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【簡単あらすじ】わたしはあなたの涙になりたい(微ネタバレ)【四季大雅/ガガガ文庫】

手や足から少しずつ塩に置き換わってしまう難病・塩化病で母を亡くした三枝八雲
その喪失感を埋めるべく、小学校の校庭で桜の花びらを集めていると、音楽室でピアノを弾いていた五十嵐揺月に出会う。
何かが足りなく・何かを失うまいとする八雲と揺月の物語。



『はじめに』
今年は暖冬と言われていますが、突然雪が降ったりポカポカ陽気になったりと、体調を崩しやすい日が続いております。しかし、部屋で読書に勤しむことはそういった外の気候が全く関係ありませんので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいたりした本の感想を書こうと思います。
このレビューを読んだことで、作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。

おじさんには手の出しにくい表紙シリーズに属する作品ですが、私の地元、福島県郡山市出身の作家さんだと、郡山駅ビルの書店・くまざわ書店さんにふらっと立ち寄った際に知り、購入&読了しました。

表紙にある「このラノベがすごい!2023第1位」という帯にあるのは決して大げさでは無く、

1.魅力的な、男性主人公「三枝八雲」、女性主人公「五十嵐揺月」の二人
2.塩化病という難病の設定と題名
3.無理なく・説教臭くなく、東日本大震災を上手く入れ込んだ描写
4.家族と上手く折り合いをつけた終わり方


など、冷静に振り返ってみても、内容だけでなく構成もとても良かった作品です。

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物語を「罹ってしまうと、身体が塩化してしまい亡くなってしまう。亡くなった後は完全に塩になってしまう」という塩化病を中心テーマに置き・進めていることで、全体をブレないものにしています。

そして、塩化病を中心とした、各登場人物の心の動き・人々の交流が上手に描かれています。

特に、第七章からは目が離せない(本から離れることが出来ない)展開になっています。

決して治ることの無い病との(本人と周りの人々の)闘い。
おじさんでもちょっと感動する内容でした。

ーーー

私個人の感想としては、第四章に書いてある「ある有名人」に対する、揺月のコメントにとても共感出来ました。

これを読んだ時、『ああ、あの女性コメンテーターね』と苦笑も出てしましたが…

あの時期、あの女性コメンテーターにイラッとした福島県民は多かったです。

最近はあの方を公の場で見ないので、精神衛生上とても良いです。

その他、上記1.~4.まで記載しているように、多くの部分で満足出来る内容でした。

特に私のように、「タイトルを巻末で回収する」作品が好きな方はなお満足出来ると思いますし、そうでない方も、きっと「ああ良い一冊に出会えたな!」という読了感を味わうことが出来る作品なのでおススメです。

ただ、一点だけとても気になったことがありましたので、ネタバレ満載で記述したいと思います。





以下は大きなネタバレを含みますので、それでも良い方はお読みください。





~気になった点~



恐らく、福島県の有名高校ということで聖光学院を登場させる、そしてそのために八雲を野球少年にしたと思うのですが、八雲は「ある物が無いこと=欠損」に対しての考えや独自の受け取り方をしてしまう性質を持つ少年であり、それが、物語全体のテーマの一つにもなっています。

そういった性質を持っている少年が、何も問題もなく、中学校で野球部に所属し活動出来るだろうか?という疑問点を強く感じてしまいました。

そうなると、それに付随して、八雲の親友である清水が巻き込まれる事故や野球を目指した理由も、正直なところ無理やりくっつけたという印象を受け取ってしまい、結果的に、八雲の学生時代の部活描写については違和感を強く感じてしまいました。

郡山市は「楽都」と呼ばれるほど、全国的に合奏・合唱・ダンスなどが有名ですし、会津地方にはコンピューター教育・研究で有名な「会津大学」もあります。

八雲がそういった文科系の部活に所属していれば、塩化病を発症してからの揺月と八雲の関係や、アガートラムとの関係もさらに深く展開することが出来たのではないかと思いました。

しかし、逆に言うと、それ以外の物語の世界観はとても良くまとまっており、物語に没入できると思いますので、皆さんにも是非とも読んで頂きたいです。

きっと、ああ良い一冊に出会えたな!という読了感を感じさせてくれると思います。



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