【読書記録📚】ベーシック・マーケティング【第8章 価格戦略】

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投稿にあたって
序章
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
第7章
●第8章(当記事)
第9章
第10章
第11章
マーケティング検定3級受験感想

こんにちは。
Remsyです。

第8章「価格戦略」の感想です。
尚、文章終盤には、問題集記載の内容も含みます。
(全てネタバレ注意)

■章概要

価格の決定は、マーケティングミックスに関する様々な決定の中でも、最も気を遣う意思決定の一つ、と筆者。たとえ優れた製品を開発してもひとたび価格設定を間違えると、新製品の売れ行きが伸び悩むことも予想されるため、とのこと。
当章では、マーケティング担当者にとって、枠組みに基づいた価格戦略への対処に関する説明について深堀されています。
適切な価格設定戦略を実施するために理解すべきコンセプトが概説されています。

■事例

駅前でよく見かける、カット専門店の価格設定に関して。
カットサービスの効率化により、約10分で終了、価格も税込み1,080円という低価格で提供されておりますが、2019年2月から、深刻な人手不足の改善のため、税込み1,200円に通常料金を引き上げ。
当該運営会社はまた、多忙なビジネスパーソン向け価格設定店舗の展開もしております。
上記を踏まえ、当該運営会社は、取り巻く環境変化に、価格変更や価格バリエーションに対応しているのです。

■1 価格設定戦略の意義

当項は、マーケティングミックスにおける、価格の特性に関する確認です。
価格は、他のマーケティングミックス諸要素、例えば製品開発、プロモーション、チャネル開発とは異なり、
それ自体が確定的に売上を生み出す、直接的に売上に影響を与える
(他要素は、確率的に需要数量に影響を与えることで、売上高に結びつく)
適切な価格水準が、他のマーケティングミックスの在り方にも影響を与える
設定された価格レベルによって需要数量が変化し、かつ費用水準にまで影響を与える
(低価格だからと言って、それがそのまま需要数量に跳ね返るようなケースばかりではなく、むしろ高価格の方が、数量が伸びる場合までも見ることが可能
需要数量の増加により、生産コスト低下、単位当たりコスト水準も低下!)
⇒価格設定は、売上増減やコスト低下をもたらしながら、利益水準にまで影響を与える
●他諸要素と比べて、容易に変更させやすいが、それと裏腹に、その変更が需要数量や費用との関係を通じて、売上高や利益と言った企業成果に直接的影響を与えてしまう
⇒ほかのマーケティングミックスとの相互関係にも留意し、戦略的発想から価格設定を行うことが求められる

■2 価格設定に影響を与える要因

価格設定の際、企業内部の要因(マーケティング目標コスト)や、外部要因(需要の特性、競争要因)など、いくつもの要素を考慮に入れる必要があるのです。の特性、競争要因)など、いくつもの要素を考慮に入れる必要があるのです。
このうち、主要要因が特定化され、価格設定アプローチが選択され、そして、そのほかのマーケティングミックスなどが考慮されながら、最終価格が選択されます。また、状況に応じて価格が適合されることもあるのです。

●マーケティング目標
【価格設定戦略】
○市場浸透価格設定:市場シェアの最大化という目標を掲げる企業による価格設定。新製品の導入時に低価格を設定することで、短期間に大きなシェアを獲得しコスト面での優位性を発揮し、その後利益獲得を目指す
○上澄み吸収価格設定:短期間に大きな利益を上げ、開発コストを迅速に回収することを目標として、新製品に高価格を設定する戦略。ターゲットの消費者が低価格にあまり反応しない場合や、自社製品の品質が優れていたり、ブランドイメージに優れている時等、競合他社が模倣品を導入しにくい場合に採用される

【企業の競争地位別価格戦略】
○リーダー:高めの価格設定を維持(最大シェアの維持、最大利益の獲得、イメージの確保をマーケティング目標として設定することが少なくない。自ら低価格政策を採用してしまうと他も追随して大痛手)
○チャレンジャー:リーダーよりやや低めの価格設定(差別化によるシェア拡大を目標)
○フォロワー:開発コストを抑え、価格に敏感に反応する標的を狙って低価格設定(模倣を基本戦略)
○ニッチャー:価格はやや高め(特定の強みを活かして独立した標的市場に対応し、利益やイメージ確保を担うため)

●コスト
価格設定にあたって、いかなる要因によってコストが変動するのか、とりわけコスト低下の源泉を知っておく必要があるのです。
まずは企業コストの内訳を見ていきましょう。
・企業コスト:固定費と変動費に分かれ、その合計が総費用
・固定費:生産、売上の水準によって変化しない費用 ex.販売員の給与や広告費などのマーケティング費用、賃貸料等
・変動費:生産、売上の水準によって変化する費用 ex.原材料費、輸送費
・平均費用:1単位当たりの費用。総費用を生産高で割った値
費用の大きさは、生産水準や設備規模によって変化します。
ある設備の下で生産数量を増やせば製品1単位当たりのコストは低下⇒大量生産によって、コスト面での優位性が発揮されます。しかし、生産量がある一定の水準を超えると、逆にコストが上昇してしまいます(労働者の機会の順番待ちや単価の高い残業が生じるため)。
コストの上昇を食い止めるためには、大規模な生産設備導入による生産効率の上昇により抑えられることが分かっています(⇒規模の経済性という、事業の大きさを背景とするコスト削減が享受できるため)。
また、大規模操業は、いち早く生産の経験を積み重ねていくことも、費用低下につながる要因となります(⇒経験効果(累積生産量が増加し事業活動の経験が蓄積されることで、労働の能率向上、仕事の専門化、生産設備の能率向上等が発生し、単位当たりの費用が低下していく効果)。
上記効果を前提とすれば、事業を進めていくうえで、競合企業よりもいち早く累積生産量を拡大し最大シェアを確保していくことの重要性が示唆されることになるのです。
また、コスト面の優位性を価格に反映させ、市場シェアを獲得し、さらにコスト低下を目指していく、競争的な価格設定の方法を採用する論理ともなるのです。

●需要の特性
筆者曰く、需要特性は、現代のマーケティングにおいて、価格設定において最重視すべき考慮事項と言ってよい、とのこと。
まずは基礎概念として価格弾力性を上げております。
巻末用語集の説明だと、「需要の価格弾力性」として、

価格の変動に対する販売量(需要量)の変化の度合いを表す概念であり、需要量の変化率(%)/価格の変化率(%)として定式化される。一般的に価格を下げれば需要は増えることが多いので、この値はマイナスの値をとる。

尚、この値の絶対値が
○1<の場合弾力的
○1>の場合非弾力的
と呼ばれます。
価格弾力性の導入により、同じ価格の変化であっても、どの程度需要量の違いを生じるかを捉えることが可能となります。
続いて、消費者にとっての価格の役割を見ていきましょう。価格弾力性の数値だけでは、なぜ需要量の違いが生じるかについてまでの理解を齎さない、とのこと。以下の3点です。
犠牲としての役割(消費者にとって、価格が購買に際して支払う出費であるとき、価格は消費者にとって犠牲の役割になる)
品質のバロメータとしての役割(「安かろう悪かろう」という言葉の通り、消費者は価格の安いものは品質が悪いものだと解釈することがある→消費者は、価格の水準を、品質を推論するための情報として利用)
意味の役割(価格の水準の高さ自体が消費者に価値を齎すことがある)
この3つの価格の役割から見ると、先の価格弾力性の議論は、
○消費者が犠牲の役割として価格を利用するとき、需要曲線は右下がりとなる(絶対的な低価格を消費者が求める時には、同じ価格の低下であっても需要量の増加は大きくなる)
○消費者が品質のバロメータや意味の役割として価格情報を利用するとき、価格が高いほど売上が増大する現象が生じる(需要曲線が右上がりの部分を含み、需要の価格弾力性はプラスの値となる)
との解釈となります。

●競争要因
競争要因も価格決定に影響を与える要因となります。見極めるポイントは2点。
①自社のライバルがいかなる相手なのかを、消費者の視点に立ちながら見定めること
②競合品が決められた後に、自社の製品がそれよりも優れている(劣っている)ポイントを、消費者の価値と言う観点から見定めること

■3 価格設定アプローチ

当項では、大きくコスト、需要、競争に基づく価格設定アプローチの方法がいくつか紹介されています。

【1】コストに基づく価格設定
●コスト・プラス法
・ある一定の利益率(マージン、マークアップ)を加えて価格を設定する
・1単位当たり原価=変動費+(固定費/見込み販売数量)
・設定する価格=1単位当たり原価/(1-利益率)
・(留意点)見込んだ販売量が販売されなければ、1単位当たり原価が増加し、当初目論んだ利益が確保不可能
・需要より、企業にとって容易に把握可能なコストを主な考慮店とした価格設定方法であり、簡易に実施できることが利点
●損益分岐点による方法
・損益分岐点:総収入と総費用が等しくなる点
・価格、販売量、目標利益と言った様々な条件を動かしながら、価格設定を検討可能

【2】需要に基づく価格設定
●専門家による判断
・専門家の知識を基に市場反応を推定していく方法
・シンプルで低コストであるが、専門家として選ばれた人材が有する能力に、価格反応の推定が依存してしまうという欠点あり
・専門家の判断が常に顧客の反応と合致するとは限らないため、利用条件があるとみるべき
●直接価格反応サーベイ
・購買許容価格、価格差での購買商品切り替えに関する質問を、調査対象者に直接質問し、価格への反応を見る方法
・(利点)単純、理解しやすく、安価で実施可能
・(欠点)価格に意識を集中させすぎてしまっている点、現実消費者は製品特性と価格との間のトレードオフ関係の中で購入対象を決めている筈であるがその状況を掴めていない点。
→上記欠点のため、当該方法だけに依存しながら価格設定するのではなく、他調査と組み合わせた利用が望ましい
●コンジョイント分析
・様々な見方に基づき、各回答者に各属性の異なった組み合わせからなる、いくつかの仮想的な製品(プロファイル)の購入意向の順序のデータを収集することで、その回答者の選好構造を明らかにしていく
・収集されたデータを分析にかけた結果からは、
属性に対する相対的な重視度がわかる
○各属性水準がどの程度の価値を持っているかわかる
・各属性水準の価値と言う情報があれば、どのような属性の組み合わせが、消費者にとってどのくらいの価値を持つのか算出可能。これをベースに製品改良方法や価格設定方法も検討可能
・当分析は万能な手法ではない。属性や水準が決定されると、ソフトウェアにより製品のプロファイルは自動作成可能であるものの、この際最高品質の属性水準に最低価格が付けられるといった非現実的なものが生成されてしまい、解答者に混乱が生じてしまう可能性有
●価格実験
・実際の市場、設定会場、DMによって送付するカタログなどにおいて価格を変化させ、売上やシェアへの影響を検討する方法
・どのあたりの価格レベルが、最も消費者の価格感度に強く影響を与えるのかを現実の市場の中で理解可能。価格設定についての有用な情報となる
・(利点)実際の消費者の行動を観察することが可能という意味で、収集されたデータの信頼性が高い
・(欠点)製品が実在していないとならないこと、割高なコスト

【3】競争に基づく価格設定
●現行レート価格設定
・競合他社の価格に基づきながら、高価格、低価格、同程度として自社の価格を設定する方法
ex.チャレンジャー企業がリーダー企業の価格設定に追随しながら低価格へ変更することがある
・市場の地位等も反映させながら、競争相手よりも低く設定するときや、高価格、同一に設定することもあり得る
●入札価格設定
入札価格:生産財分野においてよく見られるものであり、請負業者決定の為複数業者が文書により提示する価格
・競合他社の価格設定を予想することにより、自社価格が決定されるため、競争に基づく価格設定とみることが可能

最終価格は、
価格設定に考慮すべき要因(マーケティング目標、コスト、需要、競争)、価格設定アプローチが見極められた後に決まります。
この時、消費者の心理的反応を考慮して若干の修正が加えられるのです。
この際、参考となる考え方は2点。
端数価格
・消費者は、きりの良い数字ではなく、9や8と言った端数で終わる端数価格に割安なイメージを持つことが知られている
・多くの食料品や日用雑貨、耐久財などで見られる手法
慣習価格
・消費者は、価格の高い安いを判断するための基準となる内的参照価格を心の中で持っており、内的参照価格が多くの消費者で共通のものとなると、企業はこの価格に応じて価格設定せざるを得なくなる
・ex.自販機で販売されるソフトドリンク

■4 価格適合

企業は、最終価格選択後も、単一価格設定によらず、販売状況に応じて価格を適合させていくことが多く、
価格割引や販促型価格設定(ex.現金割引、数量割引、季節割引、特売価格)
差別的価格設定(ex.顧客セグメント別価格設定、製品形態別価格設定、場所別価格設定)
等の設定が挙げられています。
また、価格設定は、当該製品の製品ミックスにおける位置づけによって修正されることもあるのです。
①製品ラインにおける製品の位置づけ
・多くの企業はある製品グループにおいて複数の製品を保持しており、その中で製品ラインを構成。ある製品の価格決定において、製品ライン内に幾つかの価格帯を設け、その製品がいかなる価格ゾーンに入るのかの検討も必要
→ある製品ラインの中で、価格帯の異なる3つの製品があった時、消費者はこの価格の差を手掛かりにしながら、品質を知覚することがあるため
・先述の消費者にとっての価格の役割に基づけば、品質を見極める能力がない消費者は、この手がかりを使う傾向が顕著であることが想定可能
②キャプティブ価格戦略
・主たる本体となる製品を低価格で販売し、その後使用し続ける付属品を高価格にすることによって全体として利益を確保していくやり方

■総括

以上の事から、マーケティングミックスの4Pの内、
この価格戦略は他と異なって直接売上に直結する事、需要数量やコスト水準に影響を及ぼす事から、
極めて戦略的な設定をせざるを得ない
事項となります。
内的(マーケティング目標、コスト)・外的要因(需要、競争)を考慮に入れたうえで、価格設定アプローチを決めて、最終価格を選択、その選択後も場合によっては変更する、という流れになります。


では、また。