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友の移住と転職支援<5/最終回>

彼女の引っ越しが終わった。とはいっても、今の家を出ただけで、新しい家に荷物が届くのは数日後。引越し代を抑えたいと話していたので「混載便で受取日指定なし」とお願いするよう伝えていた。

空っぽになった部屋


「ここに引っ越してきた日が懐かしいなぁ~」
「場所迷って途中から手伝ったよね」

「そうそう。で、お母さんとお父さんが、”うちのこをよろしくお願いします”っていってたのがうけた。」
「あれはたしかに変な光景だった」

笑い声が響く。何もないフローリングに座り、管理会社の人が退去の確認にくるのを待っていた。

「結局転職しなかったなぁ」
「やね、後悔してる?」

「してないよー、今の会社好きだし。支店変わると半分転職みたいなもんだしね。どっちかというと、”しなかったこと”にびっくりしてる。」
「というと?」

彼女は私に向き直って座り直し、
「自分がこんなにワガママだったとは思わなかった!」と笑った。

決してワガママではない。自分の本当の気持ち大事にした結果だ。我慢せず、覚悟を決めて行動した結果だ。

「異動先の仕事開始前に連休取ったし、荷物の受け取りまで、浮いたお金で、旅行しながら新居に向かうことにした!」
「!?」
いつもだったら、そのお金は貯金するであろう、彼女からの意外な宣言。
驚いた。そして、本当に変わったんだなぁと感じた。

「で、これりおに。引っ越し祝い」と彼女は紙袋を差し出す。
「引っ越し祝いって私が贈るやつやん。笑」もらった袋の中には、美容液。

「自分を甘やかしたほうがいいね~」
という、彼女がそんなことを考えながら選んだのかと思うと、嬉しさと、寂しさがあふれ出した。

忘れたころのLINE


いつものことだが、忘れたころにアイコンが顔を出す。
「おげんきですか?」と書かれたスタンプ1個と、新居の写真。

< 忘れてた。どう、そっちの生活
> まぁまぁ。職場はイイね。地方って割と対面で
  会ってくれるお客さん多くて、テンション上がる。
< へぇ。
> 早くも後輩が出来てしまった…ちょっと不安
< 今なら大丈夫よ

彼女から「大丈夫」とスタンプが返ってきたが返事はしなかった。

翌日、宅急便が届いた。空けてみると彼女の住む街の名産品や野菜、さらには実家の親から送られてきたのであろう、地元の銘菓まで。

< すごいのきた!笑
> 親がめっちゃ感謝してて
< ○○家からめっちゃ愛されてるなぁ~
> で、昨日の今日やけど、、、後輩への伝え方わからんくて、
  すぐ上司に相談してみたよ~。
  どのあたりがむずかしい?とか、聴いてくれて話しやすかった。
  アドバイスも、指示じゃなくて、ヒントだったし。
< へぇー
> 「YES」(うさぎのスタンプ)
  やっぱり、察してチャンはよくなかったね。
  理解してくれないって思い込みも、
  伝えてないのにできるかーって今ならわかる。
< すごい気づきや
> そうなの、気づいたからどうしたらいいか考えることが出来てる。
< 「えらいねぇ~」(ペンギンのスタンプ)
  「すばらしぃ~」(ペンギンのスタンプ)

最後に「2人旅」の計画を立て、次はお互いの日程調整をしようとLINEを終えた。

愛の世界


数カ月自分のために時間をつかっただけで彼女は変わった。
無理やり変えたのではない。
気づいていくうちに、今よりよくなるには?と考え行動した結果、自然に考え方だけでなく、出来事に対する受け止め方が変わっていった。

お小言に対しては、
好かれていない という受け止め方から 
心配してくれたのかな? と変わり、
いつも気にかけてくれてありがとうございます と伝えると、
いつもがんばってるよね、応援してるよ と相手の思いを知しる。

好かれていない それは思い込みだった。
自分は応援される存在だった それは自信になった。

どんどん変わっていく世界で、彼女は愛される存在に生まれ変わっている。


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