなし 24

第二十四話 兄が家を出たのは、あの騒動の一週間後だった。 出るまでは、毎日母と、父と兄が口論を繰り返し、それが始まるとわたしは無言で二階の部屋に上がった。最初は…

田丸楡
3年前
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わたしのおにいちゃんのはなし 23

第二十三話 夕食は食べなかった。というか、部屋から出ていかなかったというのが正しい。 部屋の扉の内側にタンスを移動させて鍵の代わりにした。 兄はどうしただろうか…

田丸楡
3年前
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わたしのおにいちゃんのはなし 22

第二十ニ話 岡田先生と話をした翌々日、わたしはいつも通りに宮ちゃんと下校した。 あの雨の日のことは言わなかった。 山岡くんのことは、宮ちゃんが必要なら言うだろうし…

田丸楡
3年前
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わたしのおにいちゃんのはなし 21

第二十一話 「木崎」 無音で泣いていたわたしの背後から、聞き慣れた声がした。あわてて涙を拭いて振り返ると、副担任の岡田《おかだ》先生が立っていた。 「どうしたん…

田丸楡
3年前
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わたしのおにいちゃんのはなし 20

第二十話 今日は宮ちゃんは塾の日だ。 朝は一緒に来たけれど、雨が降っていたせいもあってあまり話が出来なかった。クラスが変わってしまってからは、朝だけが宮ちゃんと…

田丸楡
3年前
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ブラック、グレー、いつかはブルー 10

ブラック、グレー、いつかはブルー 10

〜社畜は鬱になって生き直すことに決めました〜

9話から何と4ヶ月が過ぎていた。自分の人生をなぞることがこんなに辛いとは思わなかった。

やっと今、続きを書けるようになったのは、やはり時間薬のおかげ。この薬は失恋以外にも効くらしい。

仕事を辞めた私は、鬱が加速した。

昼夜逆転。無気力。罪悪感。自己嫌悪。世の中の人が一仕事終えてそろそろ終業、という頃に目覚め、朝日が登る頃に眠る。トイレに起きる以

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ブラック、グレー、いつかはブルー 9

ブラック、グレー、いつかはブルー 9

〜社畜は鬱になって、生き直すことを決めました〜

さて、グレーに、それもかなり濃い目のグレーに染まっていた私は、病気発症から辞めるまでの10年間の間、はたらきかたを変えつつも、やはり毎日ちゃんと仕事に精を出していた。

濃い目のグレーなものだから、当時はよく「社長に似ている」と言われていた。
ものすごく嫌だったが、最も社長の近くではたらいていた私は、いつしか彼と同じようにしか物事を考えられなくなっ

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ブラック、グレー、いつかはブルー 8

ブラック、グレー、いつかはブルー 8

〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜

さてここまで、私の経験を書き綴ってきたのだが、ここらで少し、はたらきかたについて触れよう。

10年ひとむかし、と言うが、本当に10年でずいぶんとはたらきかたは変わったと思う。
私はYouTubeを見るのが好きだが、YouTuberという
仕事が確立したのも、ここ10年ほどだろう。
昔はいわゆる「ちゃんとした」仕事だけが認められていたが、今は新しい

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ブラック、グレー、いつかはブルー 7

ブラック、グレー、いつかはブルー 7

〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜

「発見が遅かったら危険でしたよ。入院ですね」

病院で言われた台詞がうまく頭に入ってこなかった。
ええと、ということは、まず社長に言って引き継ぎを・・・いや、その前にこんなこと、信じてもらえるだろうか?私の頭の中では早速シュミレーションが始まった。
当時私の周りでは、私ぐらいの年代で「脳梗塞(の前触れ)」を発症している人は少なかった。その後、芸能人

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ブラック、グレー、いつかはブルー 6

ブラック、グレー、いつかはブルー 6

〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜

20代のうちに、私はこの会社の中でありとあらゆる経験を積んだ。
大きなプロジェクト、尊敬する先輩と社長との揉め事、頑張っているにも関わらず、便利な奴だとこき使われる日々。

こういう経緯を辛すぎて誰かに相談したりすると、こう言われることが多かった。

「でも、そのおかげで今があるんでしょ?」
「辛いのはあなただけじゃないよ、私なんかね・・・」
「感

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「ブラック、グレー、いつかはブルー」を五話まで書いて、とりあえず体調がすぐれない😭ので、ゆっくり書こう・・・

ブラック、グレー、いつかはブルー 5

ブラック、グレー、いつかはブルー 5

〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜

4回目を終えて、悪夢を見た。
ちなみに現在はこの中に出ている会社を退職して2年が経っているので、いわゆるフラッシュバック的なものだと思われる。
しかし続けるのだ。

「どんな無理難題をふっかけてもどうにかする奴」への道を邁進し始めた二十代の私。
そもそも負けず嫌いな性格の私は、与えられた仕事をこなしきれない、という状況が気に入らず、ただひたすらに仕

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ブラック、グレー、いつかはブルー 4

ブラック、グレー、いつかはブルー 4

〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜

さて、前回があまりにも重かったため、出来るだけライトに行きたいのだが、うまく行くかどうかは神のみぞ知ると言うことで、とりあえず4回目スタート。

ここらで私の仕事について、触れたいと思う。

正式入社は18、そこから6年で私は最も大きなプロジェクトを任される事になった。お前に任せる、と言われた時は、正直喜びより恐怖の方が大きかった。なぜなら、今まで

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ブラック、グレー、いつかはブルー 3

ブラック、グレー、いつかはブルー 3

〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜

ある先輩の話をしようと思う。

彼はとても優秀で思いやりがあり、どこにも欠点の見つからないパーフェクトな人物だった。同僚、後輩はもちろんのこと、先輩や社長にも一目置かれていた。
軸と言おうか、彼の存在が当時の会社を支えていたと言っても過言ではなかった。
彼の魅力に引き込まれる女性はたくさんいたと思う。

私はこの頃、会社の、そして社長のブラック加減

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ブラック、グレー、いつかはブルー 2

ブラック、グレー、いつかはブルー 2

〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜

そもそも私がこの会社に入ることになったきっかけは、高校生の頃。17歳、高2の時にアルバイトという立場で入った。

(働いて30年、というのはこの17歳の時からの計算だ)

とは言ってもいわゆる普通の高校生がするバイトとは違う。特殊な職種であったため、ほぼ「修行」のようなものだったと思う。

思えばあの時から、よくよく観察すればブラックの片鱗を垣間見

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ブラック、グレー、いつかはブルー 1

ブラック、グレー、いつかはブルー 1

〜社畜は鬱になって、生き直すことを決めました〜

プロローグ

仕事を辞めた。

30年働いた会社をやめた。

企業といっても、とても小さな会社だったが、歴史は古い。そして小さくてもきちんとブラックだった。

若い頃は平気だった。

カリスマ性のある社長は、未熟な私には輝いて見えて、彼の言うことは全て正解だと思えた。

先輩も後輩も、みんな同じ方を向いていたから、私もそっちを向いていた。

嫌じゃ

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わたしのおにいちゃんのはなし 24

わたしのおにいちゃんのはなし 24

第二十四話

兄が家を出たのは、あの騒動の一週間後だった。
出るまでは、毎日母と、父と兄が口論を繰り返し、それが始まるとわたしは無言で二階の部屋に上がった。最初は怒鳴り声がする度に心臓が痛んだが、一週間も続くと、ため息しか出なくなっていた。

ある日、母から話を聞いたのか、父が事情を話す、と言ったのをわたしは断った。

(華にちゃんと説明しなかったのは父さんと母さんの落ち度だ。全部話すから聞きなさ

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わたしのおにいちゃんのはなし 23

わたしのおにいちゃんのはなし 23

第二十三話

夕食は食べなかった。というか、部屋から出ていかなかったというのが正しい。
部屋の扉の内側にタンスを移動させて鍵の代わりにした。

兄はどうしただろうか。
双羽さんは本当に兄から離れてしまうんだろうか。自分の部屋で悶々としていたわたしは、兄がいつ二階の部屋に戻ってきたかどうかも解らなかった。
時々階段を上がってくる音がしたが、多分それは母だ。さすがに今夜はノックをしてこなかった。

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わたしのおにいちゃんのはなし 22

わたしのおにいちゃんのはなし 22

第二十ニ話

岡田先生と話をした翌々日、わたしはいつも通りに宮ちゃんと下校した。
あの雨の日のことは言わなかった。
山岡くんのことは、宮ちゃんが必要なら言うだろうし、言わないのならそれはそれで良かった。
岡田先生の話を聞いて、少しは前向きになれたものの、急にすべてを悟れるわけでもない。
なので、わたしは余計な情報を入手せず自分を守ることにした。わざわざ聞き出して、治りかけの傷をえぐる必要はないと思

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わたしのおにいちゃんのはなし 21

わたしのおにいちゃんのはなし 21

第二十一話

「木崎」

無音で泣いていたわたしの背後から、聞き慣れた声がした。あわてて涙を拭いて振り返ると、副担任の岡田《おかだ》先生が立っていた。

「どうしたんだ・・・こんな時間に」

まもなく下校の最終チャイムがなる。すみません、とわたしは鞄を持って立ち上がった。

「待て待て、ちょっと落ち着け。座って座って」

「か、帰ります」

「いいからちょっと待てって。な?」

岡田先生は、うちの

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わたしのおにいちゃんのはなし 20

わたしのおにいちゃんのはなし 20

第二十話

今日は宮ちゃんは塾の日だ。
朝は一緒に来たけれど、雨が降っていたせいもあってあまり話が出来なかった。クラスが変わってしまってからは、朝だけが宮ちゃんとの情報交換が出来る大事な時間だった。
もちろん兄の問題については話せない。そもそもわたし自身、何があったのかはっきり知らないのだから。
それ以外は、宮ちゃんには何でも話した。隠し事や秘密はなかった。少なくとも、わたし側には。

その日の放

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