個別の商品ではなく、カテゴリについてラダリングインタビューを行う時にはここに気をつけろ!
こんにちは、リサーチャーの牛尾です。
「リサーチに関する学術論文を読んでみよう!」のコーナー!!
▶本記事では、以下の論文を取り上げます
Amatulli, Cesare & Guido, Gianluigi (2011), "Determinants of purchasing intention for fashion luxury goods in the Italian market: A laddering approach," Journal of fashion marketing and management, 15(1), 123-136
※補足1:英語の論文です(過去、公式に邦訳されたことはない論文です)。
※補足2:本論文のタイトルをGoogleなどで検索すると、PDFが見つかると思います。著者がアップロードした公式なもののようですので、本論文を読みたい方はこれを利用するといいと思います。
※もう1つ補足:本論文のテーマは<ラダリング法>です。ラダリング法については以下の記事で詳述しました。先にご覧になることをお勧めします。
【Point1】ラダリング法はラグジュアリーグッズにも適用可能である!!
<1>
本記事で取り上げる論文のテーマは、<ファッション・ラグジュアリーグッズの購入決定要因を分析しよう(the analysis of determinants of purchase intention for fashion luxury goods)>です。
なお、<ファッション・ラグジュアリーグッズ>というのは、高価なアパレル、アクセサリー、ハンドバッグ、靴、時計、ジュエリー、香水などを指すそうです。
<2>
そして詳細をすっ飛ばして結論を見てみると……
The study found that habitual luxury consumers, with an average age of about 35 years, unmarried but involved in a relationship, childless, with a university degree, a career as independent professional/freelancer and a net personal income greater than 50,000 Euro, acquire fashion luxury goods for ostentation, for visible consumption or for the demonstration of a privileged economic status, but for personal enjoyment and for the possibility of owning high quality products that reflect their style and that give them personal inner serenity.
すなわち、【<日常的にファッション・ラグジュアリーグッズを購入している人びと>がファッション・ラグジュアリーグッズを購入するのは、他人に見栄を張ったり、自身の経済的地位を誇示したりするためではない。彼らは、自分が楽しいから買っているのだ!自身のスタイルを反映した高品質なアイテムを所有すると心の平穏を得ることができるから買っているのだ!】。
ちょっと堅い言葉を使うと、【外的動機(external motives)よりも、内的動機(internal motives)の方が重要だと判明した】というわけですね。
<3>
この発見、例えば広告を作ったりする時に役立ちそうですよね!
つまり、ラダリング法という技法はラグジュアリーグッズ(高級品、嗜好品)にもバッチリ適用可能なのです。
【Point2】個別の商品ではなく、カテゴリについてラダリングインタビューを行う時には……!?
続いて、調査の進め方に注目してみましょう。
<1>
まずは調査概要をざっくり確認します。
・イタリアのファッション・ラグジュアリーグッズ店(ヴェルサーチ、グッチ、フェンディ、アルマーニなどの服やアクセサリーを扱う店)の協力を得て、店に来たお客に対してインタビューを実施した
・調査手法はパーソナル・インタビュー
・調査参加者は40s
・1人あたりのインタビュー時間は平均56分
<2>
次に、インタビュー法(聴取法)を見てみましょう。
そもそも、ラダリングインタビューは一般的には……
・Step1:まずはモデレーターが「○○のどこが好きですか?」「類似商品ではなく、○○を買ったのはなぜですか?」と、テーマ商材の魅力をざっくり問う
・Step2:たいていの場合、調査参加者の回答はattribute(商品の属性、特性)に関するものである。つまり「味がおいしいからです」「色がいいからです」など
・Step3:こうした回答に対して、モデレーターは深掘りを行う。例えば「『味がおいしい』というのは具体的にどういうことですか?」「色がいいと、どうして買いたくなるのですか?」。調査参加者のvalueが明らかになるまでこれを繰り返すのだ
※詳しくは以下の記事をご参照くださいませ!
本論文も、基本的にはこれを踏襲しています。しかし……初っ端の質問がちょっとユニークなんですよ!
すなわち、「○○のどこが好きですか?」や「類似商品ではなく、○○を買ったのはなぜですか?」ではなくて、「『ファッション・ラグジュアリーグッズ』と聞くとどんなことを想起しますか?」と訊いているっぽいのです。
※補足:残念ながら、どう質問したのか論文には明記されていません。とはいえ、「『ファッション・ラグジュアリーグッズ』と聞くとどんなことを想起しますか?」と訊いたのはたぶん間違いないと思います。というのもですね、論文内に「『ラグジュアリーブランドと聞いて想起するattribute(attributes associated with the luxury brand)』を確認するところからインタビューを始めた」という記述があるんですよ。また、「調査参加者の13%から『非常に高価(very expensive)』という声があがった」という文章もある。もしも「○○のどこが好きですか?」と質問していたらこんな回答はあがりませんよね。
<3>
「○○のどこが好きですか?」や「類似商品ではなく、○○を買ったのはなぜですか?」ではなくて、「『ファッション・ラグジュアリーグッズ』と聞くとどんなことを想起しますか?」と訊いた……?
はて、一体なぜこんな訊き方をしたのでしょうか?
もちろんどう訊こうと自由なのですが……しかし気になるじゃないですか!ということで理由を考えてみました。
<4>
注目すべきは調査対象でしょう。
そもそも、本論文の目的は上述の通り<ファッション・ラグジュアリーグッズの購入決定要因を分析しよう>。<ヴィトンの新作が売れている理由を分析しよう>や<エルメスの定番アイテムが売れ続けている理由を調べよう>ではありません。
そう!本論文の調査対象は、<ファッション・ラグジュアリーグッズ>というカテゴリなのです。
<5>
多くの人は、個別の商品についてはアレコレ思いの丈をぶちまけることができます。しかし、カテゴリレベルになるとどうでしょうか?
例えば、【映画「鬼滅の刃 無限列車編」の魅力を訊いてみる】。映画を見たことがあれば、大抵の人が「煉獄さんが最高にカッコよかった!」など何かしら答えられるはずです。
しかしこれが【「鬼滅の刃」シリーズ全般の魅力を訊いてみる】になると……抽象的で無難な答えが多くなるはずです。答えに窮する人も出てくるでしょう。
さらに、【バトルマンガ全般の魅力を訊いてみる】になるとどうでしょう?ここまでくると、もう大半の人は答えられないはずです。
つまり!
たいていの人は<個別の商品の魅力>を語ることはできても、<カテゴリの魅力>を語ることはできないのです。
<6>
では、<バトルマンガ全般の魅力>を調べたい時にはどうすればいいのでしょうか?
ここで登場するのが、ずばり「○○と聞くとどんなことを想起しますか?」という問いです。
「バトルマンガと聞くとどんなことを想起しますか?」……これ、「バトルマンガの魅力は何だと思いますか?」「あなたはなぜバトルマンガが好きなのですか?」といった質問よりも遥かに答えやすいですよね。
というわけで以上をまとめると、【個別の商品ではなく、カテゴリに対してラダリングインタビューを行う時には、「○○と聞くとどんなことを想起しますか?」という質問から開始するとよさそうだ】。
以上です!
皆さん、ぜひ参考にしてみてくださいねー!!
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