雪が降る夜、深海を思う
ただ雪が降る夜、わたしは見上げる。
しんしんと、というような静けさではない、かといって大粒の綿がもりもりと、とまではいかない。吹雪いている訳でもない。ただ、何遍も見飽きた通勤路の何一つにも目が向かず、ああ雪だ、と思うほどの雪である。主の祝祭を彩るなど興味のないような、主役の雪である。
そういう雪の日、わたしは深海を思う。
横断歩道を待つ自分の足元が海底に接地する。一度とも見えることのない海面を見上げ、果てのない暗がりからふわふわと揺れ落ちるプランクトンを見つめる深海の暮らし