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【簡単あらすじ|微ネタバレ】紅蓮館の殺人【阿津川辰海/講談社タイガ】

山中に隠棲した文豪に会うため、高校の合宿を抜け出した高校生二人。

文豪に会うという目的は達成したものの、落雷が原因の山火事にまきこまれてしてしまう。

二人は文豪の住む館に避難し救助を待つが、そこで殺人事件が起こり… 

山火事のタイムリミットは35時間、生存と真実、選ぶべきはどちらか?

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『はじめに』
季節が変わり、読書の秋ではないですが、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいた本の感想を書こうと思います。
今回のレビューを読んで頂くことで、その作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたいのですが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』がありますので、その点にご注意ください。



本作品を読了した後に、「無駄な描写がとても少ない、スッキリとまとまった作品」という感想を持ちました。

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もちろん、無駄な描写がとても少ない作品が、全て良い作品とは言い切れない(私はむしろ寄り道するような作品も好んで読みます)ですが、一度読了した後に読み返してみると、登場人物の人数・役割・言動などが上手くまとまっており、本作品の結末にたどり着くためには最小限度の構成になっていると言えます。

これは、私のような(現実世界でも)「人の名前を覚えるのが苦手」という性質の人間にはとてもメリットがあります

また、作中は(謎を解くためのヒントを含め)丁寧な描写が多いため、私ぐらいのミステリー初心者でも、謎のいくつかについては見抜くことが出来るところも世界観に没頭しやすく、好印象の作品です。

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この作品は、二つの作品を合わせたような作りになっています。

前半は、不運にも発生してしまった山火事に追われながら・館内で発生する人為的な様々な困難を克服しながら、殺人事件を解いていくという、ミステリーの王道と言える流れです。

後半は、殺人事件を解いていくにしたがい、登場人物各人について様々なことが暴かれていきます。

しかし、その途中で

「探偵としてあり続けるためには、そして、探偵として謎を解き続けるためには、何が必要なのか」
「なぜ探偵には、ワトソン役が必要なのか」

など、真実を突き止めるためには(本来のミステリー作品であれば)必要無いような、本格ミステリーの原点を読者に考えさせるような流れになります。

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前半・後半どちらとも内容がぎっしり詰まっていたため、大変読みごたえがあります。

読み進めるにつれて頭は疲れましたが、だからといって本から離れることが出来ず、出張中のホテルで一晩で一気に読んでしまいました。

ただし、終わりに近づくにつれて、ある登場人物同士の正義と正義がぶつかり合う(=結論は出ない)ことが多くなり、その結果、当然「どちらかが完全に悪い」という終わり方にはならなかったため、スッキリとした読了感というわけにはいきませんでしたが、そういった終わり方の為、逆に、次回作がとても楽しみになりました。

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今回の登場人物の中には、

① 考え方が、主人公たちと決して相いれない。ただ、その人の過去を考えると否定することは難しく、主人公たちが、その方の正義を受け入れることが出来ないことで、むしろ引け目を感じてしまう。

② 女性でありながら、見た目は170㎝ほどのスレンダーな体形で、男性のような言動と考え方を持っている怪盗。

という二名がいます。

①の人物については、某ジッチャンの名にかけての「地獄の傀〇師」をぼんやりとイメージしましたし、
②の人物については、怪盗という職業?を明かしているところから、もしかしたら変装の名人ではないかと思っています。

この両名は、主人公たちとの関わりの強さや、キャラクターのインパクトから、(もしシリーズ化した場合には)レギュラー化するのではないかとも思っています。

この両名がまた後の作品で登場するのか、また、
今回の探偵とワトソン役の高校生は、今回の事件をふまえてどのような変化があるのか・どのように成長するのか、
ということも気になりますので、とても次回作を楽しみにさせてくれる終わり方でした。


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