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#5-1 振り返りをもとにした授業スタイルの変容:【教員インタビュー: 中村宏美先生 #1】

みなさんこんにちは。リフレクションメソッドラボラトリー事務局です。リフレクションメソッドラボラトリー(以下RML)では「MAWARUリフレクション」というプロジェクトを行っています。

MAWARUリフレクションは、「リフレクションによる個人の気づきが周囲に循環し、社会を変える」をテーマに、教育にリフレクションを取り入れる活動を2016年から続けているプロジェクトです。
本記事では、MAWARUリフレクションで新しく始めた「教員インタビュー」の記事をお届けします。教育現場で、先生がどのようなことを考えているのか、とても面白い内容になっていると思いますので、ぜひご一読ください。
第5回の先生は、兵庫県で中学校教諭をされている中村宏美さんのインタビューです!いつものようにPodcastも用意していますので、ラジオ代わりにもぜひ聴いてみてくださいね。

VOL.5 中村 宏美 (なかむら ひろみ)さん

 兵庫県公立中学校での国語教師を経て兵庫教育大学大学院人間発達教育専攻教育コミュニケーションコースで学位取得。現在、市教育委員会に所属している。身体を動かすことと生ビールと読書をこよなく愛する、3人の息子たちを育てる母ちゃんでもある。

自己紹介及びリフレクションとの出会い

中村:公立中学校で国語教師をしております中村宏美と申します。(インタビュー当時)現在は兵庫教育大学大学院で大学院修士課程で学んでいます。
リフレクションとの出会いは、大野先生や長谷川先生とかとお話する時や大学院で勉強していること以外のことで、自分の実践の中でものすごくリフレクションを意識していたかっていうと、特にそんなことはありませんでした。
ただ、よくよく考えてみると、そういえば初任の時に出会っているっていうのを今思い出しました。当時、同じ勤務校の中堅ですごい実践者の先生がいらっしゃって、その先生からこんなことをしてみたらということで、振り返りシートを渡されました。それを授業の最後に子供たちに書かせてみて、振り返りっていうのを授業にも生かせるようにしてみたらって言われたんですが、実際、その時はそれこそ、今こうやって話をするときに初めて思い出すぐらい、リフレクションシートがどう役に立つのかとか、どう生かせばいいのかっていうのも全くわからなくて。今思い出したらそういえば初任のときにやったなというのは思うんですけど、その当時はもう本当に何も生かしていなかったです。
振り返りが子供たちにとってどういう影響があるのかとか、自分の授業にどういかせるのかっていうこともちっともわからなくて。初任のときなんで、それこそ教材研究するのがもう精いっぱいで。板書をどうしようとか、その程度を一生懸命やるぐらいしか頭になかったので、出会いと言われればその時なんですけど、さっぱりどう役に立つのかも全く意識してませんでした。

リフレクションを授業の中に取り入れてからの変化

生井:そうすると同僚の先生、先輩にあたる先生からこれやってみない?みたいなことで振り返りシートをご自身の授業の中で取り入れられ始めたそんなところが原点にあるんじゃないかっていうことですけれども、おそらくその当時とまた今のリフレクションの捉え方であったり実践であったりっていうのは少しずつ変わられてきているのかなっていうふうに思います。
そういう意味では、その経験が原点にありつつ何か実践で繋がってきてるっていうようなこと、あるいは変化してきているっていうようなこともあるのでしょうか?

中村:当時は、全くそんなことには意識はなかったので、そのうち面倒くさくなってやめたっていうのが正直なところなんです。それ以降、自分の実践として、教科書の中で子供たちが疑問に思ったことや感じたことを子供たちの中から拾いながら、それに沿って授業をするっていうことはやってはいたんですが、それがその授業の最後の振り返りとか、自分の授業を振り返る=省察するっていう意味では使ってはいませんでした。
そこから、新学習指導要領とかなる少し前から振り返りシートがよく教育実践の中で言われるようになり、そういえば私、若いときにやっていたなっていうのがありました。

あのとき先輩がやらない?って言っていたことって、それこそ20年ほど経ってまた一周回って。歌の流行みたいな感じで、そういう波って来るんだなっていうのを、感じ始めて、授業の中で取り入れるようにはなりました。
今の学校で、振り返りとして子供たちに書かせるようになったのは5年前です。それは、今の学校に勤めてから、子供たちに話が伝わらない、なんか子供たちとのギャップを強く感じるようなったことがきっかけです。その違和感は、私だけの思いではなく、他の教師も何か苦労してるところがありました。小さな学校だったんですけど、勉強が苦手な子供たちが多く、家庭背景もしんどい子供たちが多い学校でした。
でも、何とかしないと子供たちは、進路に困ります。学校の場所が、それこそ通学するのに苦労する鉄道も通っていない、辺鄙なところでした。ですから、自転車で行ける範囲のところの高校を考えると選択肢がやっぱり限られてきます。

また、どうしても私立となるとお金もかかるので、公立高校にどうしてもいかせてやりたいな。でも、この先、どうやって学力をつけていったらいいんだろうというのを、同僚たちと話し合うようになって、授業を実践をしていく上で最後に子供たちに振り返りシートを書かせるようになりました。
振り返りシートをもとに子供たちが、どんなところに疑問をもったのか、今日の授業でわかったことや疑問を常に書かせるようにしていました。それを次の授業の最初に数人に発表してもらい、発表してもらったことをもとに、今日は、この話を進めていこうと決めて、対話形式で、子供たち主体で自由に進めていきました。

教科書との対話、グループでの対話で授業を進めていき、時々全員でその話を共有するというような授業を進めています。
最後に振り返りとして、授業の中で、わかったことや疑問に残ったことを繰り返していく授業をするようになってから、教科書にある順番に展開を読んでいくっていう授業よりも子供たちの読みが深まっている。疑問に思うことがものすごく深められるような授業になっているなっていう実感があります。

だからリフレクションは、めちゃめちゃ重要なんだというのが、私自身も実感したし、それこそ勉強が苦手な子供たちも、最初は書くのも1行とかいうところから始めていた子が、むちゃくちゃびっしり書くようになって、子供たちも実感したと思います。
それは、どんなことを書いても、思ったことがあったら、思ったことを言ってごらんというのを私が促していたので、先生が言っているということは俺、いいこと書いたんだなって、子供たちがいいように解釈してくれるようになり、自信をもつようになったのだと思います。従来の教師が指名して、子供たちが答えるっていう形式の授業よりも、子供たちが、自信をもって、「今俺こんなこと思ったんや」っていうことを自由に発表できるようになり、みんなの前でちょっと聞いて、っていうのを突然発表しだすような子供たちが出たりっていうような授業になったかなと思います。

時々それによって、なんか思いのほかの発言が出てしまって、そこからどう戻すって言ったらおかしいですけど、どう展開しようかなっていうのは私自身がものすごく授業の中で悩むこともあります。でも、そのことが、私自身が教材を深く読むきっかけになっているなと感じます。だからリフレクションシートを使いだしてよかったなと実感があります。

生井:お話を伺っていて、リフレクションということに注目されたことで授業のスタイルが変わり、それは、教科書を追っていく授業から子供たちの読みが深まっていく授業になり、振り返りの内容も1行からびっしりっていうふうにすごく変わっていった様子が伝わってきました。

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本記事はここまでです。更新は毎週木曜日です。
第2回目もお楽しみに!

【中村先生インタビューの記事】
# 5-1 中村先生インタビュー1(本記事)
# 5-2 中村先生インタビュー2
# 5-3 中村先生インタビュー3
# 5-4 中村先生インタビュー4
インタビュアー 生井・山下
執筆:山下

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