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小説|ハロゲンワークス

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ーーここは、ハロゲンの森。ハロゲン元素によって形成された、普人の生きれぬ街。そこに集いし能力者達の、それぞれの想いを乗せた、哀しく儚い物語ーー。
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記事一覧

小説|ハロゲンワークス(21)最終話

ーーーー光を放つ大樹。かつての姿にホッと息を溢す菖蒲と橘の近くで。 ローブを剥がされた青…

紫織零桜☆
10か月前

小説|ハロゲンワークス(20)

ゴゴゴゴ、という地響きの音を感知して、フードを目深に被った青年が顔を上げた。 「……あぁ…

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小説|ハロゲンワークス(19)

紫苑は部屋に入ってすぐに右に向かって走り、壁際にある柱の陰に身を潜めていた。龍になったヤ…

小説|ハロゲンワークス(18)

橘の決意の籠った瞳に、青年は口元を緩ませた。 「……へぇ」 すると、青年の纏う威圧感が少…

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小説|ハロゲンワークス(17)

ーーーー彼は日だまりのような笑顔で紫苑を見つめながら、昔の情景を思い出していた。 ◇ …

小説|ハロゲンワークス(16)

「……いっ、て……」 橘は、意識を取り戻して、軋む体を何とか持ち上げる。ぱらぱらと土が髪…

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小説|ハロゲンワークス(15)

レイドの気配がして飛燕達が家を出る。するとほぼ同時に、バキッ!っと大きな音と共に街の近くにに雷が落ちた。 「ーー……ちっ。早いな」 飛燕が眉を寄せる。すでにレイドの能力が発動している。急がなければ、雷で森が焼け焦げる。 「走れるか?紫苑」 「うん。大丈夫」 住民の避難はフリージアに任せてあるので、飛燕達は迷わず城に向けて走り出した。バキッバキッ!と、雷が立て続けに森に落ちる。 紫苑は飛燕の体も心配なのだが、事態が事態ゆえに、それを言っている場合ではなくなってしまってい

小説|ハロゲンワークス(14)

翌日。 目を覚ました飛燕は、痛みの続く体を何とか起こすと、自分の手を握りながら眠る紫苑を…

小説|ハロゲンワークス(13)

その夜。フリージアは菖蒲と橘に事情を説明し、明日についての行動を委ねた。 ハロゲンの森に…

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小説|ハロゲンワークス(12)

ハロゲンワークスの家にたどり着いたのは、夜も更けてからだった。 紫苑は体に力が入らず、樹…

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小説|ハロゲンワークス(11)

「……あぁ、純血種の子も一緒でしたか」 純血種……初めて聞く単語に戸惑いながら、紫苑は後…

小説|ハロゲンワークス(10)

森の奥へと進むにつれ、紫苑は徐々に、飛燕との記憶を取り戻していった。断片的だった記憶が、…

小説|ハロゲンワークス(9)

「わり、けっこう遅くなっちまったな。帰ろうか、紫苑」 「あ、はい」 「あら、私も居るのに」…

小説|ハロゲンワークス(8)

飛燕が居たのは、街の外れにある大きな工場の中だった。彼は紫苑に気付くと、不思議そうに名を呼んだ。 「紫苑?」 「ーーーー……」 彼は紫苑に近くと、無意識に膝を曲げて目線を合わさる。黙ったままの彼女に、飛燕は優しい表情を浮かべた。 「どうした?紫苑」 紫苑。その名を彼から呼ばれる度に、なぜだか泣きそうになる。 こんなに優しい表情を向けてもらえていても、自分は彼の事を思い出せない。 同じだけの想いを返したいのに、それが、出来ない。 それが、とても……ーー寂しい。 「菖蒲