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「院政 天皇と上皇の日本史」 △読書感想:歴史△(0019)
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「院政 天皇と上皇の日本史」 △読書感想:歴史△(0019)

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摂関政治と武家政権の間に位置する「院政」という政治制度(?)の時系列とそれが実際にどう機能したかを解説する一冊です。

「院政 天皇と上皇の日本史」
著 者: 本郷恵子
出版社: 講談社(講談社現代新書)
出版年: 2019年

<趣意>
歴史に関する書籍の読書感想です。 対象は日本の歴史が中心になりますが世界史も範囲内です。 新刊・旧刊も含めて広く取上げております。

 

楽真齋(三村晴山)模写『隆信/後白河法皇影』(東京国立博物館所蔵) 「ColBase」収録 (https://jpsearch.go.jp/item/cobas-46576)

※一部、本書本旨に触れている部分があるかもしれません。ご容赦ください

<構成>
全9章の構成になっています。
大きくいうと5つに分かれるものと思われます。

第1章と第2章では院政開始前の摂関政治そして院政の胎動が説明されています。
第3章と第4章では院政の開始とそれを契機とする中世の始まりを説明しています。
第5章では院政の独自の政治・経済構造が解説されています。
第6章と第7章では武家の台頭とそれに伴う院政の動揺(朝廷・公家政治の、というべきでしょうか)が説明されています。
第8章と第9章では、承久の乱後の武家政権の確立とその進捗のなかで院政の事実上の終結や中世における朝廷と天皇権力の政治構造における変動が説明されています。

 

『御即位図』(東京国立博物館所蔵) 「ColBase」収録 (https://jpsearch.go.jp/item/cobas-46649)

<ポイント>
第1に「院政」を古代の終わりと中世の始まりとして位置づけている点にあるかと思われます。
ただ、院政を古代と中世政治のハイブリットや進化途上の中間形態としているわけではなく、摂関政治を脱して中世(そして意図したわけではないですが「武家政権」)を生み出すことになる政治的変動と捉えているということでしょうか。
三条→ 白河→ 鳥羽→ 後白河→ 後鳥羽という院政の政治的中心人物を通してその各者の人物像とともに時系列で院政の流れがわかりやすく説明されています。

第2に「院政」の前の摂関政治と後の鎌倉幕府・武家政権との政治的な特徴(手法、構造、経済的基盤や権力・統治の在り方)の解説が比較してなされている点が挙げられます。
律令制度という形は維持しつつも藤原一族で上級官職を独占支配し、いってみれば「藤原の、藤原による、藤原のための」政治という閉じられたインナーサークルの政治になり流動性が低減したなかで、ある種のカウンターカルチャーとして皇族の手に権力・権勢を取り戻そうとした動きの一連といえるのかもしれません。

第3には「院政」の功罪について分析と考察がされています。
一言でいうと、「院政」とは律令制という形骸化した制度そして摂関政治という藤原氏のくびきから解放された上皇による恣意的(?)な政治手法(形態? 体制?)といえるのかもしれません。
しかしこれが従来の固着化してしまい柔軟性を失ってしまったような状況を打破し、古代・平安時代から中世の始まりとなったと評価されるのではないでしょうか。これは中世的な社会・政治・経済的な変容のプロセスで現れたひとつの有り様だったのではないかと思われます。

中国との交易による貨幣経済の勃興、荘園制度による人民・土地の権利関係の整理、流動性を取り戻す有為の人材の登用による政治的活性化。このような課題の対応策としての院政。または院政における上皇の政治的活動としての結果としての中世の惹起と評価できるかもしれません。

 

海北友雪,Kaiho Yusetsu『源平合戦図屏風』(東京富士美術館所蔵) 「東京富士美術館収蔵品データベース」収録 (https://jpsearch.go.jp/item/tfam_art_db-1069)

<著者紹介>
本郷恵子
東京大学史料編纂所・教授、日本中世史研究者
リンク先: 東京大学史料編纂所
そのほかの著作:
「室町将軍の権力 鎌倉幕府にはできなかったこと」 (朝日新聞出版)
「怪しいものたちの中世」 (KADOKAWA)
など

 

<私的な雑感>
正直なところ、個人的には「院政」についてボンヤリとした認識しかありませんでした。

摂関政治絶頂期の華やかな平安王朝と鎌倉幕府による本格的武家政権の開始の間にある中間的な政治状況。上皇が恣意的に好き勝手やっていた頃(かなり乱暴な言い方ですが)。学生時代はそんなイメージでした。

しかし本書を読んで、「院政」の実態をより深く知るとともに中世・武家政権誕生にいたる歴史的つながりをよく理解できるようになったと思います。

形骸化していた律令制度下における政治・経済の社会実態に柔軟に対応できる体制であったといえるのでしょうか。しかしそれでも単に権力が摂関家から上皇らの院の皇族たちに渡っただけではなかったのかという印象はまだ個人的にはぬぐいきれません…(まだ偏見を払拭しきれてないのかもしれませんが)

そのようななかで院が摂関家から権力を取り戻すプロセスにおいて武士たちの実力(軍事力)が重用されていくにしたがい、武家の社会的地位上昇のきっかけとなり、院政が結果的には武家政権の生みの親になったということと思われます。
もちろん、上皇たちにそのような意図や目的はなかったでしょうが。

しかしそれにつけても、院政の成立は、それぞれの上皇たちの強烈なパーソナリティがあったればこそだったのではないかという気がしました。
上皇たちそれぞれのキャラクターは傍目には面白すぎます。まあ、実際にこんな人たちがいたら(とくに執政者だったら)、たまったものではないと思いますが。

本書を読んで、院政と荘園の係り、院政が(たまたま?)果たした社会的機能や歴史的意義についてより詳しく知りたいなあーと思うようになりました。
また院政が武家政権誕生を阻み、より長く持続しさらに発展・進化する可能性があったのかなどを空想すると楽しそうだなーと感じました。
(彼らが武家の軍事力に対抗できるはずはなかったと思うので、それを慮外としたらの話ですが)

読んで良かったです!

 

冷泉為恭模『伝源頼朝像(模本)』(東京国立博物館所蔵) 「ColBase」収録 (https://jpsearch.go.jp/item/cobas-46621)

<本書詳細>
「院政 天皇と上皇の日本史」 
(講談社)

<補足>
※以下、本項のリンク先はすべてWikipediaです。
白河上皇
鳥羽上皇
後白河上皇
後鳥羽上皇
院政
摂関政治
保元の乱
平治の乱
承久の乱

<参考リンク先>
書籍「院政 増補版 もうひとつの天皇制」 (中央公論新社)
書籍「中世史講義」  (筑摩書房)
書籍「中世社会のはじまり」(シリーズ日本中世史1) (岩波書店)
書籍「武士の成長と院政」(日本の歴史07) (講談社)
書籍「後白河天皇 日本第一の大天狗」 (ミネルヴァ書房)
書籍「白河法皇 中世をひらいた帝王」 (KADOKAWA)
WEB記事「後白河法皇は『鎌倉殿の13人』が描くような「日本一の大天狗」だったのか」 (読売新聞オンライン)
WEB記事「鎌倉殿の時代(3)院政とは(前編) 院政の真実、個人資産を持てない天皇と私腹を肥やす貴族との攻防」 (JBpress)
WEB記事「鎌倉殿の時代(4)院政とは(後編) 「院政」の正体、上皇・法皇はなぜ日本を支配できたのか?」 (JBpress)

 

<バックナンバー>
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(2022/07/06 上町嵩広)


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