【読書記録📚】ベーシック・マーケティング【第3章 マーケティング・マネジメントの基礎】

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投稿にあたって
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第1章
第2章
●第3章(当記事)
第4章
第5章
第6章
第7章
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第9章
第10章
第11章
マーケティング検定3級受験感想

こんにちは。
Remsyです。

第3章「マーケティング・マネジメントの基礎」の感想です。

■章概要

当章では、標的顧客と提供価値を定める際の課題に関する検討をしていきます。
「戦略」は元々軍事用語。要諦は、「どのように戦うかを決めること」ではなく、「戦場を選ぶこと」にあると言われます。
マーケティングにも当てはまり、つまり「製品(サービス)をどう売るか」を考える前に、「我が社が対応すべき顧客は誰か」、そして「その標的顧客に何を(どのような価値を)提供するか」という問いに答えねばなりません。

■事例

大阪にある某遊園地の集客V字回復に関する事例。
その経緯は下記。
●2001年開業、来場者数1,100万人超

●翌年以降来場者数が700万~900万人と減少

●社内外にて来場者数減少について「ポジショニング(提供価値)のブレ」と指摘:映画専門テーマパークなのに映画と無関連のコンテンツを相次いで導入したせいでテーマ性がぼやけてしまったという説

●2010年入社の社員が、来場者数減について、映画関連のコンテンツ提供という無意味な拘りが、映画ファン以外の顧客層の来場機会を著しく狭め、それがかえって業績悪化を招いていると分析

●来場者数回復の為、
「映画専門テーマパーク」ではなく、
「エンターテイメントのセレクトショップ」
と自らポジション変更!
映画ファンを越えた幅広い顧客層に最高品質の感動を提供するという方針を採ることに
(映画ファンは限られており彼らの来場収入だけではパーク維持費を賄えない、来場者数回復を見込めないため)

●上記方針に基づきキャラクターや漫画・アニメコンテンツを積極活用

●家族連れや非関西圏、海外顧客をカバーできるように

●来場者数が順調に回復、2013年に1,000万人の大台に再び乗り、2016年度には1,400万人突破!

■1 マーケティングのSTP

今日、多くの業界において新製品が絶えず開発され、その販売を支援するために、大量の情報がマスメディア等を通じて顧客に提供されております。
このように製品と情報が溢れかえった市場の中にあって、自社製品が自然に売られていく状態=「売れる仕組み」を作り出すこと、これがマーケティングに課せられた中核的ミッション。
売れる仕組みを構築する際のポイントは下記3点。
①自社製品のユニークなイメージを、顧客の頭の中に刻み込む
②自社が対応する顧客層を明確に定める
③自社が向き合う既存顧客や潜在顧客の塊を、そのニーズの異同に応じて幾つかのグループに細分化
そもそも顧客層を絞り込むという作業は、「顧客のニーズは多様である」という前提があって初めて意味を持ちます。
ニーズが多様であるからこそ、「ある顧客に高く評価される価値が、他の顧客には全く評価されない」ことが起こり得るし、「万人受けを狙うとかえって全顧客っからの支持を失う」という事態も発生しうるのです。
例えば、掃除機の場合。
吸引力重視の顧客もいたり、静粛性を重視する顧客、掃除の手間削減を重視する顧客…
企業は、そういったニーズの違いに着目して、市場全体をいくつかの下位グループに分割し、自らの対応する顧客層を選択せねばなりません。

以上の説明を踏まえて、製品レベルのマーケティングの大枠を整理します。
STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)の検討となります。
顧客を自社製品に引き付けるため、自社製品の独自のイメージないしは価値を定め、それを顧客の頭の中に植え付けます(ポジショニング)。
そして、強固なポジション確率の為、マーケティング努力を注ぐべき標的顧客を明確に定めるターゲティングが必要不可欠となります。
ポジショニングとターゲティングは一見類似するもの、意味は全く異なるもの。
○ポジショニング:顧客の視点から自社製品がどう見えるかを考え、それを操作する
○ターゲティング:企業視点に立ってどの顧客に対応するかを決定する
さらに、自社ターゲット顧客選定の際、既存顧客や潜在顧客を、ニーズの異同に応じて複数セグメント(下位グループ)に分割する作業(セグメンテーション)が必要となります。
尚、当節では便宜上、ポジショニング⇒ターゲティング⇒セグメンテーションの順に紹介されていますが、
実際、セグメンテーション⇒ターゲティング⇒ポジショニングの順序で検討することが一般的。
次節からSTPそれぞれの意義、手順、留意点を紹介していきます。

■2 セグメンテーション

【意義】
・顧客各々が異質なニーズを持っている場合の対応方法について…
①顧客一人一人の個別ニーズにフィットした製品の提供
この方法は、各顧客の満足度を高めるうえで魅力的であるが、その実行は困難。というのも、顧客ごとに仕様を変えて製品を作ると、高コスト、顧客が購入を断念するほどの高価格設定をしないと、利益が生まれないため
②ニーズの違いではなく、その共通性に注目して、全顧客ニーズを部分的に満たす1つの製品を提供
・上記2つの方法から見えてくるのは、
一般的に「ニーズの充足」と「生産効率」はトレードオフの関係にある、
という事実。
⇒個別ニーズの充足を追求すれば生産効率が低下するし、反対に生産効率を優先すると個別ニーズ充足が犠牲になってしまう!
・ただ、企業にはこのトレードオフを緩和できる第3の方法あり!
③「ニーズが似通った顧客層」を識別し、それにフィットする製品を提供する
・厳密にいえば、顧客ニーズは一人ひとり異なるもの。しかし実際のところ、全顧客ニーズが全くバラバラに存在するわけではなく、むしろ世の中には「同一ニーズを持つ顧客が一定する存在する」と考えた方が自然!
⇒それ故同一ニーズを持つ顧客層(セグメント)を上手く抽出できれば、その顧客層固有のニーズにフィットした製品の提供が可能になるし、また一定の市場規模が見込めるために、一人一人の顧客にカスタマイズするよりも、生産効率を高められる!
・セグメンテーション:ニーズ充足と生産効率を両立させるための有効な手法

【手順】
・セグメンテーションの起点は、顧客ニーズにあり。
即ち、自社の既存顧客や潜在顧客のニーズを見つめ、その違いや多様性を把握することが第一歩
・しかし、ニーズの違いそのものは目に見えない
⇒「顧客間のニーズの異同を浮き彫りにする境界線」の識別が必要
・ニーズの違いは顧客の性別・年齢・ライフスタイルと言った軸を用いることで可視化可能
・一般的に、下記4変数が用いられる
○地理的変数(地域、気候等)
○人口統計的変数(年齢、性別、世帯規模等)
○心理的変数(ライフスタイル、パーソナリティ)
○行動的変数(ベネフィット、使用頻度、ロイヤルティの強さ)

【留意点】
①セグメンテーションが、その後に控えたターゲティングやポジショニングに役立つように実行できているか
効果的なセグメンテーションの一般的基準としては以下5点。
1.測定可能性:各セグメントの規模や購買力が測定できること
2.利益確保可能性:各セグメントが、それに適合したマーケティングプログラムを使って対応するのに値するだけの規模・収益性を備えている事
3.接近可能性:各セグメントの顧客にアクセスし、製品や情報を送り届けることが可能であること
4.差別化可能性:同じセグメント内で異なるニーズを持つ顧客が存在したり、異なるセグメント間で同じニーズを持つ顧客が混在したりしないこと
5.実行可能性:各セグメントに対応するための、効果的なマーケティングプログラムの設計・実行
②あくまでもニーズの違いを起点に考える事
ex.ある製品の顧客を年齢と性別の2軸に分類し、「セグメントめいたもの」を創出すると…
実際ある年代の男女のニーズは殆ど一緒かもしれない、
或いは性別によりニーズは異なるも年齢はニーズの違いと無関係かもしれない、
また場合によっては、年齢・性別という軸が顧客ニーズの違いを浮き彫りにするうえで全く役立たずかもしれない
ニーズの違いを無視した「変数ありきのセグメンテーション」は無意味であり、時に有害ですらある。
セグメンテーションは、あくまでも顧客間のニーズの違いを出発点として、
「目に見えないニーズの違いは、どのような変数を用いれば、上手く可視化できるか」を考えることであり、その意味でかなりの創造性を要する作業

■3 ターゲティング

【意義】
・ターゲティング:セグメンテーションを踏まえて、自社が対応する標的セグメントを定めること
・意義は以下2点
①「ターゲットを定めることで、自社が応えるべきニーズや提供すべき価値が明確になる」
○ターゲットをきちんと定めないと、自社が対応しようとする顧客の顔とニーズが見えなくなる。そうなると、「とにかく安い物を造ろう」とか「とにかく品質を高めよう」という漠然とした方針を掲げざるを得なくなり、結果として製品イメージや提供価値がぼやけてしまう
○上記自体回避の為、顧客ニーズの深い理解と集中的な対応が必要となり、事前にターゲットを明確に定めておく必要性が生じる
②「企業の限られた資源を効果的・効率的に使うことができる」
○企業はSTP作業が完了すると、次に製品の仕様や価格、販売ルートやプロモーションの内容(マーケティングミックス)を決定するステージに移行するが、その際ターゲットが明確に定まっていないと、製品の特長がぼやけるだけでなく、販売やプロモーションに投下される資源が分散してしまう
・顧客は、製品に対して其々異なるニーズを持つだけでなく、製品や製品情報の入手ルートも異なっている
⇒そのため、ターゲットが明確に定まっていないと、彼らに幅広く対応するために、利用する販売ルートやメディアを増やさざるをえない
⇒その結果、各販売ルートに投下できる営業部隊や、各メディアに投入可能な予算が小さくなり。、マーケティング努力の成果が著しく低下
・反対に、ターゲットが明確に設定できていれば、そのターゲット固有の買物行動や情報収集行動に合わせて、自社の販売ルートやコミュニケーション・ルートを絞り込み、そこに限られた経営資源を集中投入することが可能になる
・ターゲティング:どの顧客のニーズに応えるかという「注意の焦点化」と、経営資源の分散投入を防ぐ「努力の集中化」を促す役割を担っている

【手順】
・ターゲティングに際し、識別された各セグメントの規模・成長性や、他社との競合状況を評価せねばならない
・上記評価の為の簡便な方法:
「需要を増やせそうなセグメント」や「自社が取りこぼしているセグメント」を、複数の切り口を用いて発見する
・加えてターゲット・セグメントを選択する際、自社内部の事情を考慮することも必要。企業全体や各事業部の目標・ミッション、利用可能な経営資源、得意とする分野と苦手な分野(強みと弱み)を把握せねば自社に有利な戦場設定が困難に
・これらの点を把握するには、3C分析、SWOT分析が有用

【留意点】
・目標達成に照らしてターゲットが小さくなり過ぎないように注意すべき
・例えば当章冒頭のケースにおいて、
在阪某遊園地が映画ファンを超えた幅広い顧客層をターゲットに含めることで、業績低迷の打開を図ったが、
その意思決定を支えたのは…?
①「映画ファン」セグメントの規模があまりにも小さく、それだけでは売上・来場者数の目標達成不可能
②「子連れファミリー」セグメントの来場者数が少なく、そこに需要創出の余地がある
③多様なセグメントをターゲットに含めるとコンセプトがぼやけたり、在京某公園との差別化が困難になる懸念があることから、「最高品質の感動」というエンターテインメント全体に跨る高次の価値に焦点を合わせることで、コンセプトのブレを抑制
④年ごとに異なるセグメントをターゲットにしたアトラクション増設、イベント開催、というように、時間差をうまく利用した、メリハリの効いた経営資源の投入が可能になる
⑤在阪某遊園地は、在京のそれとは空間的に離れているため、実際のところ競合度は弱い
以上の事例は、ターゲットを一つのセグメントだけに絞り込む必要はなく、複数のセグメントを同時に標的とすることも可能であることを示している
・但し、複数セグメントを標的とする場合、セグメント間のコンフリクト(対立)に注意せねばならない
・一般的に、セグメント間ニーズが大きく異なったり、セグメント間でコンフリクトが発生しうる場合には、セグメントごとに別ブランドを用意したり、其々のニーズに合わせた製品ラインを提供すべき

■4 ポジショング

【意義】
・ポジショニング:自社製品の独自のイメージないしは価値を定め、それを顧客を頭の中に植え付けること(=「顧客の立場から自社製品がどう見えるか」の操作)
・マーケティングにおいてポジショニングが重視される理由⇒「自社製品と競合他社製品からどう差別化するか」という問題にかかわるから
・先述の通り、セグメンテーションとターゲティングを上手く実行できれば、企業は魅力的なセグメントに到達可能であるが、自社にとって魅力的なセグメントは、他者にとっても魅力的であるから、当該セグメントの顧客獲得を巡る競争は激化してしまう。
・そしてこの時、他社との競争を有利に進めるためには、自社製品の差別化、つまりは「自社製品に代わる製品はない」と顧客に認識してもらうことが必要になる
・だからこそ、顧客の頭の中に自社製品のユニークなイメージや提供価値を植え込むポジショニングが重要になる

【手順】
・強固なポジションを築くための最も強力な方法は、業界のパイオニアかリーダーのいずれか(あるいは両方)になること
・業界を「最初に」切り開いた製品や、業界の「最大の」シェアを誇る製品は、ブランドの名前、イメージ、そして提供価値を、顧客の頭の中に容易に刻み込むことが可能。「第1位」という事実それ自体が、独自のポジションを支える強固な足場となり、製品の差別化を可能にする
・では、パイオニアでもリーダーでもない製品の場合、どのようにポジショニングを行えばよいか?
○「顧客の頭の中に新たな空白地帯をつくり、そこに1番乗りする」
ex.「朝専用の○○」「世界で最も安全な○○」「NYで最も売れている○○」というように、製品の利用シーン、価値、地域などの新たな軸を設定し、それを顧客の頭の中に植え付けることができれば、その製品は有利なポジションを築くことが可能になる
○上位企業の弱点を突く軸の導入
ex.ある地方銀行Aが都市銀行Bに比べて店舗ネットワークや安心感で劣っている、と顧客に認識されている場合
しかし、Bにも、何らかの弱点があるかもしれない。Aは「スピード」という新たな軸を顧客の頭に埋め込むことが有効となる(勿論、それに合わせてサービスを実際に迅速化できなければならない)
それに成功すれば、「地銀A=スピードが速い」というポジションを獲得できるだけでなく、「都市銀行B=スピードが遅い」というように、競合他社のポジションを自社に有利な方向に変化させることも可能
・加えて、新製品開発や、既存製品のポジション修正の場合には、顧客が知覚している各製品の特長を空間的に示した「知覚マップ」の利用が役立つ
ex.ある顧客が、頭痛薬を「効き目の強さ」と「イに対する負担の少なさ」の2軸で評価
⇒これら2軸の座標の中で、顧客が各製品をどう位置付けているのかがわかれば、ポジショニングの手掛かりが得られやすい
⇒例えば、知覚マップ内で、「効き目が強い」領域には多くの製品が乱立し、反対に「胃に対する負担が非常に小さい」領域が空白になっている状況を考える
当ケースにおいて、「効き目の強さ」に頼って独自のポジションを築くことは困難。他方で、胃に対する負担を格段に下げられる技術があり、かつそのニーズを持つ顧客が一定数存在するのであれば、「胃に対する負担の小ささ」という点で強固なポジションを構築できるかもしれない!
勿論、両軸による差別化が困難だと判断される場合、それらに代わる新たな軸を用意せねばならない

【留意点】
①「提供価値を、シンプルに、エッジを効かせて伝達すること」
顧客は日々、処理しきれないほどの大量の情報に晒されており、その為、どれだけ丁寧に自社製品の価値を説明しても、顧客の関心が低かったり、注意力が低下していたりすれば、その情報は簡単に無視されてしまう。
そうした環境にあって、顧客の頭の中に自社製品を食い込ませるためには、製品固有の価値を出来る限りシンプルな形で伝達せねばならない
②自社の弱みを克服するよりも、「既に顧客に評価されている自らの強み」をさらに強化する方法を検討したほうが良い
顧客が既に持っている認識やイメージを180°変えることは極めて困難。
ex.顧客が自社製品のある機能を低評価
この時、仮に顧客の認識が間違っていたとしても、その機能に関して一度形成された負のイメージを覆すことは困難。
このような場合、むしろポジティブなイメージを獲得できている自社製品の強みに注目し、それを梃子としたポジショニングを検討すべき

■総括

当章では、所謂「売れる仕組み」づくりとして、
STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)の各論の意義・手順・留意点を整理してきました。
○セグメンテーションはニーズ充足と生産効率を両立させる方法である
○ターゲティングはどの顧客のニーズに応えるかという注意の焦点化と経営資源の分散投入を防ぐ努力の集中化を促せる
○ポジショニングは自社製品の独自なイメージを顧客の頭の中に植え込む事
という意義がございますが、
全てむやみに行うのではなく、各々の注意点に沿って行わねばなりません。

では、また。