見出し画像

解説 無知と野心こそ悪の根源なり(第二説教集21章5部) #199

原題:An Homily against Disobedience and wilful Rebellion. (不服従と反乱を戒める説教)

第5部の解説をします。聖句でいうテーマはこれでしょう。

すべて人間の立てた制度に、主のゆえに服従しなさい。それが、統治者としての王であろうと、あるいは、悪を行う者を罰し、善を行う者を褒めるために、王が派遣した総督であろうと、服従しなさい。(ペトロの手紙一 第2章13~14節)

第5部のポイントは次の4点です。
①第4部の振り返り
②反乱の元となる悪徳~野心と無知
③教皇によるキリスト教界の混乱
④結びの短い祈りと一同に唱える祈り

まず冒頭で第4部が振り返られます。

君主へのあるべき服従についての教義と実例をお話したうえで、わたしは前のところで反乱が神と人間に対する極めて忌むべき罪であり、どれほど恐ろしい災厄や罰や死が永遠の死とともにあらゆる反逆者の頭上に降りかかるかをお話しました。

第5部の本題に入ります。反乱の元となる2つの悪徳、野心と無知です。

反乱には多くの原因が考えられますが、ここでは世でよくみられている主な例にのみ触れます。それは野心と無知です。野心という言葉によって言いたいのは、神が定められたところより高いところにありたいとする人間の不法にしておこがましい欲望です。無知という言葉によって言いたいのは、技芸や学問の足りなさではなく、神のみ言葉にある神の祝福についての知識のなさです。

野心と無知によって人間は反乱に走る。そしてこの2つの悪徳にかかわって言えば、人間には2種類いるということが述べられます。

これら二つが反乱の主な原因であり、人間には二種類いるということになります。それはこのような悪徳を持つ者と、悪徳の始まりである悪魔によって不服従や反乱を起こすように唆される者です。

このうち後者にかかわり、悪魔に唆されずに善を行い、この世の権力に服従する人々の例として、聖書から使徒の生き方が紹介されます。

聖書にはっきりと書かれていることがあります。救い主キリストご自身と使徒である聖パウロと聖ペトロが、他の人々とともにこの世を治める行政官など高い権力を持った人々に対して服従していて(マタ17・25、マコ12・17、ルカ20・25)、これと同じような服従を君主などの統治者に対して持つように他のすべてのキリスト教徒に説いたということです(マタ27・11、ルカ23・3、ロマ13・1~2、一テモ2・1~2、一ペト2・13~14)。したがって、彼らを継ぐ教会の牧師など聖職者は誰よりもまず君主に服従を向けるべきであり、その服従を持つようにと人々を説くべきです。

ところでローマカトリックは、教皇を使徒ペトロの後継者と位置づけ、それを継承しているものされているのですが、この説教では、その教皇がこのペトロをはじめとする使徒たちの生き方に沿ってもいなければキリストの教えにも従っていないことを批判しています。この説教集の他の章でもたびたび見られますが、反カトリックの色彩を強く帯びています。

キリストの教会に野心をもった衝突や争いがなければ、キリスト教国には騒動や反乱はないということになります。しかし支配への野心や欲望がいったん教会の聖職者の中に入るとどうなるでしょう。(略)ローマの教皇は救い主キリストの教義や喩えをまったく無視しています。自身が聖なる使徒であるペトロの後継者でありその代理であるという、自身の法典に書かれていることを持ち出しました。世界中にある教会すべての長となるのみならずこの世のあらゆる王国の長となるという、鼻持ちならない野心によってみ言葉に反しました。野心が入り込んで、つまり反乱によって、ローマ教皇は救い主キリストの王国である教会とあらゆるキリスト教国との破壊者となり、その上に君臨する暴君となりました。

教皇は聖職者としての立場をわきまえず、この世の権力者たろうとして、神に定められた君主たちを配下に置こうとした。それによってさまざまな争いが起こり、キリスト教界の崩壊につながっていると強く述べられます。

教皇は西方の皇帝に対して為された忠誠の誓いから勝手にその臣下を離れさせ、不法にも臣下を君主への反乱へとかき立てました。いわば教皇によって、息子から父に対しての反乱が起こされたのです。あらゆる国のキリスト教徒の君主たちの間で極めて残酷で血塗られた戦争が起こり、無数のキリスト教徒がキリスト教徒の手で無残にも殺害されました。これに加えて、あまりにたくさんの信仰深い都市や地域や国家や王国が、アジアでもアフリカでもヨーロッパでも無残にも失われました。キリスト教界で最も華やかであるとも言えるギリシアの帝国や教会がトルコ人の手に落ちて悲惨にも崩され、キリスト教界が嘆かわしくも犯され滅ぼされました。

反乱と不服従は悪であるのに、ペトロの後継者を自任する教皇がそれを唆す悪魔となっている。この状況を厳しく糾弾し、短い祈りのあと、第4部までと同じく一堂に唱える祈りをもって、第5部は終わります。



今回は第二説教集第21章第5部「無知と野心こそ悪の根源なり」の解説でした。次回はこの試訳をお届けします。


Twitterもご訪問ください。
主の平和/高校英語教師のひとこと説教集(@sermons218tm) / Twitter
聖書日課/高校英語教師の朝夕の祈り(@bible218tm) / Twitter
翻訳出版を目指す高校英語教師(@tmtm218tm) / Twitter

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?