雪野鈴竜

短編小説を書きます。感想は全て大切に読ませて頂いてます。ありがとうございます!! ※5…

雪野鈴竜

短編小説を書きます。感想は全て大切に読ませて頂いてます。ありがとうございます!! ※500円の作品は最初の辺りだけ読めます。 ※小説や挿絵の無断転載・SNSでの無断使用・自作発言は禁止。

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【短編】アネモネの手紙

 校門の前まで着くと、スクールバッグから手紙を取り出す。何を考えているのか、数秒間見つめるとまたバッグに戻し、中へ入って行く女子がいた。  彼女の名は"文乃(ふみの)"、高校三年生。容姿端麗、その上気配り上手で男女関係なく誰に対しても親切。そんな彼女にはそこそこファンというものがついており、その内の一人であるクラスメイトの女子"憧(しょう)"は、こっそりと遠くから彼女の様子を眺めていた。  迷惑だけはかけたくないので、つきまとい等の行為はしないよう気をつけているが、たまに見か

    • 【短編】“なるほど”

       自ら命を絶つ時、私は一言“なるほど”って思った。  小さい頃はあんなにも死ぬのが怖くて、死んでしまったらどうなってしまうんだろうって、魂はどこへ行ってしまうんだろうって、怖くて仕方がなかった。  アニメを観るにも、漫画を読むにも、何に触れても凄く楽しかった。SNSを始めて、自分の呟きがいいねされた時の喜び、その数が増えた時、その内何のきっかけか、ニュースにも取り上げられるような存在になれた。  多くの者から評価されるのがとても嬉しかった。幸せだった。  けれども、その内──

      • 【短編】あの日の晩御飯

         私は今、暗闇の中にいる。この暗闇から抜け出す方法は一つだけ、“答えを出す”ことだ。けれども私は答えを出せないでいる。  何故なら、答えを出すのが一度きりだからだ。その答えもとても重要なもの、自分の答え一つで私の大切な人の命が決まるからだ。  この暗闇の空間を作り出した人から出題された問題がある。その問題に正解しなければ、その大切な人の命が失われる。正解すればその命が救われる。  出題はこうだった……初めて我が家に飼い猫がやってきたその日に食べた晩御飯のメニューだ。正直覚えて

        • 【短編】意味無しティー

          「ミルクティーって美味しいなあ」  その一言に意味はない。午前四時、トイレから帰った私は部屋の中で立ったまま一言、そう呟いた。周囲に人がいれば、その一言は呟けない。“急に何を言い出したんだ、この他人は”としか思われない。生きていくというのは、そういうことだ。何事も常に周りに人がいる。周りの人達と関わっていかなければならない。生きていかなければならない。  それは、周囲に人の目があるからだ。自分は常に誰かの目に入る……そう考えながら気を使いながら生きていかないと、変な目で見られ

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        【短編】アネモネの手紙

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          【短編】シガーデス

           その忍びの村は少し異常だった。私達外の人間からしたら異次元に近かった。普段着は着物、今時電化製品、テレビゲームもスマートフォンも無かった。子供達の遊びはお手玉やけん玉、外との交流は唐傘を作り売る事。そんな村では唯一、村の真ん中にブラウン管テレビだけが一つあるのだ。 「うわぁ、自然がいっぱいな村だな……」  私は思い切り空気を吸い込む──とても美味しい空気だが、小さな虫達が周りにいるのが気になった。目の中にでも入りはしないだろうか。 「……ん?」  坂を降りた先の広間で、大人

          【短編】シガーデス

          【短編】卵の道。

          「これはプリンです。」  そう女性が言い、指をさしたのは小皿の上に入ったただの生卵だ。何の変哲もない、丸い殻の中に乗っているであろう生卵、あのぷるんとした黄色と茶色の甘いスイーツではない。  目の前の男性がそれを見て首を傾げていると、女性も同じく首を傾げる。「どうしましたか?」と女性に聞かれれば男性は「いいや、これは生卵です。」と答えるのだ。しかし女性は不思議そうにまた首を傾げた。  男性は「何故、これがプリンなのですか?」聞いてみることにした。 「これは今から調理をすれば確

          【短編】卵の道。

          【短編/恋愛】期間限定理想彼氏

           中学校の中庭に、そこそこ大きなクリスマスツリーが飾られた。全クラスで一人ずつ自分用の靴下を木にぶら下げて、その中に各々欲しい物が書かれたサンタへの手紙を入れる。本当に貰える訳ではないので、書くだけ書いて自己満足を得て我慢を覚える……という、この学校での昔からの教育らしい。  中学三年生の星野小雪《ほしのこゆき》は、手紙にこんなことを書いた。“物静かでクールなイケメンの彼氏が欲しい。”と、現実に恋人ができたとしても、自分の理想そのままの異性なんて願ってもできないものだ。“どう

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          【短編/恋愛】期間限定理想彼氏

          【短編/恋愛】今、やらなきゃいけない気がした。

           休みの日、夫はソファーに座りまったりとテレビを観ていた。大して面白くもないお笑いコントを観ながらうとうとしていると、妻の部屋から何やら物音が聞こえてきた。さっきまで昼寝をしていたが起きたのだろう。  物音がしてから三十分が経過し、夫は流石にリモコンを持ちテレビを消しソファーから立ち上がる。妊婦である妻のお腹は大分大きくなった。できれば安静に過ごしてほしい。夫は妻の部屋に向かいノックをすると、中から妻が「入っていいよぉー」と返事をしてきた。夫はドアを開けて入ると、妻のしている

          【短編/恋愛】今、やらなきゃいけない気がした。

          【短編/ホラー】美味しいですか?

           高校一年生男子の田部素輝《たべすてる》は食が細かった。肉と野菜なら野菜を取るが、サラダを平らげるのも一苦労だった。  拒食症という訳ではない。食べ物を口の中に運んで噛み砕き、飲み込む。その行為が単純に面倒だった。幼い頃喉に骨が引っかかって病院に行った事もあり、魚もそれ程好きではない。 「居ないよな……誰も。」  そんな彼には、“悪い癖”があった。  ***  小学校に入ってからは、幼稚園に居た頃と比べて友人が少なくなった。嫌われたとかではなく、人も動物も普段慣れた場所か

          【短編/ホラー】美味しいですか?

          【短編/ホラー】ヂヂヂ

           六月に入り、小学校では夏らしい話で盛り上がっていた。夏といえば海、花火、そして怖い話……。四年生の虫狩多々瑠《むしかりたたる》は、オカルト関連は信じているか否かと言われれば、どちらかというと“信じられない方”である。  昨日の夜、夏の時期という事もありテレビでは心霊番組がやっていて、沢山の映像が流れては嘘臭い物ばかりだと多々瑠は思いながら観ていた。心霊番組では幽霊を信じている派と信じていない派の者達が集まり、映像を観た後に激しい論争をしていたのを覚えている。  翌日、登校す

          【短編/ホラー】ヂヂヂ

          【短編/ホラー】紫雲英

           何が何だかわからずに、男は人生で一番の激痛だと感じながら青い空をただ眺めていた。頭を動かせばさらに痛いと予想できたので目だけを動かすと、近くに自分を轢いたと思われる車が見えた。自分の周りからはざわざわと何人かの声が聞こえてくる。  突然の事故だった。会社に出勤するため駅に向かい横断歩道を渡っていた時に、信号無視した車が自分を轢いてきたのだ。地に足が付かず空中を舞う不思議な気持ちになりながら、過去の記憶や思い出等が走馬燈の様によぎる。  母子家庭だった小学生時代、父親について

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          【短編/ホラー】紫雲英

          【短編】一時的

           安井男寒(やすいおさむ)、二十歳の独身。コンビニで働きながらアパートで一人暮らしをしている。休みの日は住んでいるアパートで過ごし、一人スマートフォンで小説投稿サイトで本名を使い、オリジナルの小説を書いては投稿している。  小説を書き始めたのは中学一年くらいの時だったと彼は思っている……そこら辺の記憶はあやふやだ。その頃からオリジナル小説を主に書いており、元の作品の設定を借りてひっそりと書く二次創作は楽しいがあまり書いた事がない。  男寒はプロの小説家を目指している訳ではなく

          【短編】一時的