【読書記録📚】ベーシック・マーケティング【第7章 ブランド戦略】

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投稿にあたって
序章
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
●第7章(当記事)
第8章
第9章
第10章
第11章
マーケティング検定3級受験感想

こんにちは。
Remsyです。


第7章「ブランド戦略」の感想です。
尚、文章終盤には、問題集記載の内容も含みます。
(全てネタバレ注意)

■章概要

多くの製品・ブランドがパリティ(同等・平準)化し、コモディティ(一次産品)化している今日の成熟社会において、企業は、いかにこの2つの壁を打ち破って消費者に価値あるブランドを創造・提供できるかが勝負の分かれ目であるとの傾向があります。
当章では、
①BI(ブランドアイデンティティ)の創造
②BIの伝達
というブランド戦略の2ステップについて、
ターゲットに望まれ、
競合ブランドからも差別的優位性のある成功するブランド戦略の方向性について分析しています。

■事例

某大手菓子メーカーから出ているチョコレート商品が取り上げられてます。
90年代初頭にブームとなった赤ワインに含まれる健康にいいポリフェノールが、チョコレート原料であるカカオにも含まれるということに着目し、メーカーが大学研究室と共同研究に乗り出し、1998年に発売、
初年度は大ヒットをたたきましたが、その後売上が低迷。2006年からカカオポリフェノール含有率を示す%表示をパッケージに表示させると売り上げが回復。
ただ、その後売上低迷の時期があったものの、
2014年には大規模なチョコレート臨床実験が行われてその健康価値が注目された結果、三度売り上げが回復した商品です。
ブランド戦略成功のために、機能的価値と情緒的価値をしっかり作るべきですが、チョコレートなどの嗜好品は、情緒的価値と比較すると機能的価値の創造が困難とのこと。当該商品の二度の売上回復に関しては、上記の通り機能的価値の科学的証拠をしっかり作り上げたことが大きな要因でした。

■1 ブランドとは何か

まずはブランドの歴史を振り返り、
ブランド戦略の対象であるブランドの種類と範囲を特定しましょう。

【ブランドの歴史】(三浦,2008)
●ブランド:古来からある生産者の製品を他の生産者の製品から区別するために用いられてきた名前・シンボル。古代の陶工や石工のマーク、中世の職業別ギルドのマークなどにさかのぼれる(Keller,1998)
●1880年代~:今日のブランド戦略に繋がる製造業者のナショナルブランド(NB)が誕生
その要因:
・全国流通網の整備
・高品質製品の安価大量生産
・パッケージングの進歩(製造業者商標の個装表示)
・米国商標法の改正による商標保護、等
●~1915年:製造業者のNBが地域・全国ベースで全米に定着
●1929年の大恐慌後:市場支配力を持った小売業者が製造業者のNBに代わり独自ブランド(プライベートブランド;PB)を積極的に展開
●1931年:某生活用品大手がブランドマネージャー制を初導入
●1980年代:M&Aブーム。この中で、
a.財務的資産としてのブランドへの注目
b.ブランドの財務的価値向上のための長期的品質・広告投資の必要性認識、等の中、
ブランドへの関心が大いに高まる
●1991年:アーカーのブランド・エクイティ論が発表される

【ブランドの種類と範囲】
企業が持つブランドは、
●製品を区別するための製品ブランド/個別ブランド
●企業を区別するための企業ブランド
●事業を区別するための事業(範囲)ブランド
等があり、NBと呼ばれています。
一方、流通業者のオリジナルブランドは、前出の通りPBや、Private Label(PL)と呼ばれています。
企業のブランド戦略の中核をなすのは、
他社製品の区別と言う識別機能を基本と捉えると、役割別に、
●企業ブランド:エンド-サー(品質保証機能)
●製品(個別)ブランド:ドライバー(購買駆動機能)
の2種類があり、その役割の違いがあることを認識することが重要になります。

■2 ブランド戦略の体系

以下の項では、企業が扱う諸ブランドの中でも、
特に製品ブランド(個別ブランド)に焦点が当たります。

アーカーのブランド・エクイティ論(1991)では、ブランド価値を体系化しております。
まずは、ブランド・エクイティ(BE)について。
●「ブランド、その名前やシンボルと結びついたブランドの資産と負債の集合」と定義
●ブランド認知、知覚品質、ブランド連想、ブランド・ロイヤルティ、パテントマークなどの法律的資産、の5つから構成
●上記概念が提示されたことによって企業の持つブランド価値を包括的に分析する視点ができたが、2番手以下の未だBEを確立し得てない企業にとっては、自社の低いBE水準を如何に上げていくかは大きな課題として残されたまま
そういった実務的課題に対し、アーカーは、
ブランド・アイデンティティ概念(1996)として1つの回答を示したのです。

BI(ブランド・アイデンティティ)について説明しましょう。
●「ブランド戦略作成者が想像したり維持したいと思うブランド連想のユニークな集合」と定義
●消費者の頭の中のイメージ(BE)ではなく、企業が想像したい当該ブランドの目標ないし理想像と考えられる(青木,2000)
●BIが消費者に提案する価値(便益)は、
・機能的価値
・情緒的価値(自己表現的価値を含む)、に大別

では、BEとBIの関係を、下図にまとめてみました。

画像1

BEのブランド認知の基礎として、ID要素が、
ブランドイメージ(知覚品質・ブランド連想)の基礎として、ブランドコンセプト(機能的価値・情緒的価値)があるのです。
このようなBIとBEの構造を前提にしてブランド戦略のステップを考えると、
①BIを創る(ブランドコンセプトと、それを支える機能的価値・情緒的価値、そしてそれらを表すID要素を創る)
②BIを消費者に伝える(消費者の頭の中にブランド認知、ブランドイメージ[知覚品質・ブランド連想]からなるBEを形成)
の2段階で行う必要があります。

■3 BIを創る(ブランド・ビルディングの戦略)

BIを創るためには、まずはSTPにおけるターゲットの確定と、ブランドコンセプトを中核とするBIの確定がまず重要です。
市場細分化戦略に基づき、またペルソナ戦略なども援用しながらターゲットを確定したら、当該ターゲットのニーズを、そのライフスタイルや生活シーンを消費者調査や現場調査・行動観察調査その他の分析によって同定し、彼らのニーズに最適合するBI策定を行うことになります。
上記3点が策定すべきBIの構成要素となります。
一つ一つ見ていきましょう。
・ブランドコンセプト
・機能的価値と情緒的価値
・ID要素(ブランド要素;ネーミング等)

(1)ブランドコンセプト
BIの構成要素の中で最も重要な要素。
ターゲット顧客に対して当該ブランドが提供する価値を表したものであり、顧客への価値提供を約束するものです。
考慮すべき点は顧客と競争の2点。
即ち、そのブランドコンセプトが、
●顧客のニーズや生活シーンに遭ったものであるか否か⇒消費者調査・現場調査で検討・分析
●競合ブランドに比べて差別的優位性を持っているか否か⇒ポジショニング・マップの作成やアクション・マトリクスや戦略キャンパスなどによって検討・分析

(2)機能的価値・情緒的価値
ブランドコンセプトは顧客に約束するものでございますが、言葉だけで実質が伴わなければ誰も相手にしてくれないもの。
従って、ブランドコンセプトを支える機能的価値・情緒的価値を顧客に対して説得力ある形で創り上げないといけないのです。
機能的価値・情緒的価値は、違いがあります。
それは、優劣の客観的判断基準の有無。
機能的価値は、思考型属性の差別的優位性によって表現されますが、優劣の客観的判断基準があることが多いです。
一方、情緒的価値は、感情型属性の差別的優位性によって表現されるものの、それには優劣の客観的判断基準がありません。
結論、感情型属性の差別的優位性に基づいたブランドの情緒的価値の開発・提供は、非常に困難。
優劣の客観的判断基準がある思考型属性は、その基準の中で上位を目指せばよいのですが、感情型属性は基準がございません。どのような方向性で開発すべきかの客観的基準はありません。
この情緒的価値の開発は、今日のブランド戦略においては避けて通れない大変重要な挑戦課題です。
情緒的価値の開発の必要性を示すものとして…
①パリティ化:競合ブランド間の機能的価値の差が無くなっている
②コモディティ化:各社製品がそれぞれのブランド価値を主張しようとしながらも、パリティ化の状況もあり、結果的に各社ブランドとも代わり映えのしない一次産品のような様相を呈していること
が挙がっています。
上記課題に対して、
機能的価値以外で差別化する必要があり、商品のデザインやキャラクター、ストーリー等といった情緒的価値を創造する新たな枠組みが必要になります。

(3)情緒的価値創造の方法
ブランドの情緒的価値開発に向けての研究がいくつか挙がっており、当項では、そのうち4つの方法が紹介されてます。
○経験
○五感
○物語
○コンテクスト

の4種類。

①Schmitt(1999)の経験価値マーケティング
●消費者の消費経験を重視するマーケティング
●現代の高度消費社会において、消費者の製品・サービス消費時点における消費者の経験(体験)を重視する
●縦軸が消費者の経験領域(SEM:Strategic Experiental Modules)として、SENSE(五感で感じさせる)、FEEL(喜怒哀楽を起こさせる)、THINK(考えさせる)、ACT(行動させる)、RELATE(他者と関係を持たせる)の5つ
●SEM5つに対して、製品・サービスや広告コミュニケーションなどの経験マーケティング手段(ExPro;Experience Provider)を用いて、消費者に経験・体験を提供していく

②Lindstrom(2005)の五感ブランディング
●感情(情緒的価値)を中心に置いたブランディングとして、五感による5次元センサグラムを基にしたブランディング
●Schmitt(1999)の5つの情緒的価値開発の方向性の内、第1のSENSEに焦点を絞り、それを包括的に深化させていった研究
●五感の内、デザインなど視覚の重視が、デザイン家電の注目・売り上げ拡大に見られるように、企業のブランド戦略における大変有効な差別化戦略であるという認識は一般化。ただ他4つの五感は、研究・実務とも現在進行形
●自社製品の市場において消費者が、五感のどの属性を重視して製品・ブランド購買をしているかを抑えたうえで、ブランド戦略の五感価値の創造を行うことが重要

③福田(1990)の物語マーケティング
●「物語性をキー概念として発送・企画・実施されるマーケティング」であり、「物語内容や物語行為を軸として市場の動向、可能性を読むとともに、優れた話や語りを創造して、これを商品、販促、流通(店舗など)の開発」に生かすもの
●ストーリー展開(物語展開の一部)や各種の物語ダイナミズム(ex.光と闇、日常と非日常)が、ブランドの情緒的価値(非機能的価値)を開発する際に大変参考になる

④原田・三浦(2010)のコンテクスト創造のブランディング
●製品・ブランドの状況・文脈を創造(転換)するブランディング(cf.阿久津・石田,2002)
●従来のブランディングはコンテンツ・ブランディングと捉えられ、各製品の機能・品質を向上させようとしたあまり、他製品との組み合わせや消費者の生活の中での位置づけ等のコンテクストが二の次にされた結果、パリティ化・コモディティ化を招いた
●当該ブランドにだけ視点を集中するのではなく、別の視点から異なる視点から眺める・コンテクストに設置する
●手法:
BtoC:ライフスタイル提案(複数の製品全体で一つのライフスタイルを提案)
新たな世界観の提示(消費者のライフスタイルから離れて、当該製品・ブランドを中心に新たな世界観を創造)
BtoB:ソリューション(典型例として、IT業界で単品のコピー機・プリンタの販売⇒それらを包含するソリューションを売る時代に転換)
●このコンテクスト創造ブランディングは、製品を単品ではなく、
・他製品との組み合わせでライフスタイルを提案
・新たな世界観を付与
・ソリューションで売り込む
⇒パリティ化・コモディティ化の時代には、全企業に必須のブランド戦略と考えられる

(4)ID要素
ブランドコンセプトを支える機能的価値・情緒的価値がひとたび開発されたら、最後に検討される要素です。
【ID要素】
●当該ブランドを競合ブランドから識別し差別化するのに有効で商標登録可能な手段
●ex.ブランド名、ロゴ、シンボル、キャラクター、スローガン、ジングル、パッケージ等(Keller,1998)
●ブランドコンセプトを最も的確かつ効果的にターゲット顧客に理解してもらうために開発すべきもの
●ID要素開発5基準
・記憶可能性(再認・再生のしやすさ)
・意味性(説得的で豊富なイメージを喚起することなど)
・移転可能性(製品カテゴリ内外や国内外への移転可能性)
・適合可能性(柔軟で更新可能な事)
・防御可能性(法律上・競争上の防御力)
●筆者曰く、ID要素は、みなブランドの日機能的部分に分類されるものであり、機能的価値のパリティ化によってブランドがコモディティ化している現在、ネーミングやキャラクター、ジングル、パッケージによって、当該ブランドの世界観やストーリー、コンテクストを強化していくことが大変重要な戦略と考えられるとのこと


■4 BIを伝える(ブランド・コミュニケーションの戦略)

当節では、ブランドのコミュニケーション戦略について留意すべきポイントについて記述されています。
※コミュニケーション戦略全体は第9章にて詳述

まず、コミュニケーションにおけるコードの重要性について記述されてます。
●ブランドコミュニケーション戦略を考える場合、当該ブランドのコミュニケーションプロセスがまず重要
●コミュニケーション基本モデルを、一般的モデル(a)と(b)製品(ブランド)の場合のモデルと比較
(a)伝達内容がコード(辞書的・文法的ルール体系)となり、それが共有されて初めて、受け手は送り手のメッセージを解読可能
言語記号の場合、コードはかなり詳細なところまで共有されているので、送り手と受け手の愛大のコミュニケーションは非常にスムーズにいく
●(b)送り手(企業)と受け手(消費者)の間で、コードが共有されていないので、コミュニケーションが困難
ex.某スポーツドリンクの企業側と消費者側の捉え方の違い
●新ブランドのコミュニケーションにおいて、コードがまだ共有されてないのだから伝わらないのは当たり前と考えるべき(言語記号としての日本語は伝わるが、製品記号の意味としてのBIは伝わらない)
●近年のブランド戦略において機能的価値が良いのが当たり前で、いかに情緒的価値を経験、五感、物語、コンテクストなどの形で付加していけるかが
課題であるが、情緒的価値は想像も伝達も困難
ex.それを乗り越えた例として某シャンプー
●情緒的価値の重要性が高まってきている近年のブランド戦略において、新しい情緒的価値のコードを消費者に伝達・理解してもらうために、BI創造と同様、ブランドコミュニケーションの局面が重要になってきている

続いて、ブランドコミュニケーションの手法(パブリシティ・口コミ・店頭・ショールーム)について詳述されまています。
新ブランドの新しい情緒的価値を消費者に伝達するためには、コミュニケーション活動の徹底は勿論、
媒介するメディアの選択も重要です。
筆者曰く、企業のメッセージが消費者に伝わらない理由は、
コード(意味づけ)の問題の他、
それらメッセージが流れるメディア自体にも問題がある、とのこと。
コミュニケーション戦略の重要構成要素の内、
広告は「企業はコントロールできるが信頼性は低い」一方で、
「企業がコントロールできないが信頼性は高い」メディアがあるのです。
それは、
○パブリシティ(詳細は第9章にて)
○口コミ
の2点。

前者が信頼性が高い理由として、発信元が企業と無関係な第三者の中立機関であることから、ブランドコミュニケーション戦略において活用すべきであり、特に近年のように新しい情緒的価値を提案していくことがブランド戦略の課題となっている状況下においてその重要性が増すとのこと。
その前提として、中立的機関としてのメディアへのリレーションシップ・マーケティングの展開が必要となります。
情報提供業としてのメディアのニーズをしっかりと把握したうえで、長期的で地道な製品・ブランド・ライフスタイルの情報提供などが不可欠、と考えられるとのこと。

一方、後者は、従来のリアルの時代は勿論今日のネットに時代においても重要性が高まっているもの。ネットが発達した現在の方が網目が如く無限に広がっているのです。
口コミにおけるコミュニケーション過程は従来のAIDMA(attention-interest-desire-memory-action)モデルから、AISAS(attention-interest-search-action-share)モデルに変化し、購買後の満足・不満足をSNSにシェアすることにより、口コミが幾何級数的に広がったのです。
従って、ネット上での口コミマネジメントが、ブランドコミュニケーション戦略で重要課題となりました。

また、ブランドコミュニケーション戦略において、マス媒体・口コミなどによるコミュニケーションの他。多くのコンタクトポイントが考えられ、それら全体としてBIを最適に伝える戦略を考える必要があります。
多くのコンタクトポイントの中で、重要度が高いと考えられるのは、
リアルに消費者が実際に製品を体験・経験できる場である、
店頭とショールームが挙げられてます。
店頭においては、BIを体現するパッケージやネーミングを消費者に店頭で見せ、手に取ってもらうことや、陳列方法・広告技法・専用什器・デモンストレーション販売などを含めた総合的店頭プロモーションの展開によってBIを消費者に伝えていくことが重要となります。
一方、ショールームでは、その場で製品を体感したり、消費者が学習することで、BIを伝えているとのこと。
筆者曰く、ネットでのコミュニケーションの利便性・重要性は高まってきていますが、リアルの場でも、特に情緒的価値を伝えていくべき今日のブランド戦略にとっては、その有効性が大いに期待される戦略である、とのこと。

■総括

当章では、PDCAサイクルで言うと
最初のP(Plan)としての戦略構築としてブランド戦略を捉えていました。
その後の組織戦略としてのD(Do)や、フィードバックの為のC(Check)も重要で、Checkに関しては、BEによる戦略の出来不出来のモニターをまず基本としており、
即ちブランド戦略の成否を、消費者の頭の中に好意的なBEが構築されたかによって判断可能とのことです。
筆者は、ブランド戦略遂行と共に、絶えず消費者の当該ブランドに関する認知や知覚品質、ブランド連想の内容などをモニターし、チェックすることによって、ブランド戦略の改善を図ることが重要、と述べています。

話は変わりますが、公式問題集を解いていった際、製品戦略(本書第6章)と同じテーマに掲載されてました。当章から出た問題は…

たった1問。



公式問題集に掲載されている問題以外にも本番の試験では出題される可能性があるため、当記事では、問題集に記載がなかった範囲もしっかり復習することにしました。
マーケティング検定3級は30問出題され、7割以上が合格なので、1問も落とさない、という認識で…やるしかないのです。

万全な態勢で挑もう。


では、また。