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時代を見ればヒット作品が作れる

いつもお世話になっています。作家の浜口倫太郎(@rinntarou_hama)です。

ヒット作品というのは時代の鏡であるケースが多いです。

一つだけなれば偶然なんですが、二つ三つとヒットする作品に共通点があれば、それは時代性を含んでいるということです。

その作品内の世界観や価値観が現実よりも過剰か、もしくは正反対のものが人気を得やすいです。

現実世界は不安だらけですよね。お金、病気、将来など数え切れない不安が存在します。なんの心配もないという人の方が稀有です。

その不安を過剰にしたのが、サスペンスやホラーというジャンルです。

作品の中で強烈な不安を感じることで、現実で癒やされるんです。

『進撃の巨人』のヒットもこれに属します。

壁の中にある町が巨人によって崩壊する。これはここ十年で緊迫感が高まり、不安定になっている世界情勢を過剰にしたものです。

現実の不安が増せば、物語の残酷描写はより増します。今って少年マンガですら、殺人シーンばかりになっています。

こういう過剰系は不変的なものになりやすいです。これまでの世界で不安のない時代は存在しないでしょう。だからホラーというジャンルはいつでも一定の人気があるんです。

この逆で、時代の風潮とは正反対の世界観もヒットします。

例えば『異世界転生もの』ってここ十年ぐらいで流行って、もはやジャンルとして確立しています。

ラノベ、アニメも異世界転生ものだらけで飽和しているほどです。

いずれこの流行も去るだろうといわれていたんですが、一向になくなる気配がないですよね。

となるとこれって現代の若者の価値観を象徴していると考えた方がいいんです。

この場合、物語の世界が現実の風潮と逆なんです。

現実で問題になっているのが格差問題です。富めるものはより富み、貧乏なものは貧乏なまま。

この格差が世界中で問題になっていますよね。努力と根性だけではこの格差を覆せない。この傾向が深刻化しています。

容姿が優れていることを評価するルッキズムもまさに格差の象徴です。外見も努力ではどうしようもないことですからね。

よく冗談で、「もはや生まれ変わらないと成功できない」といわれますが、まさにこれが異世界転生ものなんですよね。

うだつのあがらない主人公が異世界に転生すると、超人的な能力を身につけていていたり、貴族の令嬢になっている。これが異世界転生もののフォーマットです。

日本ではチート、韓国ではソーダというそうです。

つまり現実とは逆なんです。物語世界で自分の欲望を満たし、現実の辛さを忘れる。こういう現象です。

メタバースが注目されているのもわかります。異世界=仮想空間ですからね。ゲーム内などの仮想空間で理想の自分になって過ごす方が快適なんです。

上の世代の方は「それでは人としてだめになる」と顔をしかめそうですが、それが時代の流れなんですよね。

そしてこの時代の流れと逆転したものを作品に持ち込むと、ヒットが狙いやすいんです。

例えばここ最近の風潮として家族ものがヒットしています。

小説では『そしてバトンが渡された』、映画では『万引き家族』とかありますよね。

これって現実では家族が解体されているからです。血縁というものが非常に薄れている。子供の虐待問題など目を背けたくなるニュースも多いです。

だから物語世界ではその逆を求めるんです。例に挙げた二作品は、どれも『疑似家族』なんですよ。血のつながりのない家族が物語の軸になっている。

こういう感じで流行作品を分析して、ヒットを生み出すやり方があります。

『スパイファミリー』というマンガが今ヒットしているんですが、編集者の方のインタビューを読むと、こういう分析をされていたんですよ。

だから疑似家族で家族の絆を描く漫画を作ろうと企画されて、この『スパイファミリー』が生まれたそうです。

つまり時代を見てその逆の価値観を物語に持ち込めば、ヒットの可能性がぐんとあがるんじゃないでしょうか。

以前これからの時代は『優しさと美しさの時代』だという記事を書きました。

今破天荒芸人や毒舌芸人が人気がなくなり、人を傷つけない笑いをする芸人が求められていますよね。パワハラも重大犯罪みたいな感じになっています。

さらに動画時代となって、ルッキズムがより際立っています。

だからこれと逆の価値観を作品にすればいいんです。

容姿の優れていない人間がむちゃくちゃモテる星に行くとか、毒舌を吐けば吐くほど評価されるパラレルワールドとか。

そういう発想で作品を作るのはありなんじゃないでしょうか。


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