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#1-2 今のリフレクションは昔のリフレクションと全く異なる【教員インタビュー:浜田先生#2】

みなさんこんにちは。リフレクションメソッドラボラトリー事務局です。リフレクションメソッドラボラトリー(以下RML)では「MAWARUリフレクション」というプロジェクトを行っています。

MAWARUリフレクションは、「リフレクションによる個人の気づきが周囲に循環し、社会を変える」をテーマに、教育にリフレクションを取り入れる活動を2016年から続けているプロジェクトです。(プロジェクトHPがありますのでぜひご覧ください。

本記事では、MAWARUリフレクションで新しく始めた「教員インタビュー」の記事の第2回をお届けします。教育現場で、先生がどのようなことを考えているのか、とても面白い内容になっていると思いますので、ぜひご一読ください。

お話を伺う先生は、兵庫県で小学校の先生をされている浜田啓久さんです!いつものようにPodcastも用意していますので、ラジオ代わりにもぜひ聴いてみてくださいね。

それではどうぞ!

リフレクションの実践について〜リフレクションカードを使った振り返り〜

生井:今のリフレクションの実践って、どのようなことに取り組まれているのでしょうか?

当時やっていた振り返りと現在やっている振り返り(リフレクション)は、全く別物だと思います。現在、振り返りについては、これまでと同様に授業の最後にすることはあるけれど、リフレクションについてはポイントポイントですることが多いです。例えば、総合的な学習の時間や委員会など何かしら活動の区切りとしてのリフレクションです。これまで委員会活動でやる振り返りと言えば、決められた振り返りシートに書くようないわばテンプレートを埋めていく作業になりがちで、書いている本人や見ているこちら側も楽しくない時間でした。ただ、それがリフレクションカードに出会って、全くの別の物になったと思っています。
※リフレクションカードの説明はこちらです

リフレクションカードを使ったやり取りの様子

例えばリフレクションリフレクションカードでは、二人称(相手に関する)の問いで「あなたは〜?」と尋ねられます。二人称の問いは非常にパワフルで、答えざるをえない、または、思わず答えたくなるという状況が生まれるというか・・その問いかけに対して、主人公が一人でじっくり振り返りをするというイメージです。いわゆるテンプレートの振り返りですと、自分に問いかけるのではなく、その場にふさわしい言葉探しになってしまう。そこにとどまってしまうと思います。これが、二人称の問いのカードを使うことで、聞く側、答える側も楽しくやり取りが生まれます。もう少し別の例えで答えると、英語の授業作りで言えば、問いと答えのやりとりをどう設定するかを考えますよね。特に5年生、6年生になると、相手が言うことをあらかじめ知っているのに問いかけようとする活動は違和感を持ち始めると思っています。場がしらけてしまうのです。いかに自分が知らなくて相手だけが知っていることを聞く状況をつくるかが大事です。そこにインフォメーションギャップが生まれるからこそ、問いのやりとりが機能します。

リフレクションカードもこれにどこか似ていて、自分自身が出会っていない自分に出会える瞬間があります。思わず言ってしまった。恥ずかしい・・など、リフレクションカードを使って対話することで生まれる空気感が楽しくて・・・。このような場づくりが、二人称の問いによって生まれ始めています。

生井:二人称の問いについてお話いただきましたが、振り返りと言えば、具体的に振り返り用紙に書くというのが一般的かなと思うのですが、浜田さんは、委員会活動等で振り返りをどのように行ってらっしゃるのですか?対話形式でしょうか?

まさにリフレクションカードの形式に沿って実践しています。まず発表者が、委員会活動の一学期を思い出しながら自分が成長したことや印象に残ったことを話します。その後、NO.2のカードを用いて質問者が発表者に質問を出していく。その質問に答えながら、自分自身が出会ったことのない自分に気付いていくという感じです。

先日も印象的だったエピソードがあります。リフレクションカードには、「相手のすごいところは?」のカードがあるのですが、あるグループでは、発表者が1学期チャレンジしたことを話した後、他のメンバーから「児童会の会長として私たち三人のすごいところは?」と質問されたんですね。発表者の子は、少し考えた後、「児童会からの提案を職員会議で発表する機会があり、いざ発表する時に震えてしまって、うまくできないことがあった。発表が終わった後、そのメンバーの一人が児童会の代表だからこそ、このような体験ができるんだと励ましてくれた。その言葉にとても救われた」と三人にまつわるエピソードをお話してくれたんです。
  
生井:リフレクションカードによる対話によって、意図せずに、「助けてくれてありがとう」という思いを伝える場になったということですね。
 
はい。実は、その話には続きがあります。質問者は発表者に質問をしているようで、自分自身にもその問いを投げかけています。本当は、リフレクションカードのルールの上ではしないことですが、その時、質問者も発表者が答えた後に、「実は・・」と話しはじめて、お互いの思いを伝える場になりました。その場で、質問者も発表者もその問いについて考え始めます。このやり取りそのものがリフレクションになっていると感じています。

実践の手応えと課題について

突然「ふりかえりをしましょう」と言っても、子供たちは、何も経験がない、あるいはそこに成果物がない状況で振り返りはできないと思います。先日、リフレクションと思考とは何が違うんだろうとある方がおっしゃっていました。私は、その感覚、とてもわかるところがあって・・私の場合は、授業とリフレクションについて何が違うのかと考えることがあります。例えば、生井さんは、シャンプーの銘柄は何を基準に選ばれますか?子供の時からずっと使っているからとか・・

生井:環境にやさしいとかでしょうか?

そうですね。ノンシリコンとか・・。このようにシャンプー選び一つとっても、人それぞれあると思います。それをみんなで出し合った時に、それぞれの判断がどんな基準によるものかを比べることで、自分の価値観に気付くことってあると思うんです。授業もそれに通じるとことがあるなと考えていて・・つまり、対話的な学びには、対話の中で、自身と比較する環境が生まれた時に自己への気付きが促される効果があるのだと思います。
 
以前、総合的な学習の時間の3年生のプロジェクトが大きく動いた瞬間がありました。当時の総合的な学習の時間のプロジェクトは、海岸のゴミ、漂流物を拾い、プロのアーティストの立場になりきりながら、プラゴミアートを作るというものでした。学習発表会で、それぞれが活動したことをまとめ、保護者に発表する機会がありました。その後に、子供たちに「満足した?」と聞いてみたんです。すると、子供たちは、「満足していない。」となったんです。「私たちがやりたかったのは、親に発表したいんじゃなくて、いろんな人に見てもらうこと。自分たちの作品の前で立ち止まってもらい、一緒に考えてもらうことなんです。プラスティックがだめとかそんな話ではなくて、この作品は何だろう?とその人自身の考えるきっかけにしてほしい、それがもともと私たちが作品に込めた思いなんだと・・だからお母さんに役頑張ったとほめてもらうことじゃないんだ。」と・・つまり、私が発問した問い「満足した?」その問いが大きなリフレクションになって、その後のプロジェクト(授業)の動機づけになりました。ですので、リフレクションは、何か授業の後のまとめにするだけでなく、再スタートにもなる。つまり学習のサイクルを生む動機付けとしても、ものすごく効果があるなと感じました。

生井:課題と感じていることはありますか?

書き言葉が入ると、その場にふさわしい、相手に伝えようとする言葉を選ぼうとするバイアスがかかってしまい、話し言葉ならあんなに素晴らしいことを言っていたのに、書いた瞬間にチープなものになってしまう。こんなことが多くありました。書こうとなった瞬間にハードルが上がることについてどうすればいいか・・ここが課題だと感じています。

生井:対話と書き言葉のギャップから難しさが生まれるということが課題であり、リフレクションをきっかけに子供たちが価値や自分軸に気付いたり、今後の動機付けに繋がっていくという手応えを感じられているということですね。

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本記事はここまでです。更新は毎週木曜日です。
第3回目もお楽しみに!

【浜田先生インタビューの記事】
#1 -1 浜田先生インタビュー
#1 -2 浜田先生インタビュー(本記事)
#1 -3 浜田先生インタビュー
#1 -4 浜田先生インタビュー

インタビュイー 浜田啓久さん
インタビュアー 生井・山下
MAWARUリフレクションメンバー
(執筆:山下、一部編集:中島)

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