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10年越しの”夢の御社”にフラれて、”新しい風”にフカれる。

刹那

……きたのか、ついに。


就活生向けのオープンチャットが動き出した。
自分の胸中が、ザワザワと騒ぎだす。

「合格なら、もうマイページに次の選考ステップの案内出てますよ!」
「ほんとだ!ありがとうございます~」「落ちちゃった……」

勝手にスクロールされていくスマホ画面を横目に、パソコンを開いてメールボックスをクリック。
マイページのリンクを開いて、IDとパスワードを打ち込む。
ふぅっと息を吐いて、目を閉じて、ログインボタンを押す。

恐る恐る、目を開いた。








ない。何の案内もない。


……落ちたんだ、私。


10年越しの”夢の御社”への恋、呆気なくやぶれたり。

それも、書類選考で。


現実の残酷さを知った刹那、視界がぼやけた。


でもなぜか、心がふわりと軽くなった気もしたのであった。

未来の自分と誓った「将来の夢」


決めた。将来はここで働く。
だから、好きなこともやめる。中学受験する。

……わたし、ぜったい変わるんだ。


小学4年生の頃の私は、心に決めたことがあった。
それは、とある企業への就職であった。

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恥ずかしながら、当時クラスで書かされていた日記を読み返してみると、その決心が1ページに綴られていた。
これに対し、いつも憎まれ口ばかり叩いていた担任の先生も、この時ばかりは応援してくれたようであった(悔しくも格好のいいコメントである)。


心も体も弱くて、勉強も全然できなくて。友達も少なくて。周りに心配ばかりかけていた自分が、はじめて自分のことばに責任を持てた瞬間。
今の私に至るまでの人生を、色濃くしてくれたのはこの決意そのものであった。


公園で遊ぶ時間も削りながら、朝晩していた受験勉強。
生理的なダメージを受ける程しんどくて、退部を親に勧められた部活動。
体調と相談しながらとにかく受けまくった、大学受験。
その企業に対する企業研究。


絶対やめない。最後まで諦めずに続けた。辛いと感じる分、乗り越えることにこそ価値がある。
今の自分を否定してでもいい。とにかく、自分自身をあの会社の「求める人物像」へと変えること
これがきっと、あの会社に入ることに繋がる。
ずっとずっと、そう強く信じて疑わなかった。


……しかし、その反動で副作用もあった。

その企業の誰かを幸せにするはずのサービスをいち顧客として楽しもうと思っても、楽しめなかった。サービスに触れるたび、自分の人生のゴールと対峙する。

勉強しなくては、自分のダメな部分を変えなくては。
すべては、あの会社に入るため。


自分の負の部分から生まれたモチベーションを得るたびに、自分の嫌な部分と向き合う必要があった。そしてそのうち…

会社に”入りたい”が、”入らなくては”になってしまっていた。


いつの間にか自分の”夢”は、自分の心を縛る鎖と化していた。
あの刹那
が、そう教えてくれた。


御社を目指してきて、よかったじゃん。


「入社」や「内定」がゴールになってはいけません。
就職活動は、自分に合った会社に入ることなのです。

就活中、痛いほど耳にしてきた言葉。

これまで会社の求める人材に自分を合わせてきた努力が、無駄だったのかと思えてしまいそうで。耳に入れたくないアドバイスだった。


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でも、あの一瞬の時間が自分を納得させた。

やっと、これで解放されたんだ。
お疲れ様、わたし。本当にありがとう、御社。

悔しい気持ちは昇華され、不思議と「納得感」だけが胸の中にストンと落ちた。卒業式の時の、寂しいけれど前に進もうと思えるあの感覚を思い出した。


自分の性格に合う社風か、自分の経験を活かして働けるか。地頭がついていけるのか。
それを試す書類選考であり、全て等身大の自分で受けた。テストセンターで落ちたのか、ESなのか…何を理由にお見送りなのかは分からない。
でも、等身大の私がその会社とマッチしなかったことだけは事実である。
しかし、不思議とそんなに悲しくはない。この結果をもらえて逆に良かったのでは?とさえ思っている。

私の本当の目的は、ある会社への”入社”を夢みる先にあったと改めて気づけたからだ。


御社にフラれて、新たな風にフカれて。


誰かに迷惑をかけて申し訳なく生きる自分から、誰かに笑顔にできる自分へと生まれ変わりたい。死ぬまでにたくさんの人と出会いたい。


思えば私は、noteを書いて誰かの心を少し軽くできたり、大学でたくさんの個性豊かな仲間たちと出会えたり、「あなたの笑顔は誰かを幸せにするよ」と言ってもらえるようになった。
これは、仏頂面をしてばかりいた小4の頃の私には想像もつかない話だったと思う。


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御社に入るための努力が、自分を変えてくれた。
自分を変えたいという目的は、少しずつ形になってきているのを感じる。
もちろん、まだまだ未熟なところばかりでもある。でも、変わってきた事実は変わらない。

まだ届いてはいない『お祈りメール』が来たら、それを大人になるためのステップとして…卒業式に受け取る花束だと思って、きちんと受け入れようと思う。


繊細な人、身体や心が弱い人もハッピーになれる手伝いをすること。
『シェアしたくなる幸せ』を増やすこと。
誰かに迷惑をかけてきた分だけ、誰かを笑顔にすること。


不器用人生を、エンタメにすること。

欲張りだなあ(笑)。

こんなにたくさんある夢を、どんなふうに形にしていこうか。
ゴールが一度に遠くなった。また、その数も増えてしまった。
幸せだけど、試行錯誤しながらそれらを達成するのはかなりの長旅になりそう。

…ということで、懲りない私は、今回も失敗をエンタメにするべく新たな旅を始めることにしたのである!


お祈りメールに心を痛めてる就活生の方、上手くいかないことばかりで死にたくなっている人のもとへ。
どうか、私の不器用エンタメ人生の小っ恥ずかしい備忘録が、誰かを元気づける形で届きますように。


ゴールを遠くに設定すれば、失敗も失敗ではなくなる。
それが”1つの選択”だと思える日が来ると信じて。


それでは。











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