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ファミリー向けヤクザ映画~「セーラー服と機関銃」「二代目はクリスチャン」

昔の日本人は、実にヤクザ映画が好きだった(のだろうか)。
いわゆる任侠もの・実録ものに留まらず、ファミリー向けの映画もその題材たりえたのだったのだから、やっぱりそうなのだろう。
件の角川映画にしても同じ。その中から代表的な二つの作品を紹介する。1981年公開「セーラー服と機関銃」と1985年公開「二代目はクリスチャン」

この2作を比べると「セーラー服と機関銃」の方が少しコミカルでありどことなくふわふわした印象を受ける。それこそ相米風というものか。
当時10代であった薬師丸ひろ子の素朴な演技もいいのだが、彼女から少女から大人の女性に成長していくのもこの作品のもう一つのテーマともなっている。渡瀬恒彦とのバランスはどうか、これって今なら作れないよなあとか、いろいろ思ってしまうのだけれども、こういう攻めた作品も昭和ならではか。有名な「カ・イ・カ・ン」は彼女なりの啖呵だったのだろうが、これはそれまでのヤクザ映画へのアンチテーゼとも言うべきセリフだろう。事実映画史に残る名台詞となった(カリカチュアライズされすぎてはいるが)。

一方の「二代目はクリスチャン」はところどころにコミカルな場面はあるものの、比較的凄惨な内容である。バタバタと人は死に、子どもも無事ではない。同じく今ならNGな描写も多い(むだなポロリも・・・)。
「セーラー服と機関銃」がヤクザ映画へのアンチテーゼならば、本作は伝統的なヤクザ映画を踏襲しつつあるし、つかこうへい原作なだけあって芝居がかっている印象が強い。
志穂美悦子というと、JACが輩出した最高のアクションスターの一人で、1970年代のカンフーブーム時にはこんな作品を主演している。

ストーリーはブルース・リーのドラゴンシリーズそのまんま。見どころは志穂美のキレのあるアクションくらいか。でも、「二代目はクリスチャン」で彼女が主演となればこのアクションを期待したファンも少なくなかったのではないだろうか。なのに、本作ではそのアクションは少なめ。日本刀による殺陣中心だったので少々消化不良の感も。
それにしても、志穂美悦子のお美しいこと。まさに天与のもの。

シスター”悦子”が最後にキレて啖呵を切る場面はこちらを意識したのかもしれないが、残念ながら迫力は足元にも及ばない。
「鬼龍院花子の生涯」の最後の場面、夏目雅子の迫真のセリフである。「なめたらいかんぜよ!」。1982年の作品なので、意識していないはずがない。

ヤクザ映画はこの後も「極道の妻たち」シリーズとか北野映画等で、しばらく命脈を保っていくが、法律の整備も進み「反社会的勢力」とされるに到り我々からは忌避すべきものとされていき、映画の題材としては取り上げられなくなっていく。
一般向け映画としてはこれくらいが最後のピークだったのだろう。
群像劇としては面白い材料にはなり得るのだけど、まあ仕方なし。

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