感じきること ③
~氷の女王~
前回の続きです(第1話はこちら)。
感情にフタをして気づかないふりをしていたアラブの前世を見終えて、すぐに顔を出した別の前世。場所はヨーロッパのよう。
こちらは感情のままに、なりふり構わず振る舞う強い女性。しかも国を治める女王という立場でした。
この女王には自分と正反対の性格をした、心の優しい女性らしい印象の妹がいて(現世の友だちかも?とMさんは言っていたけど、よくわからなかったそう)、自分の一番の理解者であり、サポーターだと言います。両親は自分が20歳くらいの頃に亡くなってしまい、それ以降、自分が世継ぎとして国を治めているそうです。
その国は女性が多く、修道女もたくさんいて、軍隊やパワーといった戦いのイメージはありませんでした。でも、だからこそ他国から攻め入られることを恐れていたのかもしれません。前世のMさんは、自分ひとりの肩にそういったすべての責任を背負い込み、躍起になっていたのでしょう。「守らなければ!」と何度も口にします。
そして、守ることよりも先んじることに重きを置いたのでしょう、「次はどの国を獲ってやろうか」と塔の上から考えているところでした。
まさに、攻撃は最大の防御です。
次第に、自分と反する考えをもつ側近や使用人を遠ざけたり、強引に政治を推し進めるようになりました。
「次の重要な場面へ行ってみましょう」と誘導すると、一番大切な妹が自殺してしまう場面でした。
女王である姉をかばい続けてきたものの、周囲との確執は避けられず、また、姉が他人を傷つけたり、傲慢なふるまいをするところに耐えきれなくなったと言います。
「それだけはやめて!」
とMさんは叫びとも命令ともとれる声を上げますが、妹は高い塔から飛び降りてしまいます。
あんなに信頼していたのに…
そこまで傷ついていたなんて…
つらい思いをさせていたなんて…
自分のすべてがだめなんだ…
さまざまな想いがよぎったのもつかの間、前世のMさんの心は感情を閉ざしてしまいます。
「一瞬、びっくりしたし悲しみを感じたけど、ピタッと感情が止まってしまった感じ。真っ白になってしまった」
と言います。
「悲しすぎたの?認めたくなかった?」
と私が問いかけると、
「そう。自分が悪かったと認めたくなかった。すごく冷血漢。冷酷。亡くなっている妹を見て一瞬固まったけど、すぐに『自分の前からいなくなる人はもういい』って、さっと怖い女王に切り替わった。
もう信じる人なんか誰もいない!って。
唯一、心の内を出せた妹がいなくなって、ますます強さや周囲への威圧に拍車がかかっていった。だから、葬儀もしなかった」
自分の見ている場面がショッキングなのか、Mさんの身体にギュッと力が入ったような気がしました。
その後、心を閉ざしながらも国を治めることを淡々とやり通す前世のMさん。お祝い行事や戦勝記念の演説の場面が見えます。村の人たちが喜んでくれても、どこか遠い心持ちでそれを眺め、「喜べるなんてうらやましい」とすら感じていると言います。
気持ちは淡々と穏やかではいるものの、楽しくも苦しくもない。
だって、分かち合う人がいないから…
そんなふうに女王としての責任をまっとうし、いよいよ引退生活に入るのですが、ここでも一波乱起きることに。
つづく…
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