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はじまりはニキビとともに

 毛穴ひとつ見当たらないすべすべの顔に、ポツポツと赤いふきでものが現れはじめたのは、6年生の終わりごろだっただろうか。ちょうど世界がコロナパニックに突入した時期で、卒業を目前にして長女の小学校も休校になった。

 長女は次女とは違って学校が大好きだったので、卒業前の大切な時間を友だちと過ごせないことにひどくガッカリしていた。その後、なんとか卒業式を終えたわけだけれど、今度は中学入学と同時にひと月近くの休校がスタート。

 イレギュラー続きの学校生活とステイホーム期間中の運動不足とで、長女のニキビはみるみるうちにひどくなっていった。

 そのころから、長女は不機嫌になる日が増えた。ひとりで過ごす時間を好むようになり、こちらが何かを注意すると大きなため息をつくようになったり、夫の親父ギャグに冷たい視線を向けたりするようになった。

 はじめは休校のストレスでイライラしているのだろうと思っていたけれど、休校が終わって学校生活が落ち着いてきても、彼女の不機嫌は続いていた。

 そして、ようやく私は気づくわけだ。「ああ、これが反抗期か」と。

 反抗期。その名のとおり、何に対しても反抗する長女。夜の次には朝が来るという当たり前のことに対してですら反抗的で、言葉を失ってしまう。

 大人のように扱って欲しいのに、心はまだまだ子どもで、反発するのと同じくらいに甘えたいと思っていたり。「ほっといって!」と私を遠ざけたかと思うと、「ちょっとだけギュッとして」と寄ってくることもある。

 そして私は、身長164センチの長女を面倒くささと愛おしさの入り混じった複雑な気持ちで、背伸びしながら抱きしめるのだ。


Photo by Gabriele Diwald on Unsplash

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