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#推薦図書
はたらく、たべる、生きていく #書もつ
地方公務員の多岐にわたる仕事の中に、医療従事者の免許の交付や書換えの受付業務がある。
数年前、それを担当する部署にいて、医師免許をはじめとして、看護師や薬剤師の免許交付の代行をした。免許、とはいえ表彰状のような見た目だ。
それぞれの免許には、交付した省庁の大臣や都道府県の知事の名前が記されていた。中には、知事の名前が紙面のどの文字よりも大きく、いったい誰のための免許かと思うこともあった。
一
あのとき卯月がいたならば
この物語が、あのとき私のそばにあったら、どれほど救われただろう。
ため息とともに吐き出された思いを胸に、私は先ほどまで読んでいた本の表紙を、じっと見つめた。
穏やかな水面のような瞳でこちらを見るナース。
物語を読み終えた今、この表紙のやさしい色合いが、なおさら心に沁みてくる。
長期療養型病棟で看護師として働く、卯月咲笑には、患者の思い残したものが、《視えて》しまうという不思議な力があ
【読書日記】『ナースの卯月に視えるもの』
創作大賞2023別冊文藝春秋賞受賞作、秋谷りんこさんの
『ナースの卯月に視えるもの』が5月8日(水)に発売されました。
noteに掲載されている作品はもちろん受賞発表時に読んでいるのですが、改稿された書籍版を早速読了したので感想を。
舞台は長期療養型病棟。主人公である看護師の卯月咲笑の職場です。noteの原作の第一話を読んだ瞬間に、ああこの著者の方は医療従事者か、もしくはそのご経験がある方なの
今なら間に合う、作家誕生の現場に〜秋谷りんこ「ナースの卯月に視えるもの」
あなたは、こんな現場に立ち会ったことがあるだろうか。
例えば、noteに短編小説を書き散らし(失礼)、小さなコンテスト、時折り大きなコンテストに応募して、入選と落選を繰り返していた女性、いや最近は、ひとりの人間と言わなければならないのであろう、その人間が、誰もが知る出版社から自身の作品を出版し、有名作家への階段に足をかける、そんな現場。
例えば、まあまあ面白い短編小説でしかなかった(失礼)作品が、