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【簡単あらすじ】魔眼の匣の殺人(微ネタバレ)【今村昌弘/創元推理文庫】

前作・屍人荘で、想像出来ない事件に巻き込まれた羽村譲と剣崎比留子は、事件の原因である組織・班目機関の手掛かりを得て、人里離れたある施設に赴く。

そこには、人々がサキミと呼ぶ予言者が今も住んでいる。
サキミは言った『この二日間に、男女が二人ずつ●ぬ』と。



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『はじめに』
昼は動くとまだ汗ばむような気温ですが、朝晩はようやく涼しくなることが多くなり、深い睡眠時間を確保出来るようになり、読書をする体力・気力も回復してきました。
例年とは様子が違いますが、暦の上では「読書の秋」と呼ばれる季節になりましたので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいたりした本の感想を書こうと思います。
このレビューを読んだことで、作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。

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前作、屍人荘の殺人で想像も出来ない事件に巻き込まれながら生き残った、ミステリ愛好会会長の羽村譲と、新しくミステリ愛好会の会員となった剣崎比留子は、事件の原因となった組織・班目機関の手掛かりを得て、人里離れた施設に赴く。

そこには、人々がサキミと呼ぶ「預言者」が今も住んでいる。

サキミは言った「十一月最後の二日間に、真雁で男女が二人ずつ、四人死ぬ」と。

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前作、屍人荘の殺人で強烈なインパクトを残した作者さんです。

今作も前作と同じく、いわゆるクローズドサークルが舞台になっています。

さらに、作品の中心・核となる前提が「未来予知が出来る」というものです。

本来であれば、かなりぶっとんだ前提ではあるのですが、前作の展開がまさに「想像だに出来ない」状況でしたので、今作の前提もすんなり受け入れることが出来ました。

※ですので、前作「屍人荘の殺人」を読了してから手を付けることをおすすめします。

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本作は、前提から既に面白いのですが、さらに、

絵を描くことで未来予知が出来る女子高生・十色とその後輩・茎沢
班目機関のヒントとなる記事を書いたジャーナリスト・臼井
見た目は物腰が柔らかいが、背中に大きなタトゥーを入れている会社員・王寺
都会で勤務していた会社を辞めてまでサキミに仕えている・神服

など、一人一人に何かしらの(後ろ暗い)背景を感じる登場人物たちが、作品を複雑に、そして面白くしています。

読者(場面によっては、登場人物も含めて)の想像と予想を上手く利用したトリックや、物語の伏線と回収は大変強烈なインパクトを与えてくれます。

ですので、探偵役の剣崎がそれらを一つずつ丁寧に解説する場面では、ページをめくり振り返ることは間違い無いと思います。

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前作「屍人荘の殺人」もそうでしたが、作品の設定・核となる部分が奇をてらっただけでなく、その設定でなくては成り立たない流れを作るのがとても上手な作者さんです。

今作も、「未来予知が出来る」という設定だからこそ考えられ・成り立つトリックや、登場人物の言動・行動がとても納得出来る流れです。

剣崎と羽村は、舞台の全体から推理を働かせる探偵役と、探偵の脳に刺激を与えるきっかけとなる一言をつぶやくなど、探偵が自由に動けないときの情報収集役(助手役)に役割が分かれています。

探偵役と助手役をホームズとワトソンとする小説は多いですが、前作と今作の作中で、剣崎も羽村も「私はあなたのホームズ(ワトソン)にはなれない」と、本人の前ではっきり明言しています。

どのような設定の作品になるのか、この二人の関係がどのように進みどのように落ち着くのかも含め、三作目「狂人邸の殺人」を読むのが今から楽しみです。

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