夜明けの向こう
息が詰まる夜、
静かな部屋の隅で
誰も知らない闇と話している。
「何も変わらない」と囁く声に、
耳を傾けながら、
変わらないものなんて
どこにもないと知っている自分がいる。
過去から連れてきた影が
足元を掴むたび、
手を伸ばしてみるけど、
それは掴めない煙みたいに消えていく。
不確かなものにすら縋りたい心が、
胸の奥で軋む音を立てる。
外を見れば、
まだ白む前の空が揺れている。
遠くで灯る小さな光が、
あの時の自分に似ている気がした。
ぼんやりと、でも確かに、
そこにある温度を感じる。
不安はいつだって
波のように寄せては返すけれど、
その中に混じるわずかな泡、
それだけでも掬い上げてみたいと思う。
この手が空を掴むことはなくても、
掬い上げたものが
乾いた心に染み込むことを、
どこかで信じている。
夜明けは遠くて近い。
目を閉じれば、
まだ見ぬ朝が頬を撫でるように
そっとささやく。