見出し画像

Chapter1 甘い時間


Instagram:@rikio_no_hankou
Twitter:@rikio_19



 今週からは育成特集。いつまで経っても記憶から消えることのない、思い出の青春、ユース年代。

 色んなことがあっという間に過ぎていった、景色に気を取られていた、多感な時期と言われるこの年代はとにかく脳もフル活動、刺激求めて止まないのだ。だからこそ、この時期に身に降りかかったものの存在は大きい。

 僕もやはり、その大半をサッカーに捧げたわけだが、この両足とボールで学んだものはそれ以上であった。

 今もサッカーに懸けてこうしてスペインに来てるのだが、ここにはとても子供が多い。というか、子供をたくさん見る。それは街のいたる所に公園があるからだし、子供の頃からサッカーがあって、それを見ている親、大人も大勢いる。

 いつも子供は中心なのだ。


 フットボールの夢、はじまります。


ーー 

 あの人が言ったことが何だったのか、気がつくのはだいぶ後になってからのことである。

 自分がやってきたこと、選んだもの、選ばなかったもの、例えば昨日の朝食に食べた全粒粉入りの食パンが何になったのかが分からないのと同じように、こういった日常のレイヤーは取るに足らず、だが詳細に作用している。

 それ故、毎日本当にどうでもいいことにさえも心を動かされていた10代の時間というのは、おおよそ人にとって特別なものだ。今となって思い返してみれば、その色褪せ具合も最高に。

 僕にとってのセピアと春先のような温かい匂いは日本の東京にずっとあったわけなので、今ここ(スペインはバレンシア)で見て彼らに対して感じているものは、それとの比較として考えることができる。

 つまりは、スペインで仮に育成という観点で論じるとすると、それは僕が今まで経験してきたものとはまるで違うということである。これ自体に、どちらが優れているとか、そんな意味合いはない。

 殊、サッカーの育成については実に単純かつ明快である。スペインでは、どの年代にもカテゴリーとそれを正当にするだけの評価がある。ボールにしか目が行かない子供の頃からだって、評価の目に晒されているというわけである。そして、評価をするには、しかと観察をしなければいけない。

 親に始まる周囲の大人からの視線によって、常に子供は試され、子供もそれに対して主張をする。

 このような子供と大人の関係性は、例えば街中のいたる所に公園や子供の遊び場があることにも表れている。どこにでも、目のつくところに子供がいて、子供にも自由に自分を表現することが許される空間が用意されている。

 スペインでは特に、18を迎えた若きサッカー選手は非常に重大な選択に迫られる。それは、スペインで18歳というのは育成年代の終わりとプロへの足掛けを意味するからだ。とは言っても、良ければプロ、だめなら引退なんて二極の選択ではない。

 自分の選択はいつでも自分で全部決めこんで黙って進むしかない。だからこそ、選択にも評価にも、しっかりと個人に合ったプロセスが踏めるような機会がある。

 アマチュアリーグの立ち位置をとる4部や5部に相当するクラブは、このような若い選手に経験させる良い機会になる。この年代にとっては特に、試合に出続けることが何より大切だからだ。そして、指導者やクラブ関係者、サポーターだってその子がどんなステップを踏むべきか、まるで我が子のように見守っている。もちろん、先にも言ったように、自分の道は自分で決めるしかない。

 周囲の評価とは実に扱いにくい。それによって服を着させらてしまう人も多い。選んでいるようで選ばされている。これは全て、評価、他者の視線、メディアというものの特性でもある。そして、この特性の恐るべき作用は、無意識のレベルにあるということなのだ。パンを食べよう

 これに惑わされず、自分が正しいと思える選択を遂行することは難しいことである。そして、それを評価することも同様に簡単なことではない。だからこそ、観察が必要になる。

 環境がそうさせたのか、公園からも道すがらからも親子の会話がよく聞こえてくる。

 「えっとね」と子供は言う。

 それから、

 親も僕もベンチのおじさんも、耳を傾けている。


ーー

 スペインに限らずだが、ここでは本当に壁の落書きが目立つ。アートになるものからはしたない言葉の殴り書きまで。日本だったら全て綺麗さっぱり、次の日には消されてしまうことだろう。

 だが、若者は表現しているのだ。誰かに届かなくても、何かを伝えようと必死に自分のこの街で生きている。それに目を瞑って、何が言いたいのかも聞かずになかったことにはできないはずだ。

 それは、誰かが決めたものさしの上でしか評価されない子供たちの嘆きである。それを打ち破るには、枠をはみ出してしまうか、それともその中で一番に上り詰めるしかない。


近々、父の2作目が出ます!自信作。


 

 

Instagram:@rikio_no_hankou
Twitter:@rikio_19





 

#サッカー #FOOTBALL #フットボール #育成 #ユース #とは #記事 #コラム #日記 #メディア #エッセイ #月曜日  

 


 

この記事が参加している募集

スペイン1部でプロサッカー選手になることを目指してます。 応援してくださいって言うのはダサいので、文章気に入ってくれたらスキか拡散お願いします! それ以外にも、仕事の話でも遊びの話でもお待ちしてます!