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大恋愛
大正生まれなのに珍しく恋愛結婚をした祖母。
高等女学校専攻科を出て、同じ職場で教師をしている祖父と出会った。職場恋愛をしたことない私に、毎日めっちゃ楽しんだろうなと妄想に悶えながら、ちょっと羨ましいと感じてしまっていた。恋愛している頃はとっても輝いていたのだろう。70年連れ添うとやはり変わるのであろうか。
爽やかに真っ青に晴れた、僧侶である祖父の葬式の日。
お寺のイベントみたいになっていたので、疲れすぎたのか、もう訳わからなくなったのか、式後、
「わたし、本当はおじいちゃんが好きじゃなかったの・・・」
げっそりし、青白い顔しながら、爆弾発言をし、娘である母と伯母たちを絶句させる一幕を繰り広げた。大恋愛と自慢し豪語していたのにもだ。当時、50代の母も60代の伯母たちは、それぞれの存在意義を、突如として考えさせられてしまった。
ある日、気持ちは寂しいだろうと家に招きお泊まりに呼んだ。
「ねぇ見て見てーーこれ、いいでしょ~?」あれから、つやが戻り、血色が良くなった顔で、遺品となった祖父から買ってもらったそのバックを満遍な笑みで見せてきた。
(なんだ、、、コイツ・・・)
呆気にとられ、もう空いた口が塞がらない、まさにこのことである。
「えっ、この前好きじゃないって言ってたじゃん・・・」
「・・・・・」
(えっえーーーー無視かよっ・・・)
悪徳政治家並みの権力を振りかざし、その言葉、その出来事自体をなかったことにした。自分がルールの祖母にとってはお得意のことだ。お手上げというか、なに負けたのかさっぱり分からないのだが、完敗と手を上げてしまった私達であった。
数日後、ボソッと「おじいちゃんのこと嫌いじゃないもん・・・」
もう、ただただ笑うしかない。
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