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「購入して頂かなくて結構です」とできるだけ穏やかに言って電車に乗って持って帰ってきた。

人生はバランスである。
良い事もあれば悪い事もある。

揮毫を頼まれて値段交渉も済んでた作品を
できあがったから電車に乗ってシティまで納品に行った。

依頼者は女性。持って行ったのは彼女のアルバイト先。
作品を渡そうと確認のために披露する。
すると彼女の彼氏という男が横から出てきて、
「高すぎる、払わない」と言い放った。

その無礼な言い方って言ったらない。
了承してたはずの女性の方もその彼氏の高圧的な態度にびびったのか、無言になってしまう。

そんな無礼な態度をとられることも滅多にない。
頭に血が昇る。
その男の目の前で作品を破いてくしゃくしゃに…
というイメージが頭を過ぎる。

いや待て待て待て。
気を静めるのにトイレを借りる。
個室に入って深呼吸をし、心を落ち着けて考える。

他にも見ている人がいる。
大人げないことをしても自分の、そして自分の作品の価値を下げるだけ。
それに作品に罪はひとつもない。

仕事の依頼を受けたらいいと思う作品ができるまで何度でも何度でも書く。
墨を磨って、書いて、墨を磨って、書いて、の繰り返し、繰り返し。
何日に渡っても書くこともある。

それは仕事だから当たりまえ。
自分の落款印を押すのに納得いかない作品はありえない。

残るから。

そうやってできた作品。
嫌々で手元に置いておいて欲しくない。

トイレから出て仕切り直す。
「購入して頂かなくて結構です」とできるだけ穏やかに言って、
広げた作品を丁寧に包んでバッグに入れて、
電車に乗って持って帰ってきた。

まあこういうこともある。

くれぐれもお願いしておきたい。
無礼な人は俺に関わらないで欲しい。
宜しくお願いします。

英語圏で書道を紹介しています。収入を得るというのは本当に難しいことですね。よかったら是非サポートをお願い致します。