ライリー

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後書き

『人形使いと夜の女王 ―学園を毒電波で支配してSNSで宣伝すればロケット小説を書籍化出来る説―』はこれにて完結となります。 最後までお付き合いいただきありがとうございました はじめに伝えたいことなのですが、自作小説を宣伝するためにわざと記事を炎上させた、というコメントがありましたが私にそのような意図はありません。 あの記事を書いた時点でこの小説は影も形もありませんでした。記事に対して否定的な意見が届いたことをきっかけに小説を書き始めたのです。順序は記事→小説となります。

    • 最終話 リフトオフ

      そして迎えた打ち上げの日。 伝染病の影響で島内にある見学場は全て閉鎖されている。 だが自粛要請を無視してやってくる者は居るようで、窓からチラホラと見物客の姿を見かけた。 やがてカウントダウンが始まる。 「頼む…」 隼人に出来ることは何もない。ここまで来たら祈るしかない。 ロケットが点火し、空高くに上昇していく。 「いけ…いけ…いけ……」 電波の強度によってカグヤの位置がどんどん遠くなっていくのが隼人にも感じ取れた。 地上の観測所でもあらゆる機器をつかってロケ

      • (24)隼人とカグヤ

        検品を通過してカグヤはロケットに搭載された。 天気予報も問題なし。すべて予定通りにすすんでいる。 隼人は二葉島のある空き家に潜り込んでいた。 伝染病の件もあるのでまったく外出することなく引きこもっている。 もうこの段階ではやることはほとんどない。 隼人と離れて寄生していない状態のカグヤは活動時間が大きく制限されるらしく、打ち上げまでの日はほとんど寝ていた。 思い出したかの如く、10時間おきに念話を送ってくる程度だ。 『聞こえるか。隼人。そちらの様子はどうだ』

        • (23)別れの時

          打ち上げ13日前。とうとうカグヤがロケットに乗り込む日が来た。 ターゲットは二葉島のロケットで宇宙ステーションに物資を運ぶために打ち上げられる。 なお、東北の民間ロケットは伝染病の影響で打ち上げが延期となっている。 (今日が勝負の時だ…ロケットに乗る唯一のチャンス…) とはいっても直接ロケットまで行って乗り込むわけではない。レイトアクセスで直前に搬入する生鮮食品などの物資に紛れ込ませるというだけだ。 その生鮮食品も厳重なチェックをしてから搭載するので、実際にカグヤが

          (22)パンデミック

          「緊急事態宣言が出て一週間立ったが…収まる気配はないな……」 新型の伝染病の世界的な流行によって社会は一変した。二週間前に学園も休みになって、それ以来隼人はずっと家にこもっていた。 幸いロケット関する大きなニュースは現時点では入っていない。人が集まることを避ける為に打ち上げの見学は禁止されるのは確定だが、打ち上げそのものが中止になるという情報はなかった。 『今は家でじっとしていろ。いくら人間を操れるといっても、お前自身が感染してしまっては手の打ちようがない』 「わかっ

          (22)パンデミック

          (21)クラスター

          7月1日。ロケットの打ち上げまで残り一か月まで迫った。 隼人は工作員を増やすための活動を行っていた。だが今日の標的は学園ではない (この駅の乗降者数は30万人を超える……すごいもんだな……) とある駅の構内の喫茶店で隼人はコーヒーを飲んでいた。同時に催眠電波を流している。 今までの電波ではこのような方法で発信しても効果は薄い。服を脱がせて肌を露出した状態で数分間は電波を浴びせ続けないと操ることはできない。 だが、使い続けていくうちに能力が強化された。単純に範囲と強度

          (21)クラスター

          (20)ラノベ業界浄化計画

          ロケット施設の見学を終えたことで、計画の進行度は90%を超えたと言っていい。乗り込むための準備は整った。 まだ残っている仕事はロケット計画の支援活動。ロケットをPRする動画と小説の投稿を続けなければならない。 四日ぶりの学校ということもあって、隼人はメンバーを集めて企画会議を開くことにした。 「二葉島に行っている間にも動画と小説は確認していたけど…それぞれ報告を頼む」 「ええ。カグヤ様の動画はすでに12本投稿していて…再生数も上々。ストックもまだ20本以上あるからその

          (20)ラノベ業界浄化計画

          (19)二葉島宇宙センター

          東北の民間ロケット施設の見学から四日後。 二度目の社会科見学、二葉島宇宙センター行く日を迎えた。 「東北の次は鹿児島……行ったり来たりで季節感が狂うな」 双葉島宇宙センターの規模はこの前の施設とは桁違いに広い。博物館と言えるほどに展示物も充実している。 「8月に打ち上げ予定のロケットについて、説明したいと思います。このロケットは宇宙ステーションに物資を運搬するためのロケットです。重さは6トン。その内訳は水に実験機器に衣類など様々ですが…ある特別なものを積んでいます。そ

          (19)二葉島宇宙センター

          (18)飲み会

          他の学生が帰路についた中、隼人だけはバスを降りて残っていた。 ロケットの関係者が集まる飲み会は絶好のチャンス。この機を逃す手は無い。ここで電波を拡散して操られる人物を増やせば、今後の活動が一気にやりやすくなる。 『……狭くて落ち着かんな』 『我慢しろ。酒の席だからな。学生の俺が居合わせるのはマズいかもしれん。念には念をだ』 研也は店のバックヤードに潜んでいた。居酒屋の従業員にはすでに催眠をかけてあるので隼人を邪魔することはない。 開始時刻が近づくに連れてどんどん人が

          (18)飲み会

          (17)民間ロケット企業

          そしてやって来た社会科見学の日。一台のバスは東北にある民間ロケット会社に向かっていた。 一つの学園で二つのロケットを見学しに行く、というのは無理があるので申し込みは隼人が通う大街道学園ではなく、別の工業高校がもともと予定していた見学に紛れる形をとっている。 (他の学園の制服を着るってなんか落ち着かないな) そんなことを思いながら隼人はバスの中を見渡す。工業高校ということもあって全員男子だ。カグヤと出会ってから隼人は女の子に囲まれっぱなしだったので少し新鮮な気分だ。 「

          (17)民間ロケット企業

          (16)学生とロケット

          動画と小説を投稿し始めてから一週間。すべては順調だった。 チャンネル登録者数やブクマ数、フォロワーも順調に伸びつつある。8割は自演だが、言い換えれば残りの2割は普通のアカウントだ。 増えていく数字を見て全体の士気も高まっていたが、大切なのはここからだ。 (自演はやり過ぎてもダメだ…徐々に…怪しまれない程度に増やさないとな) ストックはまだ沢山ある上に継続して制作も行っている。このまま投稿を続ければ人気と知名度も上昇していくことだろう。 (そして…俺もやるべきことをや

          (16)学生とロケット

          (15)投稿開始

          一週間後。作品が完成した。 投稿予定日は金曜日の18時。小説に関してはすでに予約投稿が設定済だ。 「作品を投稿する瞬間ってやっぱりドキドキするね…」 モニターを前につぶやいた。C班は全員だが、B班は3名だけがこのパソコン室に来ている。残りの班員は今の時間も執筆を行っていることだろう。 「よし…投稿。同時にSNSのアカウントも作成っと」 アップロードが完了した。バーチャルアイドル「カグヤ」の記念すべきデビューだ。 「小説の方はどうだ?」 「予定通り投稿されているわ

          (15)投稿開始

          (14)バーチャルアイドル

          動画制作班から台本が完成したとの報告を受けて、隼人とカグヤはパソコン室に向かっていた。 「このフォルダに入っているから。拡張子はTXT」 まどかが立ってパソコンデスクの席を譲った。隼人が入れ替わる形で座ると同時にカグヤがにゅっと手から飛び出した。 「これのテキストを読み上げる形で…動画を作ればいいのだな……むん!」 モニターが一瞬だけ明滅する。すると…フォルダ内に入っていたテキストデータがそのまま動画ファイルに変換された。 「初めまして!バーチャルアイドルのカグヤで

          (14)バーチャルアイドル

          (13)大学の講義

          『隼人よ。一つ頼みがある。これが終わったら大学に行って欲しい』 計画の準備が着々と進む中、カグヤがそんな提案をした。 『大学?なんでまたそんなところに?』 隼人の疑問はもっともだった。大学は高校のように全ての学生が毎朝登校するというような形式ではない。 電波をばら撒くのに適した大人数が集まるタイミングがほとんどないので、大学でやるくらいなら最寄りの駅でばら撒いた方が効率的だ。 『会いたい人間がいるのだ。私がかつて観察していた大学の教授だ』 『それって…初めて発見し

          (13)大学の講義

          (12)計画始動

          計画は動き出した。 プランBを実行する小説制作班として選出されたのは文芸部と美術部と漫画研究部の面々。 全員が話し合って作品をまだ内容を1から練っている状態だ。 「船頭多くして船山に上るってことにならなければいいけど…」 「どういう意味なんだ。それ」 「…指示する人が多すぎて目的は見当違いの方向に物事が進んでしまうことよ」 「そういうことか…確かに気になるけど、こういうのは専門に任せよう」 「…そういう時は餅は餅屋って言うの」 「わ、わかった」 そしてプラン

          (12)計画始動

          (11)数と力

          しばらく時間が経った後、隼人は生徒会室に戻った。 そこには佳奈子が残っていた。衣装も制服に戻っている。 「会議の時はごめん。少し感情的になって…進行を妨害しちゃって」 苦い顔しながら佳奈子は謝罪した。 「それはいいんだ…でも理由が知りたくって」 何かしらのスイッチを押した、そんな感じの怒り方だと隼人は判断した。 「話してもいいけど…誰にも言わないと約束する?」 「ああ。約束する」 本人にとっては話したくないことなのかもしれないが、今更引き返すわけにはいかない。

          (11)数と力