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✥✥vol.2 『続・露地栽培(1)』〜Yさんに聞かれた素朴な疑問✥✥

[Ren's Essence〜ふと足を止めて、考える]
『続・露地栽培(1)』〜Yさんに聞かれた素朴な疑問


✦そんなにシンプル?✦

「本当に、土をかぶせて水やりしていれば育つものですか?」
いつもお世話になっている隣人のY氏に、前回書いたコラムを受けてそう聞かれた。
自宅の近くに借りられそうな畑があり、菜園に関心があるのだと言う。

実際、“畑のあるある”としては、
例えばシソなどはそこかしこで “野良生え”して立派に育っているし、
収穫期に掘り起こしそびれたジャガイモが、次の年に畝の脇から芽を伸ばしていて、せっかくだからとそのまま育てて収穫してしまった事もある。

「土をかぶせて、水を切らさんかったら育つんじゃ」
この名セリフ(笑)は、
野菜作りを始めたての頃、畑に本を持ち込んで用水溝の縁に腰掛けて読み耽っていた僕に、松山の農家のおいちゃんが掛けてくれた言葉だった。
“あんまり難しく考え過ぎるもんじゃない。あれこれしようとする前に、作物の生命力を信じなさい”
今にして思えば、そんな意味を込めたメッセージだったのだろう。
「じっくり見ることよ」ともおいちゃんは言った。

一方で野菜作りにもまた、色んな考え方や、やり方がある。
収穫量を増やすため、失敗を避けるため、より健康的なものを作るため。
神奈川に来てから見つけた苗を扱う米屋さんは、石灰も肥料も “こだわったモノ”を置かれていて、

「食費を浮かそうなんて考えてはダメですよ。野菜作りというのは、おカネはかかるものです。菜園をするのは簡単ではないし、良いモノを施さないとマトモな野菜は作れませんよ」

と僕に言ったが(全くの初心者と見た様な感じがあった)、
ホームセンターで普通に売っている安価・一般的な肥料や石灰を用いても、ちゃんと美味しく食べられる野菜は作れる。
改良を重ねられたこの頃の苗や種はとても良くできていて、耐病性に優れ、収穫の時期も量も見込める。
土壌改良であれ、厳密な意味での有機栽培であれ、理想の農法を追求する楽しみはもちろんある。
ただ、商売のためとは言え、本来は気軽に始められるハズの菜園を “いたずらにハードルの高いもの”にしてしまうのはどうだろうか。脅し広告の類いと同じで、あまり上手なやり方とも思えない。

✦シンプルに大切なこと✦

かつては畑、今は庭菜園。二毛作で十数年ほどは野菜作りを楽しんできた。

そんな愛媛や神奈川でのあれこれを思い出しながら、
“ちょっとした失敗はありながらも、楽しく継続していけるための「最低限のセオリーや心がまえ」とはどんなものだろうか”
と考えた。
きっかけはY氏のために。より広くは、“これから野菜作りにチャレンジしてみたいと思っている人たち”のために。

構成としてはこんな感じになりそうだ。

✥ベースメント(編)✥
・土を作ろう
・畝をこしらえる
・時を待って植え付ける

✥根と幹と枝葉の考え(編)✥
・追肥と水やり〜成長のサポート
・剪定〜選択と集中
・外敵〜リスクヘッジ

✥利益の最大化(編)✥
・収穫〜Congratulation!!
・段々植え〜計画性
・土を痩せさせない〜継続性

✦思考の滋養〜体験の楽しみに加えて

農業は『人間の最初の自然破壊』とも言われる。
少し厳しい解釈だが、農業はエコだというややナイーブな思い込みを戒める意味合いもあろうか。

狩りの様に “ただ頂く”のではなくて、栽培とは、自然に積極的に関与して管理・支配する。
それを自然に対する統治と見れば、政治的思考の実践・理解にも繋がる。
『作物・畑を育てる≒製品・会社を育てる』と見れば、経営に通じる所もある。
或いは子供のいる親御さんなら、“育てる”という部分で響き合うものもあるかも知れない。

菜園という空間では、実に様々な事が起きる。正岡子規の言うように、リトルガーデンとは“小宇宙”なのだ。
栽培の経験を通して、そこで体感し得たものは僕の思考の血肉となっている。

✦ラーニング・ステップ

まずは総論として、『野菜全体に通じる基本的な考え方』を身につけよう。
既に触れた「水も追肥もやり過ぎないのがコツ」というのもその一つだ。

その後に、各論として『個別の種の特徴』を継ぎ足していくのが良い。
例えば、
「茄子は “肥料食い”だから、元肥は多めに。水も追肥もたっぷりあげて良し」
とか、
「トマトの原産地はアンデス高地だから、水はそんなにやらなくて良い。大雨が降ると水分過剰によって割れてしまったりもするので、予報が出ている時は、まだ青みがかっていても早めに収穫してしまうのも一つの手。収穫後に陽に晒しておくと、良い具合に追熟して赤くなる」
等々。

『キュウリはこうやって作る。トマトはこうやって作る……』
と個別・並行に知識を重ねていくのではなくて、
『野菜はこう作る。トマトの場合はここが変わっているし、茄子の場合はここに気をつける』
という具合に、2層構造で全体を把握する。

総論の基本セオリーを支柱の様に真ん中に立てて、それとの対比で個々の野菜の育て方を見ていくと、その特徴を憶えやすいし、大きな失敗は避けながら、段々と着実に上手になるだろう。

[ベースメント(編)に続く〜]


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野咲 蓮
メッセージ・コンサルタント(人物・企業のリプロデュース) 著書:人間を見つめる希望のAI論(幻冬舎刊)


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