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雪野鈴竜
2020年8月5日 13:29
高校一年生男子の田部素輝《たべすてる》は食が細かった。肉と野菜なら野菜を取るが、サラダを平らげるのも一苦労だった。 拒食症という訳ではない。食べ物を口の中に運んで噛み砕き、飲み込む。その行為が単純に面倒だった。幼い頃喉に骨が引っかかって病院に行った事もあり、魚もそれ程好きではない。「居ないよな……誰も。」 そんな彼には、“悪い癖”があった。 *** 小学校に入ってからは、幼稚園に居
2020年2月27日 12:27
何が何だかわからずに、男は人生で一番の激痛だと感じながら青い空をただ眺めていた。頭を動かせばさらに痛いと予想できたので目だけを動かすと、近くに自分を轢いたと思われる車が見えた。自分の周りからはざわざわと何人かの声が聞こえてくる。 突然の事故だった。会社に出勤するため駅に向かい横断歩道を渡っていた時に、信号無視した車が自分を轢いてきたのだ。地に足が付かず空中を舞う不思議な気持ちになりながら、過去