【読書記録📚】ベーシック・マーケティング【第11章 サービス・マーケティング】

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投稿にあたって
序章
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
第7章
第8章
第9章
第10章
●第11章(当記事)
マーケティング検定3級受験感想

こんにちは。
Remsyです。

第11章「サービス・マーケティング」の感想です。
(全てネタバレ注意)

■章概要

当章では、サービスを取り上げ、
単なるモノとの相違点、サービス固有のマーケティング上の課題について詳述されています。

■事例

某世界的自動車メーカーのカーシェアリング事業参入に関して取り上げられています。
カーシェアリングは全国約5000店舗で約4万台を使える一方、
新車販売台数が減少するという諸刃の剣ではございますが、
当該メーカーは、
●「所有から使用へ」「所有から共有へ」の消費構造の変化による国内市場縮小
●AI技術などの相次ぐ技術革新による自動車業界の変化
という背景もあって、カーシェア事業に乗り出しました。
社長曰く、当該メーカーのポジショニングを「自動車を作る会社」から「移動に関わるあらゆるサービスを提供するモビリティカンパニー」に変更するとのこと。
当該メーカーは、販売店や外部の有力MaaS(Mobility as a Service)事業者と連携しつつ、ライドシェア、個人向けカーリースなどのモビリティサービスの展開を加速するようになりました。
上記の挑戦が当該メーカーのマーケティングをどう変えていくのか、今後が注目されるような文章で締めております。

■1 サービスとは何か

当節の題にもございますとおり、
サービスとは?という定義・概念の説明となります。
サービスの概念は、接客サービスや値引きなど、非常に身近で通俗的に多様な意味を持つがゆえに、その用法に混乱が見られることも少なくないのですが、上記の内容はあくまでも通俗的な物。
サービスマーケティングと言った場合のサービスは、これらのいずれとも異なります。

サービスマーケティング論でのサービスの定義は、下記の通り。

「ある経済主体が他の経済主体の欲求を充足させるために、市場取引を通じて他の経済主体そのものの位相、ないしは、他の経済主体が使用・消費するモノの位相を変化させる活動(行為)そのもの(上原,1999)」

ポイントは、
①サービスを売買の対象つまり商品扱い。接客、おまけ、値引きと言った通俗的な意味でのサービスとは区別される
②サービスを活動そのものとする点で、有形のモノとは明確に区別される。「売買される活動」としてのサービスは、美容院でのカット・パーマ、タクシーの運転手による運転、という活動を考えると分かりやすい

しかし、サービスマーケティング論において、これとは少し違う意味でサービスを捉える場合もあるので、注意が必要。

久保田・芳賀によりますと、
価値の源泉としての財と売買の対象を掛け合わせた、
商品には5つの要素がある、とのこと。
価値の財源としての財は、有形物、情報、サービスがあり、
売買の対象は所有権と使用権があるとのこと。
ここでのサービス使用権は、「売買される活動」としてのサービスですが、実際我々消費者はこの「売買される活動」のみ購入することは少ないとのこと。
例えば、我々が飲食店にて食事する場合…
・飲食店にて物理的実体を持つ料理を購入し頂く・・・有形物所有権
・什器、テーブル、椅子、店舗そのもの・・・有形物使用権
・調理、配膳・・・サービス使用権
を購入しているのです。
つまり、上記はサービス使用権を含むいくつかの要素からなるパッケージであり、このパッケージに対して支払いが行われているとのこと。
上記の「様々な要素からなるパッケージ」という商品の捉え方は、サービスマーケティング論において、サービスパッケージモデル、分子論モデル等と呼ばれており、様々な商品に適用されているのです。

しかし、サービス概念をパッケージとしての商品のレベルで考える時は、若干の注意が必要なので、注意点を列挙致しました。
●有形物所有権以外の要素が占める割合の大きい商品をサービスと呼ぶ
⇒有形物所有権が含まれることもあれば、サービス使用権があまり含まれないこともある
●サービスと呼ばれる商品に有形物の所有権や使用権が含まれることには、有形物とサービスの違いを相対的なものにする
⇒商品には有形物的な商品とサービス的な商品があり、その違いは程度の差でしかないということ。実際に有形物とサービスは連続的であるという考え方もある
⇒したがってこのようなサービス概念は、サービス固有のマーケティングの特徴を検討する際にはあまり有効ではない

また、「サービス」商品に、サービス使用権があまり含まれないことがあるということは、「売買される活動」としてのサービスとの区別を明確にすることの重要性を教えてくれるのです。
当節では、最近のビジネスホテルを例として、チェックイン/チェックアウトをセルフで行い、従業員との接点が殆どないことを踏まえ、
次節で述べる「無形性」「協調性」といった重要なサービスの基本特性を備えていないと指摘したうえで、
従来サービスマーケティング論で蓄積されてきた考え方や理論を適用不可能ことも少なくない、と指摘。
パッケージとしての商品レベルでのサービスと売買される活動としてのサービスをきちんと区別する必要があるのは、このため。

■2 サービス・マーケティングの特徴と戦略

当節では、サービスの持つ特性からサービスマーケティングの特徴を明らかにしたうえで、サービスのマーケティング戦略の基本的な枠組みが説明されています。

サービスの基本特性は下記3点。
①無形性
・情報にも共通する特性であり、物理的形状を持たない。そのマーケティングを考えるうえで非常に重要な意味を持つ
・購入に先立ち消費者が見たり、触れたりすることによってその品質評価が困難。
しかし、それがいくら困難でも消費者はサービス購入に当たりその品質評価を必ず行っている筈
・消費者によるサービス評価方法
結果品質:サービス消費によってもたらされる効果や結果の質(ex.飲食店なら料理のおいしさ、テーマパークなら各種アトラクションの満足度)
※有形物の場合結果品質を購入前に判断できる場合が少なくない(判断品質)
経験品質:料理店のように料理がおいしいかどうかは実際摂食しないと分からない
信頼品質:病院のように診療後でも病気が良くなったかどうかわからない
過程品質:結果品質が事前にわからない場合、消費者は提供サービスそのものではなく、その提供過程を手掛かりにして品質判断を行うことが明らかにされている(ex.病院での医療サービス提供過程)
・サービスの結果は消費者がそのサービス購入目的そのものなので、結果品質が重要であるということは言うまでもないが、(特に結果品質の判断力が低い)消費者に選ばれたり、満足してもらうためには過程品質も充実させる必要がある
②品質の変動性
・有形物の品質は標準化可能であるが、サービスの品質は人によってばらつきが出てしまう(ex.美容室、介護サービス)
・一方、人間の活動には品質のばらつきと言う悪い面ばかりではなく、「柔軟な対応」という良い面もあることも忘れてはいけない。実際、消費者はマニュアル通りの接客に冷たさを感じ、機転野利いた臨機応変な接客には感激する面がある。標準化(=マニュアル化)か個別化か、或いはそれらをどう組み合わせるかという問題はサービスマーケティングにおいて避けて通れない意思決定課題
③協働性
・サービスは生産と消費を切り離して行えない
・上記特性が、そのマーケティングマネジメントにサービス固有の2つの課題を齎す:
①需要量変動に在庫で対処不可能
⇒在庫以外の方法、つまり需要量or供給量を直接変化させる工夫によって需給調整を行う
②サービス生産と消費が一体化しているがゆえに、そのサービスの成果に消費者の行動が直接影響を及ぼす
⇒この意味でサービスは売り手によって独立に生産される(ex.缶コーヒーなどの有形物)のではなく、買い手との協働(ex.美容室での美容サービス、教育サービスは受講生の受講態度が成果を大きく左右)によって生産されるもの
・従って、サービス提供過程の中で、買い手・売り手相互に方向付ける必要がある。この相互に方向づけを行う関係は、買い手の欲求充足と言う共通目標に向けて行われるという意味で協働関係であり、この協働関係の中でサービスの生産と消費が完結するため、協働関係の構築こそがサービスマーケティングの最も重要な課題と言える
・従って、協働関係の構築が、サービスマーケティングの具体的展開方法、つまりサービスのマーケティング戦略の基本的枠組みとなる

サービスのマーケティング戦略の基本的枠組みは、共同関係の構築という観点から2次元でサービスを分類したものです(上原,1999)。
【買い手との関係づくりの手続きに関する分類】
・ルール型、プロセス型に分かれ、品質の変動性とサービス特性を見たときに述べたサービスの標準化と個別化に其々対応
●ルール型サービス(ex.学校)
・予めルールを設定し、それによって協働関係を事前に特定したうえで提供される
●プロセス型サービス(ex.家庭教師)
・厳密なルールを設定せず、状況に応じた柔軟な協働関係の中で提供される
【関係の範囲に関する分類】
●クラブ型サービス(ex.会員制クラブ、各種学校)
・特定の買い手との長期的関係の中で提供される
●オープン型サービス(ex.飲食店、映画館)
・不特定多数の買い手と単発的に関係を構築して提供される
上記分類をマトリクス状に組み合わせることによって、具体的なサービス提供方法としての、マーケティング戦略の基本的枠組みが得られるのです。
p.250の図11-4には、サービスマーケティング戦略の4つの類型と、其々の焦点課題が示されています。
ここで重要なのが、サービスの内容や業種によってあらかじめ取るべき戦略が決まっているわけではないとのこと。
実際、教育サービスには、ルール・クラブ型の大学・専門学校もあれば、プロセス・クラブ型の家庭教師もあり、ルール・オープン型のエキナカ英会話教室もあったり、現在ルール・オープン型が主流のファストフード店でも今後プロセス・オープン型の業態も登場するかもしれないのです。
サービスのマーケティング戦略はこのような創造的意思決定であり、その着想の起点としてこの枠組みは非常に有効とのこと。

■3 サービス・マーケティングと顧客満足

1990年代前後から、マーケティングにおける顧客満足(CS)の重要性が改めてクローズアップされるようになりました。
これは、多くの市場が成熟する中で、新規顧客の獲得よりも既存顧客の維持の重要性が高まり、こきゃう維持の手段としてCS向上の必要が認識されるようになったため。
CSは単なるマーケティング理念ではなく、もはや避けては通れない実践課題となりました。
このCS向上という課題の通級の中で、サービスマーケティング研究は、CS研究と相互に影響し合いながら新たな考え方を生み出してきたのです。
当項では、
サービスエンカウンターと、サービスプロフィットチェーンの2つの考え方を取り上げています。

【サービスエンカウンター】
・エンカウンター:出会い、遭遇といった意味
・サービスエンカウンター:顧客がサービスに直接触れる場面
・概念が注目されるようになったきっかけが、北欧の航空会社社長を務めていたJ・カールソン氏の著書で有名になった「moments of truth」の考え方
・カールソン氏は「moments of truth」を顧客の心をつかむ瞬間と言う意味で用いた
・顧客が従業員と接触する15秒間を「決定的瞬間=サービスエンカウンター」として捉え、この積み重ねがCSや企業イメージの基礎になることと、サービスの品質評価が、その提供過程についても行われるという事を思い出せば納得できるであろう、と筆者
・優れたサービスエンカウンターは、接客員が顧客との短い接触時間の中で、素早く、的確に、親身になって対応することにより作り出される。接客員がこうした顧客体を打を出来るようにするには、優れた人材の採用・育成も重要であるが、そのうえで接客員が自ら適切な判断を下して即座に行動できるよう、エンパワーメント(権威移譲)も重要

【サービスプロフィットチェーン】
・○顧客に大きな満足を与えることにより、高い顧客ロイヤルティを確保することが企業の収益性や成長性を向上させる
○顧客を満足させる価値の高いサービス提供の為、高度顧客対応能力を持つ従業員が不可欠
○高度な顧客対応能力を持つ従業員の確保の為、まず従業員満足(ES)が必要
○満足した従業員は意欲的に仕事に取り組むため生産性が高く、高い定着率によって顧客対応スキルやノウハウを高める、
という考え方を結びつけたもの
・このように、サービスマーケティングは人的資源管理と密接に結びついている

【サービストライアングル】
・サービスマーケティングのマーケティングマネジメントには、伝統的アプローチつまりマーケティングミックスによる顧客対応以上のものが必要となることを示したもの
・企業、顧客、従業員を、3つのマーケティングで結びつける
・エクスターナルマーケティング:マーケティングミックスによって顧客対応を図る従来のマーケティング
・インターナルマーケティング:ES創出、顧客志向実践マーケティング
・インタラクティブマーケティング:従業員と顧客の相互作用を操作するマーケティング。具体的内容として、従業員の顧客への接し方の管理や相互作用の場の雰囲気づくりに加え、顧客の活動を望ましい方向に誘導するためのルールを提示したり、場合によっては教育したりすることも含む
・筆者曰く、サービスマーケティング成功の為、この3領域を統合的にマネジメントし、全体最適が達成されなければならない事であり、サービス企業にとってはまさに全社的取り組みによってはじめて可能になる、とのこと

■総括

以上、サービス特有のマーケティング論について深堀りしてきました。
具体的に、売買される活動としてのサービスやパッケージ商品としてのサービスの考え方、サービスの基本的特性(無形性、品質変動性、協働性)を踏まえた具体的なマーケティング戦略のみならず、CS(顧客満足)と関連したサービス品質向上の考え方について学ぶことができました。
現在の我が国の産業構造としてサービス業をメインにした第3次産業が主となっており、私もサービス業に携わる身として、サービスマーケティング構造や顧客満足、従業員満足を働きながらより多く学習していきたいと思うようになりました。

では、また。