FAR1-3 15.Dilutive Securities and Earnings per Share

〇転換社債(convertible bonds)
→一定の条件下で普通株式に転換することができる社債のこと。

発行会社側のメリットとしては債務返済の義務を免れることがあるが、一方で投資家にとっては株価が値上がりすればキャピタルゲインを得ることができるメリットがある。

会計処理としては簿価法時価法の2種類がある。

〇簿価法(Book value method)
→転換時の仕訳は以下のとおりである。
Dr)Bonds payable   XXX
     Premium on bonds payable   XXX
        Cr)Common stock   XXX
             Additional paid-in capital   XXX

簿価法では転換時に損益(loss/gain)が発生しない。
(負債を資本に振り替えるだけ)

〇時価法(Market value method)
→転換時に株価の時価で評価する。
転換時の仕訳は以下のとおりである。
Dr)Bonds payable   XXX
    Premium on bonds payable   XXX
    Loss on redemption   XXX
      Cr)Common stock   XXX
          Additional paid-in capital   XXX

転換時に損益を認識する。

〇転換権付優先株式の転換時の会計処理
→転換権付優先株式(convertible preferred stock)の転換は通常簿価法で会計処理が行われる。
仕訳は以下の通りになる。
Dr)Preferred stock   XXX
     Additional paid-in capital-PS   XXX
       Cr)Common stock   XXX
            Additional paid-in capital-CS   XXX

転換時に損益は発生しない。

〇新株予約権(Warrants)
→一定の価格で株式を購入する権利のこと。

通常、社債(bonds)や優先株式(preferred stock)と共に発行される。

新株予約権付社債と新株予約権付優先株式が発行された時の会計処理には2つの方法がある。

①比例配分法(Proportional method)
→本体部分(社債や優先株式)と新株予約権のそれぞれの時価が分かっている場合は、発行の際の入金金額をその比率で按分する。

②増分法(incremental method)
→本体部分(社債や優先株式)と新株予約権のどちらか一方しかわからない場合は、分かっている方の証券をそのまま時価で計上し、入金金額との差額を他方に割り当てればよい。

〇新株予約権の行使時
→行使時には簿価法で会計処理が行われる。
以下の通りの仕訳となる。
Dr)Cash   XXX
     Additional paid-in capital-stock warrants   XXX
        Cr)Common stock   XXX
             Additional paid-in capital-common stock   XXX

損益は発生しない。

〇ストックオプション(Stock option)
→従業員が一定期間内において一定の価格で勤務先の株式を購入することができる権利のこと。

株価が権利行使価格を上回っているときに売却することで利益を得ることができる。
(自分の会社の利益を上げることが株価の向上につながるため、頑張って働くようにもなる)

ストックオプションを付与されることが決定した日を権利付与日(grant date)、測定日(measurement date)と呼ぶ。

会計処理としては、権利付与日における公正価値に基づいて測定され必要なサービス期間にわたり均等に費用認識される。

ストックオプションの取引が行われた時は以下の開示が要求される。
→①当期中に存在した株式報酬の性質(nature)、条件(terms)及びこれらの株式報酬が株主に与える潜在的影響
②株式報酬から生ずる報酬費用(compensation cost)が損益計算書に与える影響額
③期中に受け取った商品、サービスの公正価値、あるいは付与した持分証券(equity instruments)の公正価値の見積もり方法
④株式報酬から生じるキャッシュフロー(cash flow)への影響額

〇株式増価受益権(stock appreciation rights, SAR)
→ストックオプションに比べて支出の負担が少ないバージョン。

会計処理としてはストックオプションと同様であるが、決算日ごとに公正価値の再測定が行われる点が異なる

〇従業員持株制度(employee stock ownership plan, ESOP)
→従業員が現金を支出し合って雇用主である企業が発行した株式や社債の有価証券を購入する制度のこと。

〇一株当たり利益(Basic earnings per share)
→普通株式一株当たりにして当期いくらの利益を獲得したのかを表したもの。

以下の計算式によって算出される。

Basic EPS=
Net income - Applicable preferred dividends/ Weighted average number of common stock outstanding

分母の計算において2つの注意点がある
①自己株式(treasury stock)は流通株式(outstanding stock)ではないため、分母の株式数には含めない。
②株式配当(stock dividends)、株式分割(stock split)はたとえ期中に実施されたとしても期首に行われたものとして計算する。

〇希薄化(Diluted EPS)
→一株当たり利益を希薄化させる可能性がある有価証券が発行されている場合を複雑な資本構成といい、発行されていない場合を単純な資本構成という。
複雑な資本構成の場合は希薄化後一株当たり利益の計算も求められる

一株当たり利益を希薄化させる可能性がある有価証券
①新株予約権付きストックオプション
②転換社債及び転換権付優先株式

希薄化後一株あたり利益、①新株予約権付きストックオプション
自己株式法(treasury method)によって会計処理を行う。

希薄化後一株あたり利益、②転換社債及び転換権付優先株式
転換仮定法(if- converted method)によって会計処理を行う。

〇一株当たり利益の表示
①単純な資本構成
→分子の利益を継続事業による利益及び、純利益とした基本的一株当たり利益を、損益計算書と同一面に表示することが義務づけられている。

②複雑な資本構成
→基本的一株当たり利益に加えて希薄化後一株当たり利益も開示しなければならない。
ただし、希薄化後一株当たり利益を計算した結果、「希薄化後一株当たり利益>基本的一株当たり利益」となる場合は開示の必要はない





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