Chapter2 嘘つきはサッカー選手のはじまり
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先週に続き、嘘特集。
多かれ少なかれ周囲からの評価とか印象みたいなものって、自分にはあまりにも関係のないタグがいっぱいついてるな、これってやっぱり嘘だよなと思ったことから、じゃあ本当の部分ってなんだろう、どうしたらそこで勝負できるんだろうと考えるようになった。
そのためにはやっぱり、僕は何屋さんですよー!と声高らかに主張しなければいけないし、削ぎ落として削ぎ落として自分の芯を作らなければいけない。
もちろん内に秘める熱いものはそれでいい。そして、それはそのまま内に秘めておいてもいい。いかにしてそれを表現するのか、そこには戦略があって、その戦略にこそ嘘が必要なのだ。
華麗なる嘘、嘘は人々を魅了し、嘘つきはサッカー選手のはじまり。
フットボールの夢、はじまります。
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ハッシュ、ハッシュ、よく目を凝らして辺りを見渡し、耳を澄ませる。肌に触れる感触はどうだろうか。嘘と本当を見抜くことはできると、あるいは自分自身の姿勢、態度に嘘偽りはないと。胸に手を当てて、自分のうちにどれだけの本物が残るか聞いてみるとしよう。
インスタグラムのタイムラインを写真たちが浮かんでは消える。見慣れないスーツ姿、卒業を祝う写真。海外の嘘みたいにきれいな海。毎日の中に見つけた親しみの顔、行きつけの定食屋。いいね。
または、自分が投稿する番になって、思い出の写真、やけに映える写真を選んでいる。修正を加え、キャプションをつけ、それからハッシュ、タグ。
タグ付けの機能はSNS、インターネット社会において非常に便利なものとなった。一種のコミュニケーションツールにもなる。タグを追っかければ自分に似た人間に出会えるかもしれない。自分だけのオリジナルで遊んで楽しむこともできる。
いっぱいタグをつければ、いいねの数を稼げるだろうか。その他多くの人々と同じタグをつければ、自分もその一員になった気分?はたまた本当にその写真はムードで、インスタグッドなのかよ!
しかし、意識せざるともタグは自分の身にたくさん貼り付けられているはずである。ご出身はどちらですか、どこの大学のご卒業ですか、日本銀行発行の券はおいくつお持ちですか。多いですか、少ないですか。へえ、そうですか。
先に言っておこう。多かれ、少なかれ、タグは嘘である。
僕がこう言うのは、人生の多くはこれらによって大きく左右されることもあるし、評価の対象にもなり得るということを理解した上で、そんなことは全て嘘であることに気づくべきだと思うからだ。
つまり、これらは「何もない自分を隠すための嘘」なのである。美しくも面白くもない写真に、説明がましく長々と装飾をこしらえ、おまけに本物とは何も関係のないものまで取ってつけて勝手に価値を上乗せして完全武装。どこに自分がいるのかも埋もれて分からなくなる。
しかし、この嘘が通用するのはあくまでピッチの外である。ピッチの上には同じ立場のプレーヤーたちがいて、そいつらを相手に戦わなければいけない。もちろん、プレーヤーなら何が本物かを知っている。全員とは限らないが。
代表に選ばれた選手、メディアで話題の選手を集めて監督が嬉しそう。しかし、プレーヤーにはそいつに何ができて、何ができないか、本当の実力が分かってしまう。
これはサッカーに例えた話であるから非常に分かりやすいことだろうが、本当と嘘を見抜くには実際のところはそう簡単にはいかない。現実世界において、ピッチの線引きは105m×68mに区切られてはいないからだ。
だからこそ、何をもって本物とするかは個人の尺度と言ってもいい。そして、それさえ正確に獲得することができれば世間の尺度(多くは見かけばかりの嘘)に惑わされることはない。
ピッチの線引きが明確でないということは自由であるとも言える。あなたの人生では、ゴールを決めて試合に勝つことではなく、どれだけ多彩で正確なパスを何本出せたかといったことにこだわりを持つことを「本物」としてもいいのである。
しかし、あなたも既に感じているように、これには2つの大きな障害がある。1つには、人は誰もが誰かに嫉妬してしまうということだ。これによって、あなたも僕もしばしば惑わされ、自分の尺度というものを見失いがちである。
そして、もう1つは1人で生きているわけではないということである。当たり前のことだが、自分の尺度を100%突き通すことはできない。なぜなら、それぞれの尺度があり、それぞれに思惑があるから。だから苦労している。
実は、今すぐにその苦労のほとんどは消し去ることができる。もう既に答えは出ている。それは、ピッチを明確に描くことである。自分がどこで戦おうとするのかを、自分の尺度で決めること。もう焦る必要はない。守るべきゴールと攻めるべき方向が見えたのだから。
しかし、それだけではまだあなたはピッチに立っただけである。そう簡単に、センターフォワードに縦パスを入れることはできない。ゴールへの道は数多のディフェンダーにより塞がれている。
そこで、あなたは嘘をつくことになる。
今度は、「本当の自分を突き通すための嘘」である。
いかにして相手を動かすか。味方にも動いてもらう必要がある。スペースを作り出し、一歩前進するためには戦略を持たなければいけない。
イカサマをやれという話ではない。思い通りに物事を運びたいからと言って、不誠実を働き、どんな手を使ってでもというのはサッカーじゃないだろ?ファウルもあるし、レッドカードだって控えている。
しかし、あなたが華麗に相手を騙し、アイデアとテクニックを持ってして多彩な攻撃を仕掛ければ、そのプレーに魅了されるファンがつくことだろう。
ファンは、あなたが期待を裏切ってくれるだろうことを期待している。
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真実は正しいし、正しいことは分かりやすいが、面白味はない。
何が本当かよりも、嘘の部分にこそその人の魅力って溢れている気がする。
僕たちは、ピルロが予想もできないパスで相手ディフェンダーの最終ラインを突破すると、やられた!と言って拍手を送るわけだ。
来週は、作られた世界、フィクションについて。最近個人的にハマっている若大将シリーズからサッカーを考えてみたので、是非。
先週の記事。
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