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デザイン起点で始まるプロダクト開発〜CEOとデザイナーが大事にするシンプルなUI/UXとは

製造業のサプライチェーンリスク管理SaaSを提供するResilire(レジリア)。 昨今、コロナやウクライナ侵攻、自然災害等のリスクが増加し、モノの安定供給が危ぶまれ、大きな社会課題になってきています。 この大きな社会課題に向き合うResilireのプロダクトはどう作られているのか。
創業期のデザインをつくったCEOとリリース直後に参画した一人目デザイナーにResilireのプロダクト開発について聞いてきました。

津田裕大 / CEO(写真左)
1996年、兵庫県西宮市生まれ。Webコンサルティング会社でのUI/UXデザインを経験後、 営業代行会社での営業チームのマネジメント業務、法人向けWebコンサルティング企業の起業・経営等を経験。 2018年9月、Tech Design(現Resilire)を創業し、現在に至る。

松川逸 /デザイナー(写真右)
多摩美術大学卒業後、サイバーエージェントで755をはじめとするアプリのデザインに携わる。 その後、国際物流のスタートアップShippioで一人目デザイナーとして、SaaSのプロダクトのUI/UXデザインを担当。 現在フリーランスとしてUI/UXデザイナー兼PdMを担当し、複数のスタートアップに携わり、 2021年11月よりResilireに参画。

きっかけは一通のダイレクトメッセージ

—— 松川さんがResilireに関わることになったきっかけはなんだったのですか?
松川
 2021年9月に津田くんからtwitterのダイレクトメッセージで声をかけてもらったことがきっかけでした。もう2年近く経っていると思うと感慨深いです。 メッセージをもらった際すぐには返せなかったのですが、津田さんからのメッセージがとても丁寧な内容だったので、落ち着いたら返信しようと思っていました。

ちょうどその翌日、たまたま知り合いのVCから「とても良い起業家がデザイナーを探しているから一度会ってみないか」と打診され、お会いしたのが津田くんです。 メッセージをもらった翌日ということもあり、運命的なものを感じましたね。

—— すごい偶然ですね。最初に津田と会った時の印象はどうでしたか?
松川 デザイナーであれば誰でも良いということではなく、私自身を見てくれていて、その上で必要としてくれていると感じました。

起業家としても目先の欲望に捉われない点に好感が持てました。 津田くんは、目先の売上ではなく、常に顧客・プロダクトに向き合っています。 私自身仕事をする上で、人として信頼できるかを重視しているのですが、お話しする中で信頼できる人だと感じることができました。

津田 初めて松川さんとお会いした時、お互いに大事にしているポリシーや価値観がかなり近く、すぐに意気投合したのを覚えています。嫌だと感じる部分までほとんど一緒でしたね。笑

印象的だったのが、圧倒的に理解が早かったこと。 複雑な事業課題への理解の早さもですが、プロダクト開発について現状しか話していない中、「私はこういうことをしたら良いよね」と的確な提案をいただいたことが強く印象に残っています。 僕はデザイン経験があるのでデザインへのこだわりが強いのですが、デザインを任せるならこの人しかいないと思い、お願いすることにしました。

—— 当時は、社員も0名で、プロダクトも未熟かつ顧客も殆どいなかったと思いますが、Resilireに対してどういった印象を持ちましたか?
松川 「サプライヤーデータをツリーで可視化して、リスクデータを掛け合わせる事で調達リスクを予防する」というプロダクトコンセプトがとても良いな、という印象を持ちました。津田くんは、業界経験はありませんが、顧客のニーズをしっかり捉えて、プロダクトリリース直後に大手企業への導入も決めていました。

スタートアップのデザインの仕事をしていると、そもそもずれてしまったコンセプトをデザインでなんとかしようとするけれど、どうにもならない事例をよく見かけます。Resilireの場合はコンセプトが良いので、デザインを改善すれば、もっと良くできると感じました。

—— 組織についてはどうでしたか?
松川 組織については、本当に人がいなかったです。笑 社員も0名、オフショアに開発を依頼していたこともあり、中長期でプロダクトを考える人が社内にほとんどいない状況でした。二人でオフィスに篭って、壁打ちしながら、プロダクトをつくっていったのを覚えています。

津田 年末年始に二人でオフィスに篭ってあーでもないこーでもないと言いながらデザインをつくっていたのは良い思い出ですね。笑

当時は、とにかくスピードが重要だったので、”二人でデザインを作っては、すぐに顧客に当てる”、を繰り返し、デザイン起点でプロダクトづくりを進めていました。 エンタープライズにおいて、それだけクイックに壁打ちしていただける顧客がいたこともとても恵まれていたと思います。 また、顧客からResilireのコンセプトに強く共感いただき、「Resilireが進化しないと課題が解決されない」と心強いお言葉をもらったこともありました。

デザイン起点でプロダクトづくりを始め、顧客と一緒に形にしていく進め方は、現在のプロダクト開発の進め方にも繋がっていると思います。

チームがもたらすプロダクト開発の変化

—— Resilireに入ってから2年近くで、どのような変化がありましたか?
松川 経験豊富且つプロフェッショナルな開発メンバーが複数名入社し、各領域で思考できる人が増えたことが大きな変化でしたね。
当時は、スピード最優先だったので、雑な部分が残っていたり、細かい挙動までは敢えて考えないようにしていたこともありました。結果的にバグも多く、顧客に迷惑がかかってしまったこともありました。

そこからチームが出来たことで、多様な視点かつ中長期の運用面まで考慮したプロダクトづくりに向き合えるように変化してきました。

津田 社員が増えたり、業務委託の方の稼働が増えたこともありますが、人生をかけて本気でResilireに飛び込んできてくれる仲間が何人も参画してくれたことが大きな変化です。
各領域を信頼できる人たちに任せられるようになったことで、多面的に顧客価値を考えられるチームへ進化し、より良いプロダクト開発へ変化してきています。

—— 開発プロセスの変化はありましたか?
松川 開発プロセスも大きく変わりました。これまではデザインが先行していることが多く、仕様が詰まってくると手戻りが発生することもありました。開発メンバーが増えたことでデータベースの構造や基盤を踏まえて、デザインをどうすべきかを考えられるようになり、より開発がスムーズに進められるようになってきたと感じます。

デザインの議論に関しても開発メンバー含めた全員が議論に参加してくれるので、デザイナーとしても非常にやりやすい環境です。
エンジニアの方々も同じ目線を持っていて、意見が大きくずれることも少なく、デザインに対して真っ当な意見をくれるので、プロダクトが磨かれるのも早いし、自分の学びにもなります。
自分のエゴや発言を無理に通す人はいないので、全員が良いプロダクトをつくろうという姿勢で、質の高い議論が展開されています。

現在、取り組んでいるプロダクトを刷新するリアーキテクチャプロジェクトも、どうすれば良いプロダクトになるか議論し続けた結果の意思決定で、会社としてとても良い意思決定になったのではないかと思います。

複雑な要件を満たすシンプルなプロダクトデザイン

—— アーリーなスタートアップでリアーキテクチャに取り組んでいるのは珍しいですね。どういった背景から取り組むことになったのですか?
津田 サプライチェーンのデータ構造を大きく変更する必要性とスケーラブルなアーキテクチャになっていないという観点から、リアーキテクチャに取り組むことを決めました。

初期は、サプライチェーンのデータ構造の作り方に関するユースケースが溜まっていなかったので、システムとしてデータの柔軟性を持たせて、どういった構造でも作れるプロダクトデザインで検証を進めていました。
その結果、サプライチェーンデータ構造の管理方法は大きく2つのパターンしかないことが言語化できたので、それらの構造をより効率的に管理可能なデータ構造に作り変えることにしました。

それと同時に、スケーラブルなアーキテクチャになっていないことにも気づきました。リリース後すぐにエンタープライズの顧客に導入頂き、データを入れていく中で、嬉しいことではあるんですが、まだアーリーなフェーズであるにも関わらず当初の想定の10倍ほどのデータ量を捌く必要が出てきました。そのため、アーキテクチャを再設計したほうが、顧客・Resilireともにメリットが大きいと判断し、大量のデータを扱えるアーキテクチャにゼロから作り直すことにしました。

—— アーキテクチャを作り替えるということは、デザインにも影響はありますか?
松川 元々はデータベースだけを変えて、デザインは少し変える程度を想定していましたが、実際に蓋を開けてみるとデザインも含めて、全て作り替えた方が良いという結論に至りました。
元々のコンセプトが変わるわけではなかったので、新しいデータ構造やアーキテクチャを踏まえ、本当にユーザーが使いやすいデザインを一から作り直しています。

これが非常に複雑で難しいです、、。笑
Resilireはこれまでにないサービスであり、複雑な要件も多いので、それらを理解した上でデザインに落とし込むのが結構大変です。最初は開発チーム全員で毎日議論し、少しずつ仕様を固めていって、どういうデザインが良いのかを議論して、落とし込んでいきました。

—— 具体的にはどういった複雑さや難しさがありますか?
津田 様々な要件が絡み合って複雑さを生んでいるのですが、大きくは3つあります。

1つ目は、社外ユーザーが利用するという独特なプロダクトであること。
弊社のサービスは、導入いただいた企業からサプライヤーへIDを付与いただき、社外の人も利用することになります。そのため権限管理を誤るとサプライチェーン上のデータに必要以上に社外のユーザーがアクセスできてしまいます。
ユーザー毎に適切なデータ閲覧権限を与えつつ、サプライヤーが手軽にデータ管理を行えるようにするところが、複雑で難しいところでした。

2つ目は、サプライチェーンの大量データを視認性高くビジュアライズさせる必要があることです。
サプライチェーンのツリーデータは、数万から数十万に及ぶノードで構成されたデータになります。会社や拠点の情報だけではなく、担当者情報や品目情報なども紐づくため、複雑で膨大なデータになります。
また、社内外のユーザーが同時にアクセスしてデータを管理する為、そのデータが何を意味し、どの項目にどういったデータを登録するのか、瞬時に把握できるようにする必要があります。

最後の3つ目は、大量のサプライチェーンデータとリスク情報の掛け合わせです。
Resilireは、リスク情報の位置情報からどのサプライヤーに影響を及ぼすかを検知し、自動的にアンケート連絡を行う機能があるため、大量のサプライチェーンデータにリスク情報が掛け合わさる形になります。
複数のサプライチェーンのツリーに同じ拠点が数百件登録されていることがあるため、ロジックを組み間違えると同じ拠点に数百件のアンケートが飛んでしまう可能性もあります。
また、リスク項目も多岐に渡るため、多くの変数があり、複雑性が高いです。

これらの複雑な要素に加え、リスク発生時にバグが起きてはいけないというプロダクト特性もあるため、難易度が高いなと感じる事が多いです。

—— 非常に複雑性の高いプロダクトということは理解できました。この複雑性を踏まえ、デザインで意識していることはありますか?
松川 シンプルなUI/UXにこだわっています。Resilireで言う”シンプルなUI/UX”とは、「顧客の課題が早く、簡単に解決されること」を指しています。
そのためデザインのファンシーさには重点を置いていません。複雑性の高いプロダクトのため、要件を満たし、ユーザーが使えるようになるだけでもかなり高いハードルがあるので、課題解決を優先して取り組んでいます。

また、優先順位を落とすべき箇所を見極めないと工数の面で問題が生じたり、実装に大幅に時間がかかってしまうため、意識してシンプルさを追求しています。

今回のリアーキテクチャでも、SaaSに慣れていないユーザーが使う可能性を考慮し、複雑な要件を満たしつつも、操作性や高い視認性を実現するデザインを意識しています。

津田 松川さんが話してくださったように、私も初期のプロダクトづくりから、「本質的な課題解決をシンプルなデザインで実現すること」を大事にしてきました。そして実際、プロダクトデザインが決め手で顧客に導入されたケースが非常に多いんです。 シンプルでサクサク動かせる、リスク影響が一目でわかる、ログインして即座にデータが更新できる、といったシンプルさを追求する根底の部分はこれまでと変わらず、大切にしてきました。

顧客の要望をそのまま聞いたり、延長線上にある解決方法だけで考えてしまうと、機能が上積みされ、複雑性が高まっていってしまいます。
もっとシンプルに課題解決を推進できる方法があるんじゃないかと問い続けることが重要だと考えています。その思考し続けた結果がシンプルなデザインに繋がっていくと考えています。

最近は、実現したいデザインのリスク要素を洗い出す、ということも意識するようになりました。デザインが変わることで他の業務にどう影響を与えてしまうのか、使われ方やデータ量によって破綻しないデザインになっているか。あらゆるパターンで検討を重ねています。

顧客と共創するデザイン主導のプロダクト開発

—— 今後は、どういったことに取り組まれていきますか?
津田 リアーキテクチャプロジェクトが現在進行しているので、まずは無事に完了させることが最優先だと考えています。その後は、新規機能を高スピードに開発していきます。
Resilireの面白いところは、プロダクトの拡張性の高さです。現在のリアーキテクチャでサプライチェーンのデータ基盤を構築できるようになります。
その後はこのデータ基盤を活かして、毎年新規プロダクト規模の機能開発をしていく予定なので、常にゼロイチのデザインをつくることになり、非常にチャレンジングな取り組みが待っています。

Resilireは、プロダクトデザインが競争戦略上においても重要な要素になるため、デザイン主導でプロダクトの仕様を決めていくということも増えていきます。事業戦略上のコアをつくれることは、デザイナーにとって非常に面白いチャレンジになるのではないかと感じています。

—— 面白い取り組みが始まりそうですね。デザイナーの重要性が高まっていくと思いますが、今後入社するデザイナーに期待したいことはありますか?
松川 デザイン主導でプロトタイプを作り、顧客に当てて、フィードバックをもらうような動き方を期待したいです。Resilireは、デザイン主導で取り組める環境が整っていると思います。
プロダクトデザインファーストなカルチャーで、ビジネスサイドも一緒になってプロダクト価値に向き合ってくれます。 CEOがデザイナー出身なので、経営がデザインの重要性を理解していることも非常にやりやすいです。 その分、求められるレベルも高いですが、デザインの議論も生まれやく、様々なチャレンジができる環境です。

津田 私も最近は未来の機能デザインを作り、顧客に当てにいっています。 この領域は、まだ誰も開拓していないため、顧客も答えを持っていません。Resilireのプロダクトビジョンに近づくための新しいコンセプトをこちらから提案していく必要があると考えています。 遊び感覚で、「こうなったら顧客価値が上がるのではないか」「こんな機能があったらワクワクする」という姿勢で、一緒に楽しみながらプロダクトづくりに取り組んでもらいたいです。

—— 本気でプロダクトづくりに向き合える環境があり、顧客が本当に必要としているものをデザイン主導でつくっていけるのは、ユニークかつ非常にやりがいがありますね。本日は、ありがとうございました。

最後に

サプライチェーンリスクマネジメントを開発する「Resilire」では、リアーキテクチャに取り組み、ここから新規機能の開発に取り組んでいくタイミングです。
Resilireがプロダクトとして目指している世界観はCompany Deckに纏めていますので、少しでも興味持って頂いた方はぜひご確認ください!

現在、正社員のプロダクトデザイナーが不在のため、一人目のデザイナーを探しています。(※2023/05現在。業務委託メンバーのみ)

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