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(あえて)月ノ美兎と剣持刀也に歯向かってみた ――優しすぎる君のこころに、まだ火は灯っているか【雑談】





月ノ美兎のインタビューを見て、一番冷たいものを感じたものがある。
それは、月ノ美兎が大石昌良とのインタビューの最後に突然、
VTuberは基本的に秘密主義」と言い放ったことだった。そこまで、これからお互いの世界で頑張っていこうというほほえましいやり取りの後だったからこそ、この言葉は、美兎委員長のnoteを書き続けていた時にどこかずっとひっかかり続けていた言葉だった。

今日はこの言葉から雑談めいた話をしよう。
以前から、月ノ美兎『月ノさんのノート』、剣持刀也『虚空教典』についてレビューしたノートを書いていた。そのnoteたちは読めばわかるように、どちらかというと好意的な感じでまとめていた。(まあ、剣持に意地悪をこすり続けているのだが・・・)
どちらの本もKADOKAWAのサイスさんがまとめている。

ただ、この2冊を「バーチャルユーチューバー、とりわけにじさんじの事務所を引っ張ってきた人が書いた本」とあえて引いて読み直してみると、複雑な気持ちになってきた。
この二冊、思想が"あまりにも"優しすぎるのだ
例えば月ノ美兎は、この本を徹底的な演出だと言い切る。そして人を自分が笑わせる理由は、「自分が臆病者で、反応が見える笑いが安心する方向だった」からである。そしてうがった見方をしがちなオタクくんたちに向かって、自分の悪い性格をニヤニヤ笑っていてほしいとまでいう。
そして剣持は、世界に絶対裏切られないために「世界や人に期待しない」ことを宣言する。父親に客観視がうまいと言われる彼は、自分を含むVtuberの歴史をまとめ、自分自身のいるにじさんじが初期のクリエィティブでカオスな世界をつぶしてしまったことについても、自分なりの納得を発見する。

この2冊は楽しくておかしいエンタメの言葉でポジティヴにコーティングされている。裏に隠した嫉妬や絶望を徹底的にほのめかしニタニタ笑えるように。
それは素晴らしいものだけど、Vtuberの美しく作られたハイコンテクストな世界に私が疲れてしまっているのもちょっと事実である。

私はどうも作るのをあきらめてしまったらしい、美兎さんが存在を示唆している「自分の思想を語らせた映像」や、剣持が初期に夢見ていたカオスな気持ちのまま作った世界がどのようなものか、気になって仕方ないのだ。

これだけ周りの人にやることやったのだから多少とがってて、自分の汚い本音が出たモノを作ってもいいではないか。真剣勝負をしてみていいのではないか。二冊を再読してそう感じてしまった。
でも、優しく演出をすることを選んだ二人は、その世界をもう見せないのかもしれない。
こう思うのは私が本音をぶつけ合うフォークソングやロックをよく聞くからかもしれない。

にじさんじは優しい上品な世界である。いやVtuberもいまでは相当優しくて上品な世界である。

やさしい言葉のコーティングする余裕がなかったり、自分のこだわりがあって人とぶつかってしまう人は、この時代どう生きればいいのか。
そして、この世界で生きるためには、周りに気をつかい、自分のやりたいことを曲げて生きるしかないのか。

このnoteは、明日発売される緑仙のアルバム『イタダキマスノススメ』のレビューへのプロローグである。



スピッツの代表曲『スターゲイザー』は、周りの世界が嘘くさく見えた人に、本当のことを言っていいと促す曲だった。
人が秘密を明かすのは怖いことかもしれない。でもこの曲はその秘密を明かすことは時に、大事な世界をもっと好きになる第一歩であることを示している。

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