【読書記録📚】ベーシック・マーケティング【第6章 製品戦略】

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投稿にあたって
序章
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
●第6章(当記事)
第7章
第8章
第9章
第10章
第11章
マーケティング検定3級受験感想

こんにちは。
Remsyです。

第6章「製品戦略」の感想です。
尚、文章終盤には、問題集記載の内容も含みます。
(全てネタバレ注意)

■章概要

当章では、そもそも製品とは何かという説明に始まり、製品ミックス、参入順位、開発プロセスなどの問題を取り扱っております。
章の最後には、人間の一生になぞらえた製品ライフサイクルに関する概念の説明がございます、

■事例

世界的に著名なカップ麺の話。
発売から約50年経つブランドですが、
そのメーカーが「100年続くブランドにしたい」と意気込み、
近年、様々な層(セグメント)向けの製品を発売するようになりました。
当事例で紹介されているのは下記3点。
●消費意欲が盛んで健康は勿論おいしさや質の良さをより追及するアクティブシニア向け製品
●カップ麺ではこってり濃厚なものを食べたいが後ろめたい気もするという30~40代男性をターゲットとした、従来より敢えて濃厚でありながら健康的な製品
●当該ブランドに親しみのない20~30代女性に向け、野菜が多いことをコンセプトとしながら具材・スープを自分好みにオーダーメイド可能な製品
これだけ見ると、いかに当該メーカーが100年続くものにしていく挑戦に挑んでいるかと伺えるのです。

■1 製品とは何か

まずは、製品の捉え方に関する説明です。
コトラー(2014)によると、製品には、
3つのレベルがある、とのこと。
①中核となるベネフィット(便益)部分
②実体部分(ex.デザイン、.ブランド名、パッケージ、特徴、品質水準)
③付随部分(ex.設置、納品及びクレジット、保証、アフターサービス)

続いて、製品の分類について。
財は、以下のように分けられます。
【有形か無形か】⇒製品、サービス
【耐久性有無】⇒耐久財(長期使用に耐えうる財。家電、自動車、工作機械等。大抵高価格、人的販売や保証、配送などのサービスが手厚い)、非耐久財(短期に消耗してしまう財。購入頻度が高く価格が手ごろ、幅広いチャネル、度重なる購買促進プロモーション)
【消費者向けか産業向けか】⇒消費財、生産財(産業財)
【消費財分類】⇒最寄品(最小限の努力で購入する財)、買回品(消費者がデザイン、性能、価格等比較検討する財)、専門品(特別な努力をしてでも買いたいと思われる財)、非探索品(消費者に知られていない、或いは購入を殆ど検討されない財。ex.煙探知機、墓石等)
【生産財分類】⇒製造工程への組み入れ方の違いにより分類。材料・部品(最終製品の一部となるような財)、資本財(最終製品を開発・管理するのに欠かせない長寿命財)、備品(最終製品開発・管理の為の短命財。ex.修理用品、産業用備品)

当節の最後には、製品ミックスの考え方について挙げられています。
【製品ライン】企業が取り扱っている製品カテゴリ
【製品アイテム】各ラインに含まれるブランド、価格、サイズ、スタイル等のバリエーション
【製品ミックス】
・製品ラインと製品アイテムの組み合わせ
・「幅(製品ライン数)」、「深さ(1ラインに含まれる製品アイテム数)」、「長さ(製品ミックスに含まれるアイテム総数)」、「整合性(用途やチャネルなどの面から見て、各々の製品ラインがどれだけ密接にかかわっているかという程度)」、の4次元でとらえられる
・収益を高めるには製品ライン数(「幅」)を如何に広げていくかといった問題が重要
・製品ミックスの幅を広げるための方法
○水平的拡大:既存製品ラインと同一市場内で新たな製品ラインを設ける
○垂直的拡大:製造工程から見て既存のラインよりも前方ないしは後方の市場へ進出していく
○異質的拡大:従来ラインとは大きく異なった市場へ進出する

■2 製品開発

製品開発に関して、当節では、3つの考え方が挙げられています。
一つずつ見ていきましょう。

【1】参入順位
製品戦略において、他社に先んじて製品開発に取り組むべきか、また他社の動向を見ながら遅れて取り組むべきかという問題を、参入順位という考え方として整理されています。
【先発者】
・いち早く製品開発に関わった者
・利点
①消費者の心の中に参入障壁を形成可能
②経験効果を得られる。特定の製品カテゴリにいち早く関わった先発者はより多くの経験やノウハウを蓄えられる分生産コストをより低く抑えられる
③うま味のある市場(ex.新しいものに抵抗が無く価格にもさほど敏感でない消費者層)を獲得可能
他にも、製品規格を決めやすい点、生産に関する希少資源を先取りできる点、利用者の生の声をいち早く得られる点などがある
【後発者】
・他者よりも遅れて製品開発へ携わった者
・利点
①需要の不確実性を見極められる点(先発者によって開拓された市場がきちんと成長するかどうかを判断しながら設備投資を進められるため、先発者に起こりうるような失敗を避けられるはず)
②研究開発やプロモーションに要するコストが少なくなる点
③消費者の変化に対応しやすい点(先発者においては、当初の消費者のタイプに固執してしまい、従来のやり方を上手く変えられない事態が生じうるため)

【2】単独開発と共同開発
参入順位に加えて、自らの組織だけで作るのか(単独開発)他の組織とともに作るのか(共同開発)という検討も必要になってきます。
【単独開発】
・ニーズ志向で行くかシーズ志向で行くかといった判断が重要
・マーケティングでは従来より消費者調査を重んじてきており、調査によって明らかになった要望・不満等を製品開発へ活かしていくニーズ志向の在り方が注目されてきた
・しかし、市場が成熟してくると、欲しい物をはっきり自覚できるような消費者が次第に減少。製品開発に行かせるアイデアを消費者からくみ上げていくのも困難になるため、自らの組織が持っている技術やノウハウを大事にしようとするシーズ志向の動きが強まってくる
【共同開発】
・パートナーとなる組織の違いによっていくつかの開発形態が考えられる
垂直的共同開発:チャネル段階が異なる組織同士で進められる(ex.コンビニと食品メーカーの協力開発)
水平的共同開発:チャネル段階が等しい組織同士で進められる。業種の違いにより、同業種共同開発(ex.複数自動車メーカーが1つの自動車を開発)と異業種共同開発(ex.PCメーカーと音響機器メーカーが大型スピーカー搭載のデスクトップPCを開発)に分かれる
・先述のニーズ志向とシーズ志向の判断も勿論重要であるが、組織間における技術やチャネルなどの補完性、文化・理念・目標等の適合性、互いの関係を維持しようとするコミットメントの在り方も検討すべき

【3】新製品開発のプロセス
通常、新製品は、
①アイデアの探索と創出(新製品の為のアイデアが収集され整えられる。組織内からはトップマネジメント、販売部員や製造部員、店頭から挙がってくるPOSデータから。組織外では消費者、取引先、業界紙、競合他社の製品、企画提供者などからアイデアが集められる)

②スクリーニング(収集されたアイデアを取捨選択。組織目標や標的顧客などを念頭に置いてアイデアの良し悪しを振り分け)

③事業性の分析(定性的分析(消費者の選好調査、新製品の特長を定める、市場における新製品のポジショニングを検討できるように)と共に定量的分析(投資収益率)がなされる)

④開発(新製品のプロトタイプを作成する段階。整えられたコンセプトを具体的な製品属性へと落とし込む作業が一番困難。技術担当者やマーケティング担当者などが部門の壁を越えて交渉する機会も増えてくるため、意見を調整するだけの時間や労力が求められるようになる)

⑤テスト(実際の市場や実験室を用いて実行。全国レベルで販売する前に特定の地域や場所を使ってプロトタイプの成果を確かめておけば、新製品が好ましい反応を得られない場合であっても全国レベルの失敗は避けられる筈(=リスク回避)。価格戦略やプロモーション戦略の手掛かりを得ようとする前向きな目的で実施される例もある)

⑥市場導入(テスト結果を踏まえて調整された後、見込みのある新製品が導入される時期。市場において機運が高まっており、競合製品との兼ね合いから見ても好ましいタイミングの中で導入されるべき。実際に、市場が上手く確立していないタイミングで導入されて失敗してしまった製品も見受けられている)

当節では、新製品の開発スピードを左右する要因としての、アプローチの違いに関しても紹介されています。
紹介されているのは下記4種類。
●リレー型アプローチ
新製品開発において従来より知られている、開発プロセスラインの段階ごとに組織内の役割分担がはっきり示されるアプローチ
・特定の段階を任された部門やグループがその段階の中で生じた問題をすべて解決した後、次段階担当部門やグループへと作業を引き継ぐ
・各部門・グループの役割は明らかに区分され、開発プロセスが直列的に進む
●ラグビー型アプローチ
・プロセス各段階を互いに独立させるのではなく重複させながら、いくつかの部門やグループを開発期間の始めから終わりまでほとんど同時期に活動させるやり方
・各段階が並行して進んでいくため、新製品を生み出すための開発期間がずっと短くなる
●単純重複型アプローチ
・リレー型と類似しているものの、各段階を少しずつオーバーラップさせる点で異なる
・開発作業を次段階へと預けていくのにデッドタイムが生じない分開発期間は短くなり、異部門・グループの間で食い違いが生じたとしてもラグビー型アプローチよりは少ない時間と労力の下で調整が進められる
・短縮される時間こそ相対的に小さいが、様々な開発の中で採用しやすいアプローチ
●短縮連鎖型アプローチ
各段階に要する時間が少なくなり、鎖のようにつなげられていく
・開発作業は段階ごとにオーバーラップしないため、複数の部門・グループは其々与えられた役割に専念可能
・ただし段階ごとの作業時間がしっかり管理される分、開発途上で起こりうる新しいアイデアや修正のリクエストには対応しにくくなる

■3 製品ライフ・サイクル

【製品ライフサイクル;PLC(Product Life Cycle)】
・製品を人間の一生になぞらえた概念。人間の人生の段階のように、市場へ送り出された製品も4段階を踏みながら市場へ消えていくと考えられる
・一般的に導入期、成長期、成熟期、衰退期の4段階で良く説明される
・各段階の特徴とマーケティングミックスに関して下記にまとめた
●導入期:
・新製品が初めて送り出された段階であり、市場の中で製品のベネフィットがしっかり理解されていないので売上高は低レベルにとどまってしまう
・利益高も新製品開発に要する設備投資や多大なプロモーション費用の為にマイナス
新製品浸透の為のプロモーション戦略に主眼が置かれる
ex.マス広告によるブランド知名度向上、消費者向けSPによる試用促進、流通業者向けSPによる販路におけるブランドの取り扱いを増やしてもらうといった試み等
・製品戦略としては市場の反応に従って若干の品質調整がなされる
●成長期:
・市場が大きく膨らみ、生産コスト低下に伴う値下げなどによって売上高が急速に伸びる
・利益高も同様に上昇するが、当段階後半ではブランド間競争が激しくなり各種コストが高まる影響もあってか利益高は早くもピークを迎える
・市場シェア拡大の為、導入期以上の規模のプロモーションが求められる。競合に負けないだけのブランドロイヤリティ育成が要点
・最寄品に関しては値下げ、ストアカバレッジの最大化のための流通戦略が用いられる
●成熟期
・売上高の伸びが鈍り始めて利益高も下降
・新規購入よりも買い替えや買い増しが主流となり、自社ブランドのシェアを高めるために他社ブランドのシェアを奪取せねばならない
・競争はますます激しくなるので、良い成果を上げられずに市場から撤退していく組織も現れる
・引き続きブランドロイヤリティ向上のための戦略が進められるが、製品特徴を訴える理性的表現よりも製品イメージを伝える感性的表現が主
・競合ブランドにはないユニークなポジションの確立が狙い
●衰退期
・売上高・利益高がともに減少する段階
・衰退を招く要因:技術発展、トレンド変化、政府規制、海外からの競争圧力など
・売上高減少が必ずしも衰退期だけを意味しない。売上高は不適切なマーケティングの下で減少する場合があるため、売上低下に向き合う担当者はその原因を細かに探り、成熟期をさらに伸ばすような延命策やライフサイクルを成長期へと若返らせる工夫などが求められる
・ブランドの全面的モデルチェンジないし市場からの撤退を検討せねばならない。前者は単なる改良にとどまらず何等かのイノベーションを伴った修正が求められ、市場におけるポジショニング変更の可能性も考えるべき。後者の場合、所謂収穫戦略の下で追加投資をせずに最大限の利益を搾り取っていく方法が優先される

上記PLCとは別に、
●かつて流行した製品がいくらかの期間を置いて再び流行する
●短期のうちに流行して早期に廃れる
ケースがございます。
筆者は、前者をスタイル、後者をファッドと区別しています。
【スタイル】飲食物、アパレル、娯楽などにおいて特定の製品が流行ったり廃れたりしながら何世代にもわたって続いて行く様子
【ファッド】市場へ投入されてから熱狂的に受容されるものの、流行のピークへ達してしまった後は急速に廃れていく様子(ex.音楽チャート)
他にも、担当者の視点からすれば、ライフサイクルを計画的に短縮させ、新たな需要を得るのが功を奏す場合(ex.ミラーレスカメラや携帯電話)もあり、『計画的陳腐化』と呼ばれています。
継続した成長の為計画的陳腐化によって定期的に売上を上げるのが得策ですが、行き過ぎた実行によって資源の浪費や旧製品の処理やリサイクルを怠ったりするような事態を避けるべき、と最後に筆者は警鐘しています。

■問題集より

問題集のテーマ⑤「製品戦略」に上記内容が掲載されていますが、
他にも、ロジャースの提唱したイノベーション普及理論に関する問題も取り上げられていました。
新商品購入に関する顧客層を5タイプに分類している、とのこと。
●イノベーター(全体の2.5%)
・新商品が市場に投入されてから真っ先に食らいつく層
・商品の目新しさだけで購入しているため、商品評価は定まっていない
・発売当初値引きが行われていないため、この層には富裕層が多いとされる
●アーリーアダプター(全体の13.5%)
・新商品投入から時間が経つと現れる層。流行に敏感であり、自ら情報収集を行ったうえで購入する
・また他消費層への影響力が大きく、オピニオンリーダーとも呼ばれる
(ロジャースの「普及率16%の論理」)
・イノベーター・アーリーアダプター合計で16%しかおらず、この2タイプで普及するか否かが次のアーリーマジョリティ、レイトマジョリティに広がるか否かの分岐点(キャズム)となる
●アーリーマジョリティ(全体の34%)
・新しい技術や商品の購入に慎重な姿勢を見せるが、リスクが減ったタイミングで価値判断して購入を決める層
●レイトマジョリティ(全体の34%)
・新商品の購入に慎重で懐疑的であるため、アーリーマジョリティより購入が遅く、周囲の人達が購入したり試したりする状況を見てから判断する層
・この時期になると普及速度は急速に落ちてくる
●ラガード(全体の16%)
・世の中の動きに関心が薄く、新製品やイノベーションを受け入れずにいる層。多数の人たちが購入したにもかかわらず、最後まで購入を決めかねている

■総括

4Pの一つである、製品戦略の特徴や製品開発の考え方について紹介してきました。
また、製品ライフサイクルの特徴と各時期に合わせたプロモーションの考え方も学習していきました。


では、また。