焼き場より/羽虫の散歩のわびしさに
うさぎの耳の中から出てきた羽虫が初めて飛ぶことになったのは一台の霊柩車の中で、その次に飛んだのは窓のわずかな隙間で、その次が新宿に続いている国道だった。彼は標識を見て、その道が都市に続いていることを知った。彼は会ったことのない母を探すための旅をしようと思い立った。そうして、仲間の羽虫や、見知らぬ風の助けを借りながら、国道を新宿へ向かって飛んで行った。
薬指の先に、一匹の羽虫がとまっていた。足は細かな毛に覆われて、複眼は巨大すぎた。僕は息を止めて、力を込めて目を見開き、瞬きも