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”からまわり野郎”では?~「からっ風野郎」

若尾文子を辿っていくと避けて通れない作品がある。
三島由紀夫主演・「からっ風野郎」である。1960年公開。

当時の三島はすでに文壇の寵児、彼の主な作品はこのころまでに著していたというから実に早熟な作家だったのだと思う。
そんな彼が、ある作品の評価が芳しくなく、心機一転映画界に飛び込んだのがこの作品だとか。

内容は、当時流行りのギャング・ヤクザもので特にどうということはない。三島の演技は、意外とサマになっている。と、見始めのころは思った。
でも、次第に違和感を覚えてくるのだ。なんだろう。そう、彼は演技をしているのではない。「演技の演技」をしているようなのだ。だから周囲のプロの演者から浮いてしまっている。
ゆえに、キャラクターの掘り下げができていないから、彼の役がまったく魅力的ではないのだ。

そんな彼に惚れる役の若尾”あやや”文子の演技まで、なぜか唐突に見えてしまう。かわいそう。

そういう訳で、本作は三島とあややが出ているというだけの作品。三島好き・あやや好き・映画好き以外の人は見なくてもいい作品とも言える。
でもそれで映画史に永遠に残る作品にもなったわけで、キャスティングはやっぱり大事なんだなぁと思った。

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