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【感傷と音楽:前編】いま、民族音楽を知らなければならない3つの理由〜寅次郎の!音楽道(仮)〜

こんにちは、寅次郎です!
突然ですが、皆さんはどんな時に音楽を聴きますか?

ジブリ 浜辺

実は、人は癒されたい時に音楽を聴くという調査結果があり、音楽を通して感傷に浸りたい心理作用まであるのです。

そして、その心理作用が音楽業界の展望に影響してしまうことも・・・

今回は、そんな【感傷と音楽】の関係性そこから紐解かれる民族音楽をいま知るべき理由を詳しくご紹介します!

詳しく説明していく3つの理由とは、こちらです。

●理由1:癒しを求める現代人の存在
●理由2:楽曲づくりに創意工夫が求められるアーティストとカノン進行のリスク
●理由3:人類の根源的癒しを与える民族音楽、そして・・・

①はじめに 〜なぜ人は音楽に癒しを求め、感傷に浸ろうとするのか〜

2019年と2020年に行われた全国10万人の男女を対象としたアンケートで面白いデータが判明しました。

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2019年から2020年にかけ世の中が大きく変化した中で、『お腹一杯食べる』『何も考えない』というリラックス方法を選ぶ人よりも『音楽を聴いて過ごす』と答えた人の割合の方が高かったのです。
2019年よりも、さらに順位を伸ばし需要も高まっているのも分かります。

今や、ご飯よりも癒す効果があるとも考えられる『音楽』
人は、単に音楽に癒しを求めるだけでなく、そこに『感傷に浸る』ための要素も求めたのでした。

まずは、『感傷に浸ろうとする心のメカニズム』から簡単にご説明します。

人は無意識のうちに傷ついた心を癒したいと感じていて、感傷に浸ることがあります。
心が苦しくなるような切ない感情に浸ることで、自分自身の気持ちや傷の深さとまっすぐに向き合うことができ、結果的に辛い状況から抜け出すことにつながる場合があります。
悲しさや切なさから目を背けても何も解決にもならないと知っている人は、自分の気持ちを押し殺さず、前を向くために感傷に浸るのです。

感傷に浸る行為自体、とても前向きな行為であるというのは意外だったのではないでしょうか。

そして、人は音楽を通して楽曲の世界観を『理解』し『追体験』をする性質があることも分かっています。

(中略)
音楽が私たちの感情に及ぼす影響に関しては、ほかにも非常に興味深い事例があります。その1つが、音楽に関係する気持ちには、「理解する」感情と、「実際に体験する」感情の2種類があるという説です。これはつまり、人は曲で表現されているのと全く同じ気分に陥ることなく、ある音楽に込められた感情を理解できる、ということです。

(中略)
実生活とは違って、音楽の場合は、聴いていても実際に自分の身に危険が及ぶような恐怖を味わうことはありません。曲に込められた感情を「理解」こそすれ、本当にその気持ちになるわけではない、というわけです。これはほかの人の感情を追体験しているようなもの、と言えるかもしれません。

感傷に浸り現実に向き合おうとする行為に対して、『音楽』は自らの身に危険が及ぶことなく『他者の感情を追体験』することで『向き合うべき感情を理解』させてくれる存在なのです。

この点を踏まえると、2020年に音楽に癒しを求める人が多かった理由もより理解できるのではないでしょうか。

そして、この癒しを求める人達に大きな癒し効果を与える代表的な音楽に『カノン進行』を用いた楽曲があるのですが・・・

実は、このカノン進行は聴き手には良い影響を与えますが、楽曲作りをするアーティストには危険性が伴うものなのです・・・

②カノン進行という悪魔の実 〜その効能と危険性について〜

《カノン進行の効能》

まず、カノン進行について簡単にご説明します。

「カノン進行」というのは、ヨハン・パッヘルベルが作曲したカノンという曲の和声の理論の事を指しています。

「キーコード=C(ド)」で表します。
C→G→Am→Em→F→C→F→G

上記がカノン進行のコードとなります。

このコードの流れには、誰もが親しみやすいと感じることができる雰囲気があり、美しい流れとして広く認識されています。

たとえば、スピッツのチェリーなどに使われています。

カノン進行は音楽業界の中では、まさに黄金コードと言われる存在でヒット曲の裏には実はカノン進行があったというのも全く珍しいことではありません。

ちなみに、カノン進行を使った代表的な作品でありイントロが非常に酷似している曲を2曲ご紹介します。まさに、ヒット曲であり広く親しまれる名曲です。

※『Let It Be』ーThe Beatles

※『少年時代』ー井上陽水

しかし、このカノン進行という黄金コードに危険性を提唱する人がいます。

《カノン進行の危険性》

マキタスポーツさんは、自身の著書で『カノン進行は一発屋を生む』と述べています。

僕は、ポップスって「大いなる予定調和」的なものだと思うんです。
すごく安心というか、安全というか、「範囲内からはみ出さない」ということが、不文律じゃないけどあるように思えて。
で、ある程度自分で曲を作ったり、ポピュラーミュージックの中身を分析していくと、曲というのは、その範囲からはみ出さないように、骨子を作っていることがわかってきたんです。
そこからはみ出して突飛なことをやってしまうと、多くの人がその曲を聴きたいという気持ちになりづらいから、範囲の中で作るんだと。
つまり、そうしないと売れないからなんだと気づきました。

他にも、カノン進行を意識してしまうと、カノン進行を用いた曲自体は多くの人に受け入れられヒットはするものの、その曲を超えること自体が難しくなるリスクがあること・次曲でカノン進行から外れようとすると受け入れてもらいづらくなるリスクがあることも指摘されています。

悪魔の実

まさに、効能だけでなく危険性が伴う悪魔の実と言えます。
一概には言えないかもしれませんが、この悪魔の実しかアーティストに用意されていなかった場合、聴き手は満足してもアーティスト自体が困窮してしまいます。

③新しいヒットの法則としての民族音楽的楽曲づくり

それでは、『既存のヒットの法則性に当てはめることなく新鮮に感じてもらえる楽曲作りをするにはどうしたら良いのか』、その答えともなる要素を民族音楽に見つけたのでご紹介していきます。

《民族音楽①ヨナ抜き音階》

まずは、『日本民族』という大きな括りから見ていきます。
日本人が古来から親しんできたのは、決して『ドレミファソラシド』という音階ではありませんでした。それは、国歌”君が代”でも使用された『ヨナ抜き音階』でした。

ある番組で音楽プロデューサーの亀田誠治さんは、このように語っていたようです。

ヨナ抜き音階とは、明治時代、「ドレミファソラシド」を「ヒフミヨイムナヒ」と呼んでいた頃の名残りで、「ヨ」と「ナ」、つまり「ファ」と「シ」を抜いた音階のこと。ノスタルジックな響きを持ち、J-POPの名曲に深く関わっているという。

「ドレミファソラシド」は、明治時代に西洋から輸入された音階で、それまでの日本の音楽はおおむね5音階だった。当時の日本人にとって「ドレミ~」は、かなり難しい音階だったため、学校の授業で教える「唱歌」を5音階で作ることを政府が推奨、ヨナ抜き音階が発案された。結果、「桃太郎」を始めとして、数多くの唱歌が作られ、ヨナ抜き音階は日本人の音階のスタンダードとして浸透した。

『ドはドーナッツのド〜♪』と歌われる以前から、日本独自の音認識がありヨナ抜き音階もまた童謡や唱歌に多く使われるなど古来より日本民族に親しまれてきた音階です。

このヨナ抜き音階は、日本人にはどこか懐かしさ・郷愁感や和を連想させ惹きつける効果があります。
つまり、日本人ならば潜在的に求める音階であると言え、日本で活躍するアーティストにとってはこれ程使わなくてはもったいない音階はないということです。
また、聴き手にとってはヨナ抜き音階を理解した上で楽曲を探すと、確実に満足できる新たな音楽の楽しみ方が生まれるとも言えます。

以下は、ヨナ抜き音階を使ったJ-POPの代表例です。

※『にんじゃりばんばん』ーきゃりーぱみゅぱみゅ

※『千本桜』ー初音ミク

※『恋』ー星野源

※『夜桜お七』ー坂本冬美

※『パプリカ』ー米津玄師

※『ライディーン』ーYMO

※『恋するフォーチュンクッキー』ーAKB48

※『夜の踊り子』ーサカナクション

●まとめ

今回の記事【感傷と音楽】の『前編』は、ここまでです。

いかがでしたでしょうか。
感傷というものが如何に人にとって大切なものであり、音楽が如何に大きな影響を与えているか、そこに潜むリスクを知っていただけたのではないかと思います。
また、民族音楽という日本古来のものが現代音楽を支える大きな可能性があることも感じ始められた頃でしょう。

次回、『後編』では更に民族音楽を深掘りしてお届けします!
それも、人類音楽史の中でも未開の部分も多い分野に大きく触れていきます!

どうぞ、お楽しみに!

それでは、次回お会いしましょう!


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