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その音で紡いで

その音で紡いで

「今日までありがとう。不甲斐ない部長だったと思うけど、みんなと一緒にここまでこれてよかった。最高の仲間をもったよ、本当に、ありがとう…」
教室内に拍手が響き渡る。七月の中旬、惜しいところまで進んだ先輩達は今日で引退となった。教室中からすすり声が聞こえる。それぞれが残りの時間を大切にしようと、手紙を渡したり拍手を交わしたりしているがオレは到底何かをする気なれなかった。今日で先輩達との部活が最後という

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零時までは

零時までは

県で一番頭がいいと言われている高校の制服を着崩し、少し長めの茶髪をセンターに分けてセットしてある。耳のピアスと指輪からは不真面目さが演出されている。

何か一つ軽食を買っては、零時を回るまで小さなイートインコーナーに居座り続ける。そして私が制服を脱いで帰宅準備を終えて戻ってくると、もうすでにコンビニから姿を消している。いくら男子高校生だからといっても、さすがにこの時間まで外出しているのは親が心配す

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ピアスの呪い

僕の幼馴染はモテる。整っている顔にサラサラな髪の毛。くっきり二重に、きれいな鼻筋。三六〇度、どこから見ても完璧な顔立ちをしている。その上性格も頭も完璧で、共学に通う彼は女子からの告白が絶えなかった。それなのに何故か一度も彼女がいたことがない。十年以上一緒にいる僕なんかより、彼女と幸せな時間を過ごした方がいいと思ってしまう。それだから、彼が告白を断った女子が僕にあんな話をしてきた時は声が出なかった

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