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#5-4 実践を学校外へ広く広めていきたい【教員インタビュー: 中村宏美先生 #4】

みなさんこんにちは。リフレクションメソッドラボラトリー事務局です。リフレクションメソッドラボラトリー(以下RML)では「MAWARUリフレクション」というプロジェクトを行っています。

MAWARUリフレクションは、「リフレクションによる個人の気づきが周囲に循環し、社会を変える」をテーマに、教育にリフレクションを取り入れる活動を2016年から続けているプロジェクトです。
本記事では、MAWARUリフレクションで新しく始めた「教員インタビュー」の記事をお届けします。教育現場で、先生がどのようなことを考えているのか、とても面白い内容になっていると思いますので、ぜひご一読ください。
第5回の先生は、兵庫県で中学校教諭をされている中村宏美さんのインタビューです!いつものようにPodcastも用意していますので、ラジオ代わりにもぜひ聴いてみてくださいね。

今後の活動、今後に向けて

生井:それでは、最後の質問をしていきたいと思います。中村先生は、リフレクションの実践もそうですし、お話の中で時々出てきていたあのP4Cの活動ですとか、学びの共同体っていうような言葉も出てきていたかと思うんですけれども、今後どのような実践をなさっていきたいか、特にリフレクションということなんですけれどもそれ以外の活動を含めていただいてもいいなと思います。今後の活動についてお聞かせいただけないでしょうか?

中村:私が先ほど、お話していたことは、子供たちとの活動が原点となって、子供たちと授業のやり取りをして、大学院に行く前までのお話です。
それとは別に、考えていることがあります。それは、研修の在り方です。
校内の先生方には、私の授業だけでなく、相互に授業見学ができるようにしていました。校内研修の一つのあり方として、今日は授業参観の日ですというのは特に決めずに、毎週、道徳の時間は、絶対みんなで相互参観する。それ以外の教科の授業も誰が見学してもいいという形をとっていました。
私は、子供たちの様子を見てもらいたいときは、職員朝会とかで、「今日の授業を見に来てくださいね」ということをよく言っていました。
参観後、他の先生方も「何か子供たちに良い作用はある」「こういう授業でやっていったら学びが広がるんだな。」「今まで、僕がやっていた道徳から変えていくと、子供たちがすごくよく発言してくれるようになった。それは、こういうことがあったからだな。」っていう教師の中でも実感をしてもらえるようになってきました。

ただ、うちの学校だけでやることがなんかもったいないなっていうのをすごく感じるようになりました。そこで、大学院でさらに自分がやってきた実践を理論で裏づけることによって大学院で私自身の実践のリフレクションをするようになりました。「これで良かったのかな。」とか「自分がやってきたことの理屈ってこういうことだったんだな」というのを、研究を通して私自身のウン十年の実践をリフレクションしている最中なんです。

それをもっと自分の学校の先生、100人程度の子供たちだけでなく、もっと多くの先生方と共有したいなと思うようになりました。そして、大学院に行って私の実践のリフレクションをして、どう今後の実践にいかすのかっていうことをちゃんと研究としてまとめることによって、もっと多くの人に研修として広めていきたいなっていうふうに考えるようになりました。

次、学校に転勤するのか、行政に行くのか、まだその辺は決まってはないですけれども、もっと多くの人たちにリフレクションを通して自分の活動を振り返り、授業実践をしていくことによって、子供たちにも良い変容が見られるんだよ。今までの何か知識の伝達だけじゃない学びができる。新学習指導要領にある「主体的・対話的で深い学びの実践」ができるような、そういう授業ができるんだよ。ということを広めていきたいなと、思うようになりました。

次転勤した先の学校でなのか、行政職について、そこの市町村の研修、教員研修としてできるのかその辺はまだわからないんですけど、そのような活動をもっと広めていくような活動にしていきたいなというふうには思ってるんです。

生井:大学院がこれまでの実践のリフレクションというのはまさにと思いながらお話伺っていましたが、山下さんはいかがですか。

山下:2年間の学びを通して大学院の学びってこういうことだなって今実感されてるものってありますか?

中村:もう自分の教職人生のリフレクションだなと思っています。論文や書籍を読むことによって自分の実践が常に裏付けされていくと思ってました。

山下:論文を読んでいく中で、自分の実践と繋がっていく感覚があるっていう感じですか?

中村:そうですね。それこそ私が現場にいるときは、学びの共同体に感化されていたんですけど、P4Cに関しては、所属してるのが教育哲学の研究室なんですけど、そこで研究をしていくときに、P4Cを知りました。

だからそれまではP4Cを知らなかったんですけど、こういう授業手法っていうのもあるんだっていうのを論文等から読んで知って。私が今まで研究しているウィトゲンシュタインという言語哲学者もいるんですけど、その人が言っていることと実践とをどう結びつけるかっていうところで悩んでいたときに、P4Cを知りました。

ただ、書籍とか論文ではこんなのがあるんだなと知っても、実際自分が今現場にいないので、この手法に沿った授業をさせてよっていうのもまたちょっと厚かましいし、迷惑ですし。

どうしたものかなって思っていたときに、もうこれもまためちゃくちゃ偶然なんですけど。教育委員会の知り合いからもらってる通信があるんですけど、その通信でP4Cが紹介されていて、その経緯で、大野先生を紹介していただきました。

大野先生が立ち上げられたP4Cの自主研修会で長谷川先生ともお会いして、長谷川先生にも授業を見せてくださいと言って今通っているっていうような話なので、P4Cに詳しいですっていうことは全然ないんです。

ですので、P4Cに関しては理論で理解し、文献から読んだのと何か結びつくような気がすると思う実践手法で、また、それを実際にされてる、長谷川先生とか大野先生の授業なり、また(他の)先生方のお話を聞いて、たくさんのことが結びついて、多くのことを実感してるっていうのが今です。そして、今後もし行政で研修担当をさせてもらえるのであれば、研修の手法として、この哲学対話を入れたいなというふうには思ってます。

新米の指導主事がこれをやりたいですってやらしてもらえるかどうかはまずもって無理やと思うんですけど、私の中では、初任者研修では、これとこれとこれなっていう決まったものをやるんじゃなくって、一緒に形作っていきたいと思っています。

初任者の中であったり、10年研修であったり、参加された方々と最初に哲学対話をする。例えば初任者であれば、初任者で、どんなことに不安があるとか、どういう理想を持ってるかなどを受講生から聞き出すことによって、どんな研修にしたいかっていう方向性が見えてくるのではないかと思っています。そうすると研修に対する意欲も上がるし、身につけられる資質能力、モチベーションとかも変わってくるかなっていうふうに思っています。

また、10年目の方々、メンターとして育てていかないといけない人たちにとってもそうで、10年やってきて、やっぱりうまくいかないこととか、これはうまくいったことっていうことなんかを哲学対話で、受講生同士で共有することによって、対話で解決していく。

この手法では、(通常の研修のように、解決するための技術・能力が)足りないからこれに関しては研修でやろうかっていうふうにしていくと、これまた何かやらせられる研修(という受け止め方になりがちで、そのような研修)よりも(哲学対話を取り入れた研修の方が)効果が上がるのではないかなというふうに考えています。P4Cの手法を研修に取り入れたいなって勝手に思っています。勝手に思っているだけなので今後の展望ということで、私が勝手に思ってるだけです(笑)。

生井:興味深く伺いました。ありがとうございました。

*ウィトゲンシュタイン
https://ja.wikipedia.org/wiki/ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン

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中村先生の記事はここまでです。4回に渡る、中村先生が考えるリフレクション、そしてその実践はいかがでしたでしょうか。本記事が、皆様のリフレクションへの興味、理解、実践につながるととても嬉しいです!

今後はまた新しい先生のインタビューが始まります。次のインタビュー記事もお楽しみに!

【中村先生インタビューの記事】
# 5-1 中村先生インタビュー1
# 5-2 中村先生インタビュー2
# 5 -3 中村先生インタビュー3
# 5 -4 中村先生インタビュー4(本記事)

インタビュアー 生井・山下
執筆:山下

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