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読書|声の在りか

声にならない声が存在する。自分の気持ちはどこに置けばいいのだろう?今日もまた、言いたいことをグッと我慢してしまった。

パートタイム勤務で小学四年生の息子を育てる希和は、自分の気持ちを伝えるのが少し不器用です。家のことは専ら希和が頑張っていますが、その頑張りを旦那は気づいていません。

そんな旦那は今日もまた、動画を見ながら夜ご飯を食べています。私が一生懸命作ったご飯を、動画の片手間に消費されいる姿に耐えかねて声をかけても、その言葉は旦那には届きませんでした。

誰かになにか想定外のことを言われた時、とっさに言葉を返すことができない。何日も考えてようやく「ああ言ってやればよかった」という言葉を見つけ出す。見つけた頃には、相手はもう自分が言ったことを忘れている。

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私も気持ち熟成型人間なので、言いたいことを心に蓄積させてしまいます。その瞬間言葉が出ればいいものの、言われたことが重い時ほど、感覚が麻痺してしまうのか、返された言葉に呆然してしまうのか、何も出てきません。もう、多分そういう特性。

感じたことをすぐ言えばいいじゃん!と言われたら、もうそれはその通りで、それができないから悩みます。そして、この”すぐ言えばいいじゃん!”ですらも返答に時間がかかるという、人によっては理解できないだろう思考回路です。ゼロ秒思考とか試した時期あったな…懐かしい。

家の中のことでモヤモヤしたことがあると、ナマズ(=旦那)には、気持ちが熟成された後に話します。「今更なんだけど…」と過ぎ去ったことを掘り起こすのに恐縮しつつ、言わなかったら自分の中の重石が溜まる一方なので、思い切って伝えると、ナマズはいつも真っ直ぐ目を見て聞いてくれます。ありがとう。

ある日「普段人前ではあまり話さないのに、noteでは饒舌だよね」とナマズに言われました。そうなんです。「きっと、これまで言葉を溜め込んでいたんだね」と理解してくれているナマズは、本当に素敵なパートナーです。ありがとう(本日2回目)。

物語は、声にできない言葉をたくさん抱える希和が、感情を爆発させる場面があります。そこでやっと、相手が希和の中に眠り続けている言葉に、灯を照らしてくれるのです。

誰がどんな気持ちを抱えているかは、外からは見えにくい。だから、気づいてあげられるかは難しいけれど、誰かが気持ちや考えを言葉にできる居場所を創ってあげることはできるかもしれないなと思いました。私でいうnoteのように。




寺地はるなさんの読書記録です。


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