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業界レポート 石油製品・石炭製品製造業

今回は弊社独自で行っている業界レポート「石油製品・石炭製品製造業」を取り上げたいと思います♪
業界レポートとは、リスクモンスターの心臓部であり、格付などの与信指標を生産・保守を行う「データ工場」が集計・分析しており、業界ごとの市場概要や業界動向、与信管理のポイントなどをまとめたレポートです。

こんにちは、佐々木正人です!
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(1)市場概要

① 営業種目
・ 石油精製業 ・ 潤滑油・グリース製造業(石油精製業によらないもの)・ コークス製造業 ・ 舗装材料製造業・ その他の石油製品・石炭製品製造業

② 業界規模
11 兆 3,150 億円
上場企業数 8社
非上場企業数 910 社

③ 業界サマリー
石油製品製造業は、石油を精製し販売する事業であり、石油のほか、原料を混合加工して潤滑油、グリースの製造を行う事業も含まれる。石炭製品製造業は、コークス炉による石炭の乾留や、石炭を主原料として練炭、豆炭の製造を行う事業である。また、アスファルト混合物など舗装材料を製造する事業も含まれる。その他に石油コークス、膨潤炭など他に分類されない石油製品、石炭製品を製造する事業も含まれる。

石油製品・石炭製品製造業の営業種目は以下の通りである。

営業種目 内容
石油精製業
原油及び留分を処理し、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、灯油、軽油、重油、潤滑油、パラフィン、アスファルト、液化石油ガス(LPG)などを製造する事業者。自ら採掘した天然ガスからガソリン、液化石油ガスなど製造する事業者は含まれない。

潤滑油・グリース製造業
購入した鉱油(廃油を含む)及び動植物油などを混合加工して、潤滑油、グリースを製造する事業者。

コークス製造業
石炭を原料として乾留によって、コークス及び副産物を製造する事業者

舗装材料製造業
アスファルト及びタールの舗装用混合物(乳剤、アスファルト混合材、タール混合材など)及び舗装用ブロック(アスファルトブロック、タールブロックなど)を製造する事業者

その他の石油製品
石炭製品製造業
石油コークス、練炭など他に分類されない石油製品及び石炭製品を製造する事業者

事業者数の割合は、石油精製業約4割と舗装材料製造業約3割で大半を占める。

(業界としての特徴)
・ 石油精製業は、「原油価格・為替・金利の動向に収益が影響される」、「原油から多岐に渡る製品が精製される連産品産業」、「原油の精製・備蓄に多額の投資を要する装置産業」、「石油は一次エネルギーの約半数を占める基幹産業」、などの特徴がある。また、B/S、P/L の特徴としては、粗利益率が低い、借入依存体質で自己資本比率が低いといった傾向がみられる。

・ 潤滑油製造業は、「多品種少量生産」、「製品価格は原油価格に同調」、「製品と半製品の区別をつけにくい」、「石油会社との相互依存関係」、「潤滑油の用途は減らないものの需要の拡大は期待しにくい」、「技術は成熟しており価格競争になりやすい」、といった特徴がある。

・ 舗装材料製造業は、「規模の利益が大きく影響する産業」、「道路舗装材料はアスファルト混合物を使用する場合が圧倒的に多く、品質で差がつきにくい」、「舗装材料需要は公共事業として発注される道路が大半を占めるため公共事業予算に動向が左右される」、といった特徴がある。

(2) ビジネスモデル

本頁以降、石油製品・石炭製品製業の中で事業者数の多い、石油精製業及び舗装材料製造業を中心に論じる。

石油産業は、世界各地で石油・天然ガスを採取する「探鉱・開発」、それらを消費国まで安全かつ効率的に運ぶ「輸送」、輸送された石油・天然ガスを使用可能な電力・ガス・ガソリン等に精製し、販売する「加工・流通」の3つのフェーズに大別される。

石油精製業は、「加工・流通」フェーズに該当し、原油の精製、備蓄に多額の投資を必要とする装置産業である。また、連産品産業として、原油からナフサ、ガソリン、軽油、重油など多岐に渡る製品を精製し、用途に合わせて多様な消費者に供給している。

日本においては、原油のほとんどを輸入に頼っていることから、石油精製業は、原油価格や為替の変動に収益が強く影響される。また石油産業は、他の製造業に比べ海外展開度合いが低く、内需依存が極めて高い特徴があるため、内需の減少は収益に影響を及ぼす。

石油製品は連産品であり、単一の商品のみを精製できず、精製する油種によって用途や流通経路が異なっている。消費単位の多い重油やナフサは化学工業に大量消費されやすいため直売が多いが、灯油など消費単位の小さい商品は卸売、販売店などを通して消費者に販売される。

下図に石油製品の精製フローを示す。

舗装材料製造業は、主として舗装の主要材料であるアスファルト合材の製造、販売を行う事業である。舗装材料の需要は、公共の道路舗装が大半を占めるため、公共事業予算に業績が左右される。アスファルト合材は高温で輸送しなければならないため、輸送可能距離である 30km 圏内が商圏となる。品質による差別化が難しい商材であるため、価格が競争力となりやすい。

(3) 業界動向

戦後の高度経済成長に合わせて石油の需要は増加し、2度にわたる石油危機の後、1980 年代に重油とナフサを中心に需要が減少したものの、その他の油種は 1990 年代まで増加を続けた。

しかしながら、2000 年代以降石油製品の需要は全体として減少傾向で推移し、国際エネルギー機関によれば、国内の石油製品需要は 2000年に 5.1 百万バレル/日あったものの、2030 年には 2.6 百万バレル/日まで判断すると予想されている。2023年までの見通しでは、軽油とジェット燃料を除く油種で需要の減少が見込まれている。

需要減少の要因としては、①脱石油を目指した産業、民生用の燃料転換、②少子高齢化や人口減少といった社会構造の変化、③CO2 排出量の少ないエネルギーへの転換や自動車の燃費改善、エネルギー消費効率向上による石油消費量の削減などが挙げられる。

舗装材料の需要の大半は公共の道路舗装であるため、舗装材料製造業は、公共事業関係費の多寡に影響を受けやすい。公共事業関係費は緩やかな減少傾向で推移しているため、国内アスファルト合材の製造数量も減少傾向である。東日本大震災の復興需要や老朽化したインフラの更新需要に下支えされているものの、都市部の舗装率はすでに高い状態であるため、アスファルト合材の需要が大幅に伸びることは考えにくい。

(4) 財務指標分析

(安全性分析)
自己資本比率は製造業全体で 48.6%と高い水準となっている中、石油製品・石炭製品製業における自己資本比率は 26.9%と低く、流動比率は 97.9%、固定比率は 174.6%といずれも製造業全体に比べ安全性に欠く水準となっている。

(収益性分析)
石油製品・石炭製品製業の総利益率は 7.8%、営業利益率は 3.3%、経常利益率は 3.6%と製造業全体の総利益率 22.1%、営業利益率 5.1%、経常利益率 7.0%に比べ低い利益率である。他の製造業に比べ石油製品・石炭製品は利幅の薄い商材であることが分かる。特に石油精製業は薄利多売のビジネスであり、原油代金が全体コストの9割を占めるともいわれており、高コスト構造であることが財務指標にも表れている。

(効率性分析)
資本効率の面において、総資本回転率は 1.7 回と、製造業全体の 0.9 回を上回り、製造業の中でも高い水準となっている。一方で設備投資効率は 32.6%と、製造業全体の 82.6%の半分以下の低水準となっている。

石油製品・石炭製品製業は、資本を活用して売上に繋げる力は有するものの、多額のコストが掛かっているために、付加価値の創出につながっていないことを表している。高コスト構造の業界であるため、合理化、効率化が経営に求められるといえよう。

(5) 与信限度額の考え方

■与信限度額の設定方法
与信限度額とは、取引において自社が許容する信用供与の最大額であり、いかなる時点でも超過してはならないものである。与信限度額は、「必要かつ安全な範囲内」で設定する必要がある。必要な限度額は、取引実態を基に算出し、安全な限度額は、自社の財務体力や取引先の信用力(格付)を基に算出する。

●与信金額(必要な限度額)
実際の取引において、必要となる与信金額。

石油製品・石炭製品製造業に対して発生する与信取引としては、原料の販売等での「売買取引」が挙げられ、継続取引における必要な与信金額は、以下のとおり算出される。

与信金額 = 月間の取引金額 × 回収サイト

取引を行う際には、自社の取引条件が斯業界の平均水準から大きく乖離していないか、確認すべきである。

買掛債務回転期間の業界標準値が「斯業界の平均的な支払サイト」を表しているため、「月間の取引金額×買掛債務回転期間の業界標準値」によって、与信金額の基準とすることができる。

石油製品・石炭製品製造業に対する平均的な与信金額 = 月間の取引金額 × 1.3 か月

●基本許容金額(安全な限度額)

基本許容金額は、自社の財政がどの程度の貸倒れまで耐えうるかを予め計ることで、自社の体力を超える取引に対する牽制機能を働かせるものであり、自社の財務体力と取引先の信用力を考慮して算出する。一例として、自社の自己資本額に対して、取引先の信用力(格付)に応じた割合を安全な限度額とする方法がある。

基本許容金額 = 自社の自己資本額 × 信用力に応じた割合

(例 : A 格 10%、B 格5%、C 格3%、D格 0.5%、E 格 0.3%、F 格0%)

●売込限度額(安全な限度額)

販売先において、自社との取引シェアが高くなり過ぎると、自社が取引から撤退することが困難となる恐れがある。そのため、取引先の信用力(格付)に応じて取引シェアに上限を設けるべく、取引先が抱える買掛債務額の一定割合を売込限度額として設定する方法が考えられる。

売込限度額 = 買掛債務額 × 信用力に応じた割合

(例 : A 格 30%、B 格 20%、C 格 15%、D格 10%、E 格6%、F 格0%)

仮に、取引先の売上高情報しかなく、買掛債務額が不明な場合であっても、業界標準値を用いて売上高総利益率(7.8%)と買掛債務回転期間(1.3 か月)から、以下のように買掛債務額を推定することができる。

買掛債務額 = 売上高/12[月商] ×(1-0.078)[原価率] × 1.3(か月)[買掛債務回転期間]= 売上高 × 0.100

(例:売上高 100 億円・A格の場合:100 億円×0.100[買掛債務額]×30%[信用力に応じた割合]=3.0 億円)

(6) 与信管理のポイント

石油製品・石炭製品製造業は、多額の設備投資を有する高コスト構造な業界である。石油製品製造業においては、原油価格・為替・金利の動向に収益が影響され、特に原油高かつ円安時には売上原価の上昇分を販売価格に転嫁しづらいため、収益を圧迫する要因となる。石炭製品製造業においては、公共事業関係費の多寡が収益に影響を及ぼす。

石油製品製造業は、精製設備の能力が石油製品の生産能力となるため、設備投資が十分に行われ、高度化・効率化された製造体制が構築されているかが重要である。為替や原油価格の変動により仕入れコストが変動した場合でも、他社に劣後しない価格で供給できるような効率化、コストダウンが行われているかの把握に努める。

石油製品は精製する油種によって流通経路が異なるが、過剰に精製された際には、系列外の業者に安く転売する、卸売に市場価格とかけ離れた金額で販売するなど、不透明な流通を行う場合がある。流通経路が多岐に渡りやすいため、商流についても正確に把握する必要がある。

収益性においては、先述のように多額の設備投資を要する業界であるため、投資額に見合った収益、キャッシュを得られているかがポイントとなる。扱っている商材が価格競争に陥りやすいため、採算の取れない価格での販売を強いられていないか注意が必要である。

財政面においては、規模に見合わない設備投資を借入金によって賄っているなどで財務が脆弱な状態に陥っていないか、設備投資のための資金調達余力を有するかを把握する。また、資産が効率的に稼働しているかを回転率分析などで確認し、総合的に評価する必要がある。

本日の内容は以上になります。
次回もお楽しみにでは

【参考資料】
財務省:「平成 29 年度法人企業統計調査」
総務省統計局:「平成 28 年経済センサス」
資源エネルギー庁:「石油産業の現状と課題」
石油製品需要想定検討会:「2019~2023 年度石油製品需要見通し」
一般財団法人日本アスファルト合材協会:「アスファルト合材製造数量推移(全国)」

業界レポート 石油製品・石炭製品製造業 2019.12

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